おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

はじめての失神

ごきげんよう、汗くさいかなー、と思って着ているシャツのにおいをかいでみたらカレーくさかったことがあるおじさんです。

 当ブログ開設当初から、性別適合手術のお話をしています。手術に至る経緯やおじさん自身の生育歴や考えなどもお話ししていく予定ではありますが、まずは手術の経験から、ということではじめて受けた手術から順番にお話ししてきました。

そして、心身ともに最も負荷が大きい陰茎形成術を終えたところまで、お話が終わったところです。しかし実は、陰茎形成術は手術そのものよりも、その予後が大変なのです。

という訳で前回に引き続き、手術が終わった後のお話です。

気つけ気をつけ

前回は10日近く右腕につながっていた点滴が外れて、翌日には尿道カテーテルも外れますよ、というところまでお話ししていたのでしたね。尿道カテーテルが外れたら何が起こるか、ということは、ここまで続けてお読みくだすっているみなさんにはもうおわかりのことかと思います。

尿道カテーテルが外れたら、自力でトイレに行かなくてはならないのですね。

トイレに行くには、ベッドを降りて歩かなくてはなりません。つい先日までかんたんにやっていたことですから、かんたんにできると思いますよね。おじさんもこのとき、そう思っていたのです。

だからベッドを降りようというときに、ベッドの下に踏み台を置いてくれて、ナースが両サイドに1人ずつついたときは「何だ何だ大袈裟だなー」と思いました。で、踏み台の上に立ち上がると。

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一瞬のことのようでしたが、一瞬ではなかったようです。おじさんは意識を失いました。気がつくと、姿勢は立った状態のままでしたが、ナースのひとりがおじさんの鼻先で大きめの綿棒を振っていました。気つけ薬(炭酸アンモニウム溶液?)のようです。

ずっと横になっていてたために脳に血流を送る血圧が低めになっていて、そこから立ち上がると脳貧血を起こして失神するのです。いわゆる「立ちくらみ」のひどいやつです。

よもやそんなことが自分に起きるとは思っておらず、おじさんは自分でびっくりです。立ったまま眠ったことはあったけど、立ったまま失神するなんて生まれてはじめてです。

しかも、踏み台を降りるまでにあと2回ほど意識がなくなります。ナースが両脇で「ゆっくり、ゆっくりね」と言い続けていました。勢いよく立ち上がった訳でもなく、急いで動こうとした訳でもないのですが、こういうことが起きるんですね。

はじめての自力排尿

そして、術後初の自力排尿です。

おじさんが今回、手術したのは尿道ですので、尿道がうまくできているか、きちんと傷がくっついていなくてあらぬところから尿が洩れたりしないか、確認しなければなりません。

という訳で、術後初から数回の排尿はナース立ち会いの下で行わなければなりません。ナースが見ている前で排尿をすることになるのです。

2、3度失神しつつベッドから降り、無事にトイレに辿りついたところで術後初の立位排尿、つまり立ち小便です。実は人生初の立ち小便ではないのですな。

女子みんなではないのでしょうが、ネイティブ女子の中には結構高い割合で立ち小便の経験がある人がいます。もちろん、トイレでの経験は少ないでしょうが、浴室など足許が濡れてもいいような状況で試みたことがある女子は割りといるようです(弊社調べ)。

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おじさんもその1人であり、また、後には立位排尿用の器具を使って日常生活から男性用小便器を使って排尿できないかしらと練習をしたこともありました。だから、立ち小便自体ははじめてではないのです。

が、練習はしたことがあるけど面倒になって途中でやめちゃったクチなので(だめにんげん)、ずっとすわってトイレはしていました。だもんで、いざ立って排尿しようとすると、やはり尿道近辺の筋肉のコントロールがうまくできず、小水を出すまでにちょっと時間がかかりました。

けれども、実に太い尿線を出すことができ、「自分のちんちん」からのはじめての排尿はとても爽快でした。

こうして自力でトイレに行き排尿もできるようになりましたので、日がな一日ベッドの上にいなければならない生活もおしまいです。ベッドを降りて椅子にすわっていてもいいのです。

再手術?!

術後初排尿のみならず、その後も排尿のたびにナースを呼びなさいという指示があったので、尿意を催すたびにナースコールをして監視の下で排尿しました。日中は順調に排尿できていたのですが、日没を過ぎてから、様子が変わってきます。

尿意はあるのに、小水が出なくなったのです。

立位で出せないのですわってもいいかとナースに訊ね、許可をもらって便座にすわります。でも出てこない。気張ると大きい方が出てくる。小水は出ない。

ナースは排尿を促すために、トイレの洗面台の蛇口から水を出しっ放しにするなど協力してはくれますが(水が流れる音は人の排尿を誘発するらしいです)、やっぱり出ない。

尿意の間隔がだんだん短くなってきて、ついに1時間に1回くらいの頻度でトイレに立つようになります。もう目眩を起こしている暇もありません。尿意が来て、トイレに行って、でも出せない。これを繰り返して一ト晩を過ごしました。

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そして朝。

ヤンヒー病院にはドクターナースという、かんたんな診察ができるナースがいます。ドクターナースがおじさんのお腹を打診したり触診したりして、険しい表情を見せます。何かよくないみたいです。ほかのナースと何やら話し合っていますが、タイ語なのでおじさんにはわかりません。

数時間後、今度は執刀医がやってきて、ドクターナースの報告を聞くとおじさんに言いました。

「いますぐおしっこしてみせて」

尿意があるかどうかの確認もなく、いますぐせよとお医者は言いました。実を言うとそのとき尿意はなかったのですが、厭だという訳にもいきません。トイレに立ちますが、立ってもすわっても水が流れる音を聞いても出ません。

「いまおしっこできないと退院させられない」

予定では明後日が退院日。この日に退院できないと、おじさんはタイの滞在ビザを取得する手続きを取らねばなりません。タイは観光目的で1箇月までならビザなしで滞在できますが、1日でも超過するならビザが必要です。ビザなんて取ったことがないおじさんはドキドキものです。

 さらに執刀医は言いました。

「もう一度、手術をする」

言うと執刀医はさっさと病室を去ってしまいます。おじさん呆然。一度縫い合わせたものをまた開くの? またカテーテル挿れて点滴つけてベッドの上生活? そんな重篤な状態なのですかおじさんは。おじさんは不安というよりもほぼ絶望を感じていました。

うぬおおお、おじさんはいったいどうなってしまうのか。次回に続く!

 

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