さて、この”バランス”という言葉は、コミュニケーションを紐解くキーワードです。それは、後ろ向きな方向でも。
 
 例1
 「貴方、昨日どこに行ってたの?もしかして元カノと会ってたんじゃないの?」
 「あ、あ、会ってねーよドンッ!!」(本当は会っている)
 
 例2
 「問い合わせてから1ヵ月間、回答が無いのですが忘れていたのですか?」
 「えー、その件につきましては今調査中で、回答もまとまってからお知らせをしようとは思っていたのですが、至急の用事が入ってしまってそちらに・あせる・・」 (本当は忘れていた)
 
 どちらもあまり良い例ではありませんね(笑)。
 人は図星を突かれたとき、自信を持って言葉を返せないとき、何とか自分自身の気持ちのバランスを取ろうとします。バランスを取ろうとしての対応には2つのパターンが有り、例1の様に”感情”を上乗せしてバランスを取ろうとする場合、そして、例2の様に”言葉数”を上乗せしてバランスを取ろうとする場合が有ります。

 そして、こうした対応は聞いている側には簡単に本当のことが察せられます。
 (ああ、本当だからこんな反応なんだな)とすぐに分かってしまいます。それだけではなく(それでも、こちらのことを考えてくれるのではなく自分を守りたいんだな)とまで思われ、信用をも失います。

 そこから先の反応は、聴いている側の胸三寸です。まだ許せる・今後の付き合いもあるのならば、敢えて納得する素振りを見せるでしょうし、愛想が尽きたならばウソを指摘して関係が終わる可能性も有ります。 正直に話して頭を下げた方が、信用の損失が少ない分まだ良いかもしれません。
 
 こうした足りないものに対してバランスの取るという行為は、誰もが無意識のうちに行っています。自信が足りなければ、自分が選ばれた立場であるという感覚や社会的肩書で補おうとし、立場が弱くなれば強硬に自分の立場を主張する。
 これらの傾向に共通するのは、「自分を守りたい」という感覚が強いとき、つまり前回お話した”主観””客観”という本質のバランスが崩れた時に、それでもなんとかしようと相手への態度という末端のバランスを保つために出る、ということです。

 ですが、末端でバランスを取っていることは、確実に相手も分かります。自分自身を一時的に誤魔化す効果しかないのです。
 人の感性とは、自分自身が思っているよりもはるかに鋭いものです。
 
円滑、そして発展的なコミュニケーションを望むなら、本質的なバランスを取ることを心掛けることが大切です。
 

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