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【解説】准救急隊員とは?募集状況や処置の内容まで【総務省消防庁】

救急業務

準救急隊員についてこの記事を読んだらわかること

こんにちは、TEAM WEBRIDです。

救急車には、救急隊員の資格を持った人が3人乗っていないと法律上ダメなんですよね?

以前まではそうでした、しかし、法律の改正があって、救急隊員の資格を持った人が3人揃っていなくても、救急車は出動できるようになりました。

今回は、このようなテーマの記事となっています。

消防法というのは、多くの業界にとって利害関係の発生が少ないために、改正が起きやすい法律の一種です。

利害関係が多くの業界に絡むような法律は、法改正への圧力も多く、改正されにくいものです。

では、なぜ救急隊の要件が緩和されたのでしょうか。

  • その目的やメリットは?
  • 離島や過疎地域にある消防本部の救急隊について知りたい
  • 救急車に乗っている人の資格について知りたい
  • ”準救急隊員”ってなに?

このような疑問を持っている人には、参考になる記事となっています。

今回の記事も、現役消防士の方や消防職員OBの方々からの調査結果をもとにレポートします。

この記事を読むことで、救急隊要件の緩和や、”準救急隊についての知識が深まるでしょう。

それではレポートを始めます。

準救急隊員:消防法施行令の改正に至った目的は?(平成27年の出来事)

過疎地域においては、近年の人口減少や、厳しい財政状況により、救急業務の空白が生じつつあります。

救急業務の空白とはどう意味でしょうか?

救急隊は、365日、24時間、119番通報があると、いつでも出動可能な状態でなければなりません。

出動に備え、常に待機をしておく必要がります。

救急業務の空白とはつまり、この“常にいつでも出動できる状態“に空白の状態があることです。

言い換えると、今、救急車を呼んでも、

救急車は出動しません!

という時間が発生しているということです。

現実の問題として、過疎化の影響で、愛媛県西予市の一部の地域においては、救急隊を平日の昼間しか運用できなくなりました。

つまり、

  • 平日の夜間
  • 休日の昼間
  • 休日の夜間

は救急業務の空白時間であり、救急車を呼んでも来てくれないということです。

  • 職員数自体が少ない
  • 夜間の手当が払えない
  • 救急件数が少なすぎ、救急隊運用が費用対効果に合わない

など、多くの理由があります。

同市(愛媛県西予市)から、地方分権改革の提案として、次のような要望がありました。

救急隊の編成を、救急隊員2人以上で編成し、軽症患者を搬送したい

というものです。

もともと救急隊というのは、救急隊の資格を持った人3人以上で編成することと法律上明記されています。

法律で決まっているので、どこの消防本部の救急車の中を見ても、救急隊員の資格のある職員が、最低3名は必ず乗っています。

最低3名といっているのは、出動の段階で患者がCPA(心肺停止状態)と分かっていれば、救急隊員4人で出動する本部もあるからです。

CPA(心肺停止)の患者に対してはCPR(心肺蘇生)のために多くの作業が必要です。

救急隊員が多い方が、効果率的に対応できるためです。

話がそれたので元に戻します。

要望の意図は、救急隊の負担を減らしたいというものですね。

この要望に対し、過疎地域等において、どのような工夫をすれば、救急業務を3人以上で実施する体制を維持しつつ、業務の一部を消防職員以外に行わせることができるかの方法について検討が行われました。

検討の結果、必要な措置を講じる必要があるとの閣議決定(「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成27年12月22日閣議決定))がされました。

この閣議決定を受け、

  • 救急業務の空白地域の解消
  • 救急業務の空白地域の発生の予防

を目的として、消防法施行令の改正が行われました。

過疎地域や離島における救急隊の編成について、より柔軟な救急活動を可能とするため、「消防法施行令の一部を改正する政令」(平成28年政令 第379号。以下「改正令」という。)が公布されました。

言い換えると、過疎地域や離島でなければ、あくまでも救急車には 救急隊員の資格を持った救急隊員か、救急救命士の資格を持った救急隊員が3名以上必要ということです。

準救急隊員:消防法施行令の改正の中身はどんなもの?

