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『デザイン思考(シンキング)』とは、4種類あった!?成功の秘訣は?ミラノ工科大学の研究結果より

イタリア

『デザイン思考』を活用してプロジェクトをやりたい。」

デザインコンサルティングの仕事柄、こういったご相談をお客さまから受けることが多いです。

『デザイン思考』という言葉自体が流行して、デザインの可能性に光があたるようになってきたことは、とても良いことではあると思います。

また、『デザイン経営宣言』が経産省と特許庁から出されたように、デザインを経営に活用したいという機運が高まっていることは、デザイン業に携わる人間としては、歓迎すべきことです。

しかし、一方で、『デザイン思考』についての疑問も多く問い合わせをいただくようになり、場合によっては、「よく分からない」、「使えない」という不信感ともとれるコメントもいただくようになってきています。

AXISマガジンでもペンタグラムのナターシャ・ジェンの投げかける疑問の記事が人気記事になっていますが、上記のような『デザイン思考』に対するみなさんの疑問と無関係ではないかもしれません。

「デザインシンキングなんて糞食らえ」。 ペンタグラムのナターシャ・ジェンが投げかける疑問

イタリアの大学教授陣と話していても、次のように言われます。

今流行している『デザイン思考』はまず第一に、かなりの程度マーケティングされてしまって、拡大広告されてしまっている、それから、本来の原義とは乖離してクライアントに使っていただきやすいように商品化されてしまっている。

この点は、デザイン学に携わるアカデミアの人々の共通見解となっているようです。(この種の議論は、実は非常に長い経緯もありますので、また別の機会に書こうと思います)

ここでは、『デザイン思考』を使ってプロジェクトをやりたいが、どうしたものか分からない、と考えておられる商品・サービス企画開発の方々向けに、一本の思考の補助線をお伝えしたいと思います。

それは、『デザイン思考』と一口にいっても、いくつか種類があるよ、ということです。

目次

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4つのタイプの『デザイン・シンキング』

『デザイン思考』と言われるものも、学術的には、上記のような反省もあり、大学の研究者が分類や検討を始めています。
(参考URL:“WHICH KIND OF DESIGN THINKING IS RIGHT FOR YOU?” OBSERVATORY DESIGN THINKING FOR BUSINESS

ミラノ工科大学の経営学・デザイン学の混合研究チームは、『デザインシンキング』を4つに分類し、論文を発表しています。

詳しく一つ一つ見ていくと長くなりますので、ほんのさわりだけご紹介します。ご了承ください。

1. Creative Problem Solving

Creative Problem Solving: Solving wicked problems by adopting both analytical and intuitive thinking (Brown, 2009; Martin, 2009).

1つ目は、Creative Problem Solving(創造的問題解決)です。いわゆるデザインの『厄介な問題』について、分析的・直感的思考を活用しながら問題解決します。

2.Sprint Execution

Sprint Execution: Delivering and testing viable products to learn from customers and improve the solution (Knapp et al., 2016; Ries, 2011).

2つ目は、Sprint Executionです。主に開発プロセスを加速させ、市場の不確実性を軽減して、新しいソリューションを迅速かつ効果的に市場に投入することを目的としています。独創的な創造的問題解決とリーン/アジャイル運動のハイブリッド化から生まています。

3. Creative Confidence

Creative Confidence: Engaging people to make them more confident with creative processes (Kelley & Kelley, 2013).

3つ目は、Creative Confidenceです。これは、イノベーションと変化を促進することができる新しいアプローチ、実践、方法論のセットを従業員に従事させるための新しいイノベーションマインドセットを促進することを目的としています。

多いケースでは、組織文化の再構築やデジタルトランスフォーメーションの文脈で行われることが多いようです。

4.Innovation of Meaning

Innovation of Meaning: Envisioning new directions that aim at pro- posing meaningful experiences to people (Verganti, 2009, 2017).

4つ目は、Innovation of Meaning(意味のイノベーション)です。それは主に、ビジネスクライアントが追求する新しい戦略的方向性をサポートする革新的なビジョンを作成することを目的としています。

あなたのプロジェクトは、どの『デザイン思考』をしますか?

ここでお伝えしたいのは、すべてのプロジェクトで、いわゆる『デザイン思考』を活用することが得策であるということでは、ないということです。

あたかも魔法の杖のように、『デザイン思考』を活用すれば、イノベーションが出来上がり、とそのように思われている嫌いがあるようですが、そんな都合の良い話はありません。(あれば、みんな成功して今頃日本のGDPはもっと膨れ上がっているでしょう。。)

むしろ、プロジェクトの狙いや与件に合わせて、プロジェクトスコープ、メンバー構成、期間や予算、アプローチも含めてプロジェクトをしっかりと設計(プロジェクトデザイン)することが大切です。

なんとなく、『デザイン思考』が流行っているから、きっと魔法の杖のようなのだろう、と思ってプロジェクト化してしまうと、むしろ痛い目に合うかもしれません。

例えて言うならば、ある病気に対して、内科的な投薬をすべきところを、外科的手術を施してしまったがために、取り返しのつかないことになってしまった、ということにすらなりかねません。

少なくとも、『デザイン思考』は一種類ではなく、複数の種類があるということ、相対化してとらえなければならないこと、そして、今直面しているプロジェクトの狙いや与件に合わせて、きちんとプロジェクトそのものをデザインする必要があること、この点をお伝えできればと思います。

今日はこのへんで!

Ciao, Grazie!

参考文献
Dell’Era, C., Magistretti, S., Cautela, C., Verganti, R., & Zurlo, F. (2020). Four kinds of design thinking: From ideating to making, engaging, and criticizing. Creativity and Innovation Management29(2), 324-344.

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