育鵬社教科書の採択・不採択がコロコロ変わる理由

育鵬社の公民教科書


本記事の要旨
・育鵬社(いくほうしゃ)の教科書の何が良くて何が悪いのかを、実務に携わる教育委員の公式発言から見ていきます

・2015年の審議のあり方について問題が見えました。教科書問題とは、その内容だけではなく、組織運営にも闇があります。

・何故、育鵬社の公民が不採択になったのでしょうか。実は、東大阪市には、代替手段として、教科書検定を受けていない公民テキストが作成されていたのです。

 本記事は、2020年、2015年及び2011年の、東大阪市教育委員会の、教科書を採択する会議における、育鵬社に関する部分のみの会議録に関するものです。
 正確な内容は、原本を参照してください。

 次のサイトでは同様の内容を分かりやすく書いています。

東大阪市役所庁舎
東大阪市役所庁舎

 東大阪市教育委員会は、令和2年度(2020年度)まで、中学校用公民の教科書として、育鵬社を採択してきました。
 なお、中学校用歴史は他社を採択してきました。


育鵬社の中学・公民の教科書への教育委員等からの意見

概要

 2011年の議論では「国家観が感じられる」という趣旨で育鵬社の公民の教科書が採択されました。
 2015年では、2011年の考え方を継承しました。(この審議過程が問題。詳細は後で)
 2020年では、育鵬社の名前が全く挙がりませんでした。不採択です。


採択・不採択の論点

2020年8月の審議
 育鵬社は不採択となりました。令和3年度から4年間使用する公民の教科書は、帝国書院を採択しました。

●選定委員会の意見(育鵬社に関する発言はありませんでした)
 公民の教科書を各社見比べて、歴史と同様にそれぞれの会社がレイアウトやマーク、小見出しを工夫しており、それにより学びの流れに特徴を持たせていました。違いが現れているのは生徒が主体的に学ぶための工夫の部分で、これも国語や歴史の教科書でも触れた「思考ツール」を用いて生徒自身に考えを整理することを求めているものと、記載内容の読解による学習を求めるものがありました。「SDGs」は全社で取り上げられているが、その取り扱いについても各社特徴が見られました。

●教育委員の意見
(育鵬社に関する発言はありませんでした)


2015年7月の審議
 育鵬社が採択されました。

●選定委員会の意見
(選定委員会からの答申に育鵬社の公民に関する意見が含まれていない。詳細は不明。この審議過程が問題)

●教育委員の意見
・現代社会に力点を置いたところって大事。そういったところでは育鵬社が1つ良いところがある。現行(育鵬社)のままであえて変える必要はない。
・それぞれの教科書を見ていきました時に、偏りなく書かれている。突出して非常に教科書の記述に特色があるかと言えば、そういうことはない。現行の教科書(育鵬社)でよろしい。


2011年7月の審議
 育鵬社が採択されました。

●選定委員会の意見
 選定委員会では、調査員からすべての教科書の調査書と、調査員の中で話題になった意見や学校意見、研究会意見を参考に検討しました。その中で、育鵬社については、研究会からのみの意見で、調査員意見や学校意見はありませんでした。
 育鵬社は賛否両論多様
・賛成意見:わが国の主権としての領土問題、拉致問題に関する記述がある。日本国の主権について述べられていて、自国を愛せるような内容がある。
・反対意見:在日韓国・朝鮮人、中国人が多い東大阪市の現状からして、チベット問題や拉致問題など、配慮して取り組むべきである。前政権の首相や政府の写真が多く、少し古い。

●教育委員の意見
・国旗・国歌について4ページにわたって記載しています。また、領土問題や拉致問題など、主権・歴史観がわかりやすく説明されており、161ページには、日本人と外国人の国歌に対する意識と態度のちがいについてのエピソードが載っており、中段には木原氏の談話も紹介され、国際的な視点から国旗・国歌について教えており、踏み込んだ部分が特徴的でよい
・国家観が感じられるかどうかを重視すべきだと思いますが、そういう意味では、育鵬社はよい
・東大阪にはたくさんの在日韓国・朝鮮人の方々が住んでいらっしゃいますので、チベット問題等の人権問題についての配慮もすべきではないか
・国際社会の中で日本が国家としてどういう立場にあるかを教えていくことは大事なことであり、領土問題についてもしっかりと表記されている育鵬社がよい
・国旗・国歌や国際社会の中での日本の地位が4ページにわたり記載されており、併せて、領土問題の記載と日本国の主権も述べている育鵬社がよい
・日本の国を愛するという面で私も育鵬社がよい