(1)准救急隊員を含む救急隊による救急業務の実施に関する事項

改正内容は、次のとおりです。

後段で、読み砕きますので、引用内容は読み飛ばしてもらっても大丈夫です。

消防署又は消防庁長官が定める消防署の組織の管轄区域の全部が、①から⑤の対象地域のいずれかに該当する場合において、市町村が当該管轄区域内において発生する傷病者に係る救急業務の適切な実施を図るための措置として総務省令で定める事項を記載した計画(以下「実施計画」という。)を定めたときは、実施計画に基づき当該救急業務を実施する救急隊は、救急自動車1台並びに救急隊員2人以上及び准救急隊員1人以上をもって編成することができる

「①から⑤の対象地域」

① 離島振興法(昭和28年法律第72号)第2条第1項 に規定する離島振興対策実施地域

② 奄美群島開発特別措置法(昭和29年法律第189号) 第1条に規定する奄美群島の区域

③ 小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和44年法律第 79号)第4条第1項に規定する小笠原諸島の区域

④ 過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15 号)第2条第1項に規定する過疎地域(いわゆる「全部過疎」、「みなし過疎」及び「一部過疎」)

⑤ 沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)第3条第3号に規定する離島の区域  

改正令による改正後の消防法施行令(昭和36年政令 第37号。以下「令」という。)第44条第2項

難しい表現が続きますね。

簡単にまとめると

  • ①から⑤に該当するエリアの消防本部は、実施計画を定めること
  • 計画には、救急隊員2人以上と准救急隊員1人以上で出動することを記載すること
  • 計画通りに救急出動するなら、救急隊員が3人以上いなくてもオッケー

というものです。

①から⑤も簡単にまとめます。

  • ①離島
  • ②奄美大島あたりにある離島
  • ③小笠原諸島あたりにある離島
  • ④国が定めた日本全国の過疎地域
  • ⑤沖縄あたりにある離島

国に要望した愛媛県西予市は④に含まれているということですね。

やっとここにきて「准救急隊員」という表現も出てきました。

次は、「准救急隊員」の解説です。

(2)准救急隊員資格や医療行為について

先ほどと同様に、改正文を引用します。

準救急隊員の、資格についてです。

准救急隊員は、①、②のいずれかに該当する消防職員(消防吏員を除き、常勤の職員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28 条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(再任用短時間勤務職員、任期付短時間勤務職員及び育児短時間勤務に伴う短時間勤務職員)に限る。)をもって充てなければならない

改正令による改正後の消防法施行令(昭和36年政令 第37号。以下「令」という。)第44条第6項

ここで、「①、②」は、以下のとおりです。

① 救急業務に関する基礎的な講習において、総務省令で定めるものの課程を修了した者
② 救急業務に関し①に掲げる者と同等以上の学識経験を有する者として総務省令で定める者

①については、「救急業務及び救急医学の基礎」、「応急処置の総論」等の課目及び92時間以上の講習を受けた者のこと。

つまり、消防士になって、消防学校で、「救急科」を卒業した者のことですね。

②については、

  • 医師
  • 保健師
  • 看護師
  • 准看護師
  • 救急救命士
  • 消防学校で救急科を卒業した消防吏員OB

のことです。

また、この法改正に合わせ、地方公務員災害補償法(昭和42年第274号)第46条において、特殊公務に従事する職員の特例について、准救急隊員についても、その対象としています。

俗に言う、「公務災害」の保証対象者に、凖救急隊員も含めてあげようという主旨です。

救急業務でも、酔っ払いの傷病者に殴られるなど、怪我を負う可能性がある場面は数多くあります。

また、救急車による緊急走行というのは、常に危険と隣り合わせ、交通事故により負傷する危険性も含んでいます。

公務災害に認定されれば、治療代などを自己負担する必要はなくなります

公務員以外の人が、公務である救急業務に携わるのですから当然の補償と言えます。

また、別途救急隊員の行う応急処置等の基準(昭和53年消防庁告示第2号)を改正し、准救急隊員について、

  • 表情や顔色を見る
  • 傷病者の言動を観察する
  • 出血の部位血液の色及び出血の量を調べる等の観察等を行い、その結果に基づき、口腔内の清拭による気道確保、呼気吹き込み法による人工呼吸、胸骨圧迫心マッサージ等の応急処置

などを行うものと定めることとしています。

なお、これらの応急処置等は、救急隊員が行う応急処置等のうち、

  • 心電図、心電図伝送装置を使用した心電図伝送
  • 鉗子又は吸引器による咽頭及び声門上部の異物の除去
  • 酸素吸入器による酸素吸入の単独実施

などの重要度の高いもの、危険性の高いものを除いたものとしています。

准救急隊員が行う応急処置の種類から、「医療ミス」が発生しやすい応急処置を除いています。

補償を設け、責任度を下げることで、准救急隊員になりやすい環境を作ろうとしています。

ただでさえ、救急隊員の人材確保ができない、救急業務の空白地域です。

せっかくの新しい制度を作ったにもかかわらず、准救急隊員のなり手がいないようでは意味がないですからね。

【解説】准救急隊員とは?募集状況や処置の内容まで【総務省消防庁】のまとめ

この改正は、平成29年4月1日から施行しています。

この制度の本来の目的は、近年の人口減少厳しい財政状況などにより、平日の夜間は救急隊を配置できないといった救急業務の空白地域を解消することです。

また、救急業務の空白地域の発生を予防する目的も含んでいます。

制度が浸透し、准救急隊員が増え、救急業務の空白地域がなくなることを願います。

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