「コミュニケーションで一番大切なことは何ですか?」
 
 こう聞かれたら、皆さんは何と答えますか?私はこう答えます。
 「それは、バランス感覚です」
 
 コミュニケーションが上手い人とは、「”主観的視点”と”客観的視点”のバランスが取れている人」です。
 
”主観的視点”とは、物事に対して自分どう意識したかを捉える視点です。
 誰かに向けて話をするとき、その動機となるものは自分の心(感情、興味)が動いたものです。自分自身が感じたからこそ誰かに伝えよう、知って欲しいという想いが産まれます。心が動かないものは、人は話題にしようとはしないのです。
 
”客観的視点”とは、物事を他者がどう意識しているかを想像する視点です。
 自分が感じる様に、人の興味とは10人いれば10人違います。「他者の感じ方」を想像することで「自分がこの話をすれば、周りがどう感じるか」という見方ができます。
 
コミュニケーションとは自分と他者とのやりとりです。そのため、自分自身が周りに”主観”をどう発信するか、そして他者の視点である”客観”をどう受け取るかがカギとなります。
 
 話し方の教室に通って学ぼうとする人は、大体2つのタイプに分かれます。
 ひとつは「人前に立つと緊張してしまい話せなくなる」人。この類の人は、根底に相手に対して失礼の無い様に間違えず言葉を届けたい、それが上手くできそうにないからという不安があります。いわば”客観的視点”の比重が大きくなりすぎ、相対的に自分が何を伝えたいかという”主観的視点”が縮んでいる状態の人です。 
 
 こうした人達には、スピーチの練習を通じて自分が何を感じたかをとことん意識してもらい、少し大げさなくらい表現してもらうことで、”主観的視点”を磨かれます。練習へのフィードバックも前向きな評価を中心に伝え、「自分の考えを発信することが素晴らしいことである」と意識してもらうことが大切です。
 
 もうひとつは「言いたいことをハッキリ言いすぎて、それで人間関係に苦労している」人。大体は、本人はそう思っていない(気付いていない)が周りに話し方を勉強するように言われて学びに来る人です。この類の人は、あふれる”主観的視点”に対して”客観的視点”の比重が小さい人です。
 
 これらの人達には、同じ主張でも言い方ひとつで相手に与える印象が変わるという言葉選びの重要性を教えると共に、とにかく”主観”を交えずに聴く(カウンセリングでいう逐語記録)勉強に主眼を置くことで”客観的視点”を学んでもらうことが大切です。
 
 こうして、”主観的視点”と”客観的視点”のバランスを取ることで、コミュニケーションをより円滑に取れる様になります。
 
 さて、このバランス感覚。コミュニケーションに大切なのは視点のバランスだけではないのです。
 

日本語ランキング