育鵬社の中学・歴史の教科書への教育委員等からの意見

 歴史は、育鵬社を採択していませんが、参考に載せておきます。

2020年7月の審議 育鵬社に関する発言はありませんでした。
2015年7月の審議 育鵬社に関する発言はありませんでした。


2011年7月の審議

●選定委員会の意見
 育鵬社ですが、歴史的人物が多く出ており、元寇において御家人の努力がおさえられている。古事記・日本書紀について詳しく取り上げているのは、わが国の誇る文化であり、当時の人を知るには欠かせないものであり、仁徳陵古墳について等、しっかりと古代国家や古墳についての記載がある。一方、通史として学ぶのは中学だけであり、社会科の教科書に神話などを文化として載せるのは違和感がある。人物名の表記と読み方、日本語読みと原語読みの表記方法、どちらを優先にするかという意見もありました。先ほども申しましたが、東京書籍、帝国書院、日本文教出版につきましては、異なった意見はなく、育鵬社につきましては、多様な意見がございました。

●教育委員の意見
・育鵬社の教科書ですが、他の教科書では記載されている第1回帝国議会時の有権者率は、全国民の僅か1%強に過ぎなかった等の記述が抜けているところがあるなど、中学生が学問としての歴史を学ぶ入口として抜けている部分があり、また、大正時代の普通選挙法の制定と同様に治安維持法が制定された事情等の説明が抜けているので、採択には反対します。
・育鵬社や日本文教出版について、歴史観がわかりやすく説明されている。特に育鵬社は、掲載されている人名数が倍くらい多いのでよい
・はっきりとした歴史観を大切にしたいというスタンスですので、東京書籍か育鵬社のどちらかです
・歴史認識という部分で、育鵬社がよい


2015年審議の問題点

 平成27年(2015年)7月臨時会 会議録(2ページ)から次の事柄が分かります。

1.文部科学省から「保護者等の意見が、より良く反映される様に」という通知があった。

2.保護者から「教育委員会で調査した中には、現在使用している教科書(育鵬社の公民の教科書を含む)を使用してほしい」という意見あった。

3.文部科学省の通知に基づき、上記の保護者の意見について、「工夫を致し」、選定委員会で議論を重ねた。

4.乾委員長は問う:「選定委員会の答申の中には現在使用している教科書は(育鵬社の公民の教科書を含め)全て含まれていますか?」

5.事務局が答える:「現在使用しております中では、歴史と(育鵬社の)公民につきましては、(選定委員会の)答申に含まれておりません。

6.乾委員長は、文部科学省の通知や保護者の意見について何の疑問も持たず:
「はい、わかりました。😀👍」



 保護者や教員などで構成される選定委員会からの、育鵬社の公民教科書に対する意見は、含まれていないということです(詳細不明)。
 このため、育鵬社の公民教科書に関する選定委員会の意見について審議されることはありませんでした。できるはずがありません。

 文部科学省からの通知は重要です。この通知どおりに審議が進まなかったことは問題です。
 しかも、この説明が、全くされていません。

 「選定委員会より答申を受け採択する」のです。公民に関する選定委員会からの意見が不十分なのですから、公民を採択してしまうことについては疑問が生じます。
 選定委員会のあり方を無視して、教育委員だけで採決をしてしまった、ということです。

 選定委員会に何かトラブルや事情があったのであれば、その説明を公式に丁寧に行うべきでした。

 保護者の意見を無視するような結果になっており、恣意的な議事の進行及び採決があった、と思われても仕方がないと思います。

 公民の教科書が非民主的な手続きで採決されたのは皮肉な話です。

 その教科書を使って、東大阪市の子どもたちは公民の学習をしてきたのです。

 非民主的な意識が再生産されていくということでしょうか。
 ラグビーが実態として盛んでもないのに「東大阪市はラグビーのまち」と言い切ってしまう市役所職員がいるのは、非民主的な土壌があるからです。

 市民の意見を恣意的に公表しないという方策は、パブリックコメントでも行われています。


更なる問題 公民テキスト

 2020年8月の臨時会で育鵬社の公民が不採択となり
「やったー!😍👍」 

と喜んでいる御仁がいらっしゃるかもしれません。

 でも、「何故、こうも簡単に方針を変更したのか?」という疑問を持ちませんか?

