(其の十七)

師はさらに続けられます。

 

観世音菩薩は、続けて言っていますね。

 

『(さとりもなければ)迷いもなく

(さとりがなくなることもなければ)迷いがなくなることもない。』

 

『こうして、ついに、老いも死もなく、

老いと死がなくなることもないというにいたるのである。』

 

『苦しみも、苦しみの原因も、

苦しみを制することも、苦しみを制する道もない。』

 

『知ることもなく、得ることもない。』

 

『それゆえに、得るということがないから、

知恵の完成に安んじて、人は、心を覆われることなく住している。』

 

『心を覆うものがないから、恐れがなく、

転倒した心を遠く離れて、永遠の平和に入っているのである。』

 

『過去・現在・未来の三世にいます目ざめた人々は、

すべて、知恵の完成に安んじて、この上ない正しい目ざめをさとり得られた。』

と。

ここは、「色即是空」「空即是色」をくりかえして説明していますね。

さきほどは、「色」「受」「想」「行」「識」をくりかえし説明していましたね。

 

観世音菩薩は、結局のところ、

「色即是空」「空即是色」と

「色」「受」「想」「行」「識」の智慧を身に付けよと教えているのです。

それが般若心経なのです。

 

繰り返しましょう。

 

『色即是空』とは、

「物質的現象として存在するもののことです。目に見えるもの、形あるもののことですね。

目に見えるもの、形あるものは、必ず移り変わり、こわれ去る運命にあります。

私たち人間も物質的現象として存在しています」

 

『空即是色』とは、

「我々をはじめすべての存在するものは物質的現象であると認識することにより、

人は自由な精神を手に入れることができるのです」

 

「色」「受」「想」「行」「識」とは、

「人間をはじめとしてすべての存在するものは、

実体のない、集合体に過ぎないということです」

 

「般若心経は276文字の短いお経ですが、人生を豊かに生きていく方法を見事に

我々に教えてくれていることがよくわかるでしょう」

 

「はい、本当に素晴らしいお経ですね。全身全霊で般若心経と向き合います。

その向き合う回数は千回なのですね。私も本当の智慧を身に付けたいと思います」

 

師はにっこりとほほえまれました。

 

「長い時間が過ぎました。さあ、帰りましょう]

 

私は師の後に続きながら、師が話してくださった

豊かな般若心経の智慧をかみしめていました。

 

 

 

次回更新は9月21日(月)です。

 

 

 

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