食の歴史 by 新谷隆史ー人類史を作った食の革命

脳と食を愛する生物学者の新谷隆史です。本ブログでは人類史の礎となった様々な食の革命について考察していきます。

古代ローマ人の食事(5)ケーナ③ デザート

2020-07-06 17:36:24 | 第二章 古代文明の食の革命
古代ローマ人の食事(5)ケーナ③ デザート
今回は、ケーナの最後のパートのデザート(メンサ・セクンダ)だ。デザートと言っても現代のデザートとは少し異なっていて、主にお酒(ワイン)を楽しみながら、つまみのようなお菓子をつまむ時間だった。このため、残されているレシピにはコショウが使われているものが多い。もちろん、ローマ人が大好きなフルーツもたくさん出されていた。

    貝殻の形のデザート皿

ここからは、主に料理書の「アピキウス」に記載されているお菓子のレシピを紹介しよう(アピキウスには簡単な記載しかないことが多いので、いくらか補足してある)。

お菓子① 古代ローマのオムレツ
クルミとヘーゼルナッツを細かく砕きます。 それらをトーストし、ミルクととき卵を加え、蜂蜜とコショウ、ガルムで味付けします。時々かき混ぜながら固まるまで弱火で加熱します。最後にオリーブオイルをふりかけてできあがり。

*この料理は現代のオムレツに似ている。ここで使われているミルクは牛乳ではないと思われる。古代ローマでは牛乳も飲まれたが、あまり美味しいものとは思われていなかった。それよりもヤギのミルクの方が好まれたし、いちばん美味しいとされていたのはラクダのミルクだった(とても高価で金持ちしか買えなかったが)。ラクダのミルクはとても濃いようで、水で四分の一に薄めて飲まれたそうである。熱をかけるとすぐに固まったのだろう。


お菓子② 古代ローマのプリン
ミルクの中に卵を入れてよくときほぐします(ミルク1リットルに卵5個)。そして、好みの甘さになるように蜂蜜を加えます。味が整ったら、こし器でこしながら深いお皿に注ぎ込みます。このお皿をオーブンで温めておいた温水バスに浮かべます。しばらくオーブンで温めて中まで固まるのを待ちます。オーブンから取り出したら、表面に蜂蜜を塗り、コショウをまぶしてできあがり。

*これはどう見てもプリンだろう(コショウが振ってあるが)。砂糖が無かったので蜂蜜を塗っているが、十分に美味しかっただろう。なお、裕福な人の家の台所にはオーブンがあって、単にローストするだけなく、この料理のように湯せんで熱する調理法も使用されていたようである。


お菓子③ 古代ローマの揚げ菓子
ナッツとレーズン、コリアンダー(香菜)をみじん切りにして、そこに蜂蜜とコショウ、ミルク、卵を加え、混ぜ合わせます。これをオーブンで固めに蒸し焼きにします。冷めたら小さく切り分け、オリーブオイルで揚げます。油から取り出したら蜂蜜に浸し、コショウをかけて出来上がりです。

*現代でこのお菓子に似たものを私は知らないが、甘くて香ばしい風味がして美味しそうだ。ただし、卵とミルク、蜂蜜、そしてオリーブオイルもたっぷり使っているので、とてもカロリーが髙そうである。


お菓子④ 古代ローマのフレンチトースト
パンを大きくちぎってミルクに浸す。オリーブオイルをたっぷり引いたフライパンにパンを乗せて焼き色が付くまで焼く。皿に移したら、上から蜂蜜をかけて出来上がり。熱いうちに食べましょう。

*現代のフレンチトーストは、牛乳と卵と砂糖を混ぜ合わせた液にパンを浸して作る。古代ローマのミルクは濃かったので、卵を入れなくてもしっかりパンにからんだのだろう。パンがしっとり、モチモチして美味しそうである。


アピキウスにはチーズを使ったお菓子は詳しく書かれていないが、リコリッタチーズとナッツ、レーズンなどを混ぜ合わせて作ったチーズケーキが絵画として残っている。ローマ人はチーズも大好きで、大量に食べたと言われている。いろいろな動物のミルクからチーズが作られており、また様々な属州からも輸入された。中でもガリア産がもっとも美味しいとプリニウスは記している。


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