 実は、第二の公民というべきテキストが完成・配付されたのです。

 東大阪市では、2019年(令和元年)度から、全中学校区で「東大阪小中一貫教育」を実施しています。
 総合的な学習の時間のうち年間15時間、市独自のテキスト「未来市民教育 夢TRY科」を使って夢TRY科の学習をします。

このテキストの内容は、ほぼ公民と同じです。😱💔

(参考)東大阪小中一貫教育

 このテキストは、教科書ではないため、教科書検定を受けませんし、(教育長及び4人の委員をもって組織される合議制の執行機関という意味での)教育委員会において審議されていません。そういう意味では、編集者は、教育委員会ではなく、教育委員会事務局です。

 教科書検定を受けていないため、本テキストの存在は一般には知られていません。しかも、学校に置いたままで、家に持ち帰らないため、保護者も内容を知りません

 テキスト「夢TRY科」を導入することによって、何の問題も表面化することなく所期の目的を果たせたため、育鵬社にこだわる必要はなくなった、ということも想定されます。

 このテキストは、
・旧枚岡市(山の手地域)出身の非日常の世界を生きる、すごい英雄を礼賛
・ラグビー愛好のための刷り込み教育
という内容です。教科書検定など通るわけありません。


 東大阪市においてすら、野球やサッカーの方が、ラグビーよりも人気があります。

 子どもには野球ファンに成長して欲しいと願う保護者もいるでしょう。しかしながら、東大阪市の公立学校に通わせると、ラグビーファンになってしまうという仕掛けがあります。

 「東大阪市はラグビーのまち」と聞いて、「ラグビー愛好者は少数なのに、何故、そのような標榜をするのかな?」という疑問を持ってください。誰しもが疑問に感じることです。

 スポーツ競技の種目の何を好きになってしまうのかはカワイイ問題です。ラグビーの振興という実害のない話題です。なので、たいした問題ではないといえば、そのとおりです。

カワイイですか?
カワイイ見た目に踊らされる

 でも、思想・信条の自由という観点からは、問題があると考えます。
 地域振興という美名の下で、教育制度を使って、個人の好みを恣意的に操作しているのです。

 地方自治体が作成したテキストですから国家を愛するということは書かれていません。郷土愛を育むのが本来のあり方です。しかし、郷土愛をラグビー愛にすり替えているのです。
 ラグビーを愛することが、郷土愛であるかのように教え込み、人気の無いラグビー競技の延命を図っています。行政を使って、そして公的教育を通してラグビー競技を救済する事業であることは見え透いています。
 仮にこれが教科書であったとするならば、日本の国を愛することを育むと言いながら、特定の者が商業的に有利になるよう子どもを誘導しているようなものです。

 小中一貫教育の一環として行われていますので、この教育制度には、大きな落とし穴があるのかもしれません。

 何のチェックも無いところで、テキストの作成・配付ができてしまい、テキストは学校に置いたままで保護者は見ないのです。教育委員会の審議で表沙汰になってモメゴトになる心配はありません。ある種の思想の推進者にとっては都合の良いシステムです。
 なので、この方策は、全国の自治体に今後広まっていくと考えられます。

 似たような事例が、香川県におけるネット・ゲーム依存症対策条例を根拠にした学習シートです。東大阪市と性格が異なる部分はあるものの、記載内容に疑問が生じるにも関わらず教育現場に配付してしまった点では似ています。
 政治や行政による教育支配は、表沙汰になっても進行していきます。😱💔


教科書問題の根本

 教科書問題の根本のひとつは、教育委員会の人事です。つまり、教科書の記述内容だけの問題ではない、ということです。
 2015年審議の際、選定委員会のあり方が問題になりましたが、会議録を見る限りにおいては、これについて教育委員会は適切な対応をしませんでした。
 また、夢TRY科テキストは、教育委員会事務局が作成しています。
 このように、行政の人事責任者が、懇意にする市役所職員を教育委員会事務局に配属すれば、教育は行政の思いのままになります。
 行政は「東大阪市はラグビーのまち」と標榜していますが、客観的に見て、市民にはそのような実態はありません。にも関わらず、夢TRY科テキストにおいて「東大阪市はラグビーのまち」であるような記載内容になっているのは、行政職員が教育に関与しているためです。


教科書の審議の流れの解説(参考)

1.春の定例会(例えば、令和2年度であれば5月の定例会)で、教科書の採択方針が決定される。同時に、教科書の選定委員会の委員12名の委嘱及び任命並びに選定委員会への諮問が決定される。

2.2カ月程度の後、選定委員会から答申がある。この答申自体は非公開だが、審議の中で、事務局(学校教育推進室長)が答申の概要を説明する(会議録参照)。

3.夏の臨時会(例えば、令和2年度であれば8月の臨時会)で、答申を尊重し審議し、教科書を決定する。


(参考)令和2年5月定例会会議録(抄)2ページ 採択の方針等の決定
 続きまして日程第3「議案第22号 令和3年度使用東大阪市立中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)教科用図書採択方針の件」につきましては、令和3年度使用東大阪市立中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)教科用図書について、「東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会より答申を受け採択する」との採択方針を決定するものでございます。
 続きまして日程第4「議案第23号 東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会委員委嘱及び任命の件」につきましては、東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会規則第2条及び第3条の規定に基づき、同選定委員会委員12名を委嘱及び任命するものでございます。
 続きまして日程第5「議案第24号 令和3年度使用東大阪市立中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)教科用図書採択に係る諮問の件」につきましては、議案第21号の採択方針を受け、令和3年度使用東大阪市立中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)教科用図書の選定について、東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会に諮問するものでございます。


(参考)東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会規則(抄)
(趣旨)
第1条 この規則は、執行機関の附属機関に関する条例(昭和42年東大阪市条例第15号)第2条の規定により、東大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会(以下「選定委員会」という。)の組織、運営その他選定委員会に関し必要な事項を定めるものとする。
(組織)
第2条 選定委員会は、委員12人以内で組織する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから教育委員会が委嘱し、又は任命する。
(1) 東大阪市立小学校、中学校又は義務教育学校に在籍する児童又は生徒の保護者
(2) 東大阪市立義務教育諸学校の校長及び教員
(3) 教育委員会事務局職員
3 教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者は、委員となることができない。
(委員の任期)
第3条 委員の任期は、前条第2項の規定により委嘱又は任命された日からその日が属する年度の末日までとする。ただし、委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 教育委員会は、委員に特別の理由があるときは、前項の規定にかかわらず、解嘱又は解任することができる。



原本

東大阪市役所>トップ>東大阪市教育委員会>教育委員会について>会議の審議内容

 会議録全文のPDFファイルは、個人的に設けた、次のフォルダーにあります。
https://drive.google.com/drive/folders/1240aQJDf3dkdEi1OOskED4fnCkdDFt7m?usp=sharing

 また、WARPを使えば、東大阪市役所のホームページから削除された会議録を閲覧・ダウンロードできます。



//以下 詳細***************************************

東大阪市教育委員会 平成27年(2015年)7月臨時会

1.日時:平成27年7月27日(月)
2.場所:市庁舎18階会議室1及び会議室2
会議録 2及び11~15ページ

//以下 平成27年(2015年)7月臨時会会議録*****************************


(植田教育次長)
 保護者等の意見が、より良く反映される様にという文部科学省からの通知に基づき、
工夫を致しました。その工夫の1つとして、教育委員会で調査した中には、現在使用して
いる教科書を使用してほしいという意見もございましたことを申し添えておきます。それ
らの要件も踏まえまして、選定委員会でも議論を重ねたと報告を受けておりますので、答
申を尊重したうえで、何とぞよろしくご審議のうえ、ご決定を賜りますようお願いいたし
ます。

(乾委員長)
 ご苦労さまでした。只今、ご説明を頂きました。答申の中には現在使用している教科書
は全て含まれていますか。

(植田教育次長)
 現在使用しております中では、歴史と公民につきましては、答申に含まれておりません。

(乾委員長)
 はい、わかりました。今聞かせていただきました、選定委員会、それから保護者の通知
等ございます。

(中略)**************

(乾委員長)
 それでは続きまして、社会 公民的分野についてよろしくお願いします。

(坂上学校教育推進室長)
 それでは、公民的分野でございます。東京書籍、教育出版、帝国書院の3者が選定に上がっております。協議のポイントとしましては、「振り返りが充実しているか」「社会に出ていく子どもたちに教えるのにふさわしい現代的な視点で、内容のバランスが良いか」「拉致問題の記載があるか」「国際的な視点で活用できる教材が多くあるか、特に東大阪市では多国籍の児童・生徒、またルーツを持つ児童・生徒がたくさん在籍していることを踏まえ、全ての子どもたちを大切にしているか」、以上が協議のポイントでございます。
 それでは、各教科書の話をいたします。まず、東京書籍でございます。「本文の内容を補完する写真・グラフ・地図等が豊富である」「ワイド版である」「『公民にアクセス』があり、本文で学習したことをさらに詳しく説明している」「机のマーク、学習をそこで振り返ることもできる」「『公民学習のはじめに』で、地理・歴史そして公民というπ型の学習を意識したものとなっている」
 教育出版でございます。「見開き2ページの基礎・活用の2段階の設定の振り返りがなされているので使いやすい」「ワイド版である」「『教科書の構成の使い方』という項目を目次の項目の次に2ページにわたって配列しているので、中学生もそこから入りやすいのではないか」「『公民の窓』『トリップ』など、コラムが充実している、また『振り返る』としてステップが2つある」「国旗・国歌や領土についてもしっかりと記載されている」「『言葉で伝えよう』や『ポスターセッション』など、子どもたちが発表するプレゼンテーションや発表する場があり工夫されている」
 3番目、帝国書院でございます。「見開き2ページの導入が充実している」「経済の分野で具体的な事例を取り上げ、具体的な事例で考えさせることができる」「ワイド版である」「『地理・歴史を振り返る』というコーナーがあり、学習のつながりがわかりやすい」「振り返りとして、『確認しよう』『説明しよう』ということで2つある」「『世界で活躍する日本人』生徒が興味・関心を持ち、公民の学習ができる」「内容が豊富、いろいろなテーマがある」「国旗国歌や領土問題についてもしっかりと記載されている」「レポート作成が充実している」
 以上3者でございます。なお現行の教科書は育鵬社でございます。

(乾委員長)
 ありがとうございます。それでは、社会科公民的分野につきまして、何かご質問ご意見はございませんでしょうか。
 順番に行かせていただきます。酒井委員いかがでしょうか。

(酒井委員)
 はい、これも現行の教科書が育鵬社ということで、それと東京書籍を私は考えてたんですけれども、国旗・国歌という部分に関しては、それぞれの教科書がかなり書かれているということで、それほど差はないかなと思ったんですが、ただ公民という視点からすると、現代社会に力点を置いたところって大事なのかなあと。そういったところでは育鵬社が1つ良いところがあるのかなということで、それほど差がないというか、現行のままであえて変える必要はないかなという判断です。育鵬社です。

(乾委員長)
 わかりました。それでは神足委員お願いします。

(神足委員長職務代理者)
 社会的事象にある多面的・多角的に考える力を持ってもらうために、子どもたちが興味・関心を持って学習をしていかなければいけない分野だということで、見させていただいたんですけれども、どの教科書も甲乙つけがたく、私はどの教科書というのは決められなかったというのが実情です。本当にどの教科書を選んでいただいてもいいなという風に考えております。

(乾委員長)
 はい。堤委員いかがですか。

(堤委員)
 公民分野というのは社会を知る、現代社会の問題を考えるということになりますので、どのような捉え方をするのかは、様々に分かれている部分でもございます。それぞれの教科書を見ていきました時に、いわゆる現代社会の仕組み、あるいは課題を読み解くという点に関しまして、偏りなく書かれているかと思いました。それで、突出して非常に教科書の記述に特色があるかと言えば、そういうことはないと判断をいたしましたので、現行の教科書でよろしいのではという他の委員の方と同じ考え方をしております。

(傍聴席より発言あり)

(乾委員長)
 お静かにお願いできますか。
 それでは教育長いかがですか。

(西村教育長)
 公民については生徒たちが興味・関心を持って意欲的に取り組み主体的に学習すること、その教科書として創意工夫されているかという視点で考えますと、今日、議案であがっております3者のほうから様々な角度から検討し、歴史についても教育出版ということでありまして、とりわけ教育出版については国歌・国旗・領土問題についてはかなり充実した記載をされているということを総合的に判断しまして、私は選定委員会からあがっております教育出版を推薦したい、このように考えております。 

(乾委員長)
 現行の教科書が育鵬社ということと、それから教育出版で選定したいということですが、神足委員、あえて言えばどちらになるんですかね。

(神足委員長職務代理者)
 意見はどちらでもということになるので、委員長にお任せしますけれども、保護者の方が現行でと言うのであれば現行でも構いませんし、他のと言うのであればそちらでもいいと思っております。

(乾委員長)
 皆様方この辺についてご意見いかがですか。なかなか決めにくいところはあるんですけども。
 私自身も、いろんな思考・判断・表現等で、現行の教科書で行かせていただこうと思っておりますが、いかがですか皆さん。

(傍聴席より発言あり)

(乾委員長)
 静かにしていただけますか。
 静かにしていただけない場合は退席をお願いする場合がありますのでよろしくお願いします。
 教育長いかがですか。

(西村教育長)
 先ほど申し上げた通りです。

(乾委員長)
 どうさせていただきましょうか。
 酒井委員も変わりませんか。

(酒井委員)
 はい。

(乾委員長)
 ということで、堤委員、神足委員がおっしゃっていただいている部分で、育鵬社でもよろしいですか。

(傍聴席より発言あり)

(乾委員長) 
 お静かにお願いできませんか。
  もう少し各委員のご意見聞かせていただきましょうか。よろしいですか。

(傍聴席より発言あり)

(乾委員長)
 これ以上同じことをおっしゃられたらご退席していただくことになります。

(傍聴席より発言あり)

(乾委員長)
 申し訳ございませんがご退席お願いします。

(傍聴人1名退席)

(乾委員長)
 よろしいでしょうか。もう少し論議させていただきましょうか。それともこのままでよろしいでしょうか。

(西村教育長)
 委員長のご判断で。

(乾委員長)
 よろしいですか。ご意見ございませんか、皆さん方。ご意見ございませんか。

(各委員)
なし。

(乾委員長)
 それでは社会科公民的分野につきましては、現行の育鵬社に決定させていただきます。

//以上 平成27年(2015年)7月臨時会会議録*****************************



東大阪市教育委員会 平成23年(2011年)7月臨時会

1.日時:平成23年7月26日(火)
2.場所:市庁舎12階 会議室1

会議録 4~9ページ及び21~23ページ

//以下 平成23年(2011年)7月臨時会会議録*****************************

(戸山委員長)
 次に、社会の歴史について審議いたしたいと思いますので、説明をお願いいたします。

(園田学校教育推進室長)
 社会の歴史につきましては、7者のうちから4者を取り上げました。後ほど詳しく申し上げますが、育鵬社につきましては、賛否両論多様な意見がでました。他の3者につきましては、異なった意見は出ていません。まず、東京書籍につきましては、版が大きく見やすいので、文章表記の中に関連するページを記載することができ、生徒がわかりやすく、興味を持って学ぶことができる。次に、帝国書院ですが、タイムトラベルコーナーなど歴史の時代を大観させる挿絵が豊富であり、人物コラムがよい。また、人物索引が分類され、ルビが打たれていてわかりやすい。次に、日本文教出版ですが、プラスαのコーナーは興味深く、索引にルビが振ってあるのでわかりやすい。最後に、育鵬社ですが、歴史的人物が多く出ており、元寇において御家人の努力がおさえられている。古事記・日本書紀について詳しく取り上げているのは、わが国の誇る文化であり、当時の人を知るには欠かせないものであり、仁徳陵古墳について等、しっかりと古代国家や古墳についての記載がある。一方、通史として学ぶのは中学だけであり、社会科の教科書に神話などを文化として載せるのは違和感がある。人物名の表記と読み方、日本語読みと原語読みの表記方法、どちらを優先にするかという意見もありました。先ほども申しましたが、東京書籍、帝国書院、日本文教出版につきましては、異なった意見はなく、育鵬社につきましては、多様な意見がございました。

(戸山委員長)
 それでは、社会の歴史につきまして、何かご質問、ご意見等ございませんでしょうか。

(朝日委員長職務代理者)
 育鵬社の教科書ですが、他の教科書では記載されている第1回帝国議会時の有権者率は、全国民の僅か1%強に過ぎなかった等の記述が抜けているところがあるなど、中学生が学問としての歴史を学ぶ入口として抜けている部分があり、また、大正時代の普通選挙法の制定と同様に治安維持法が制定された事情等の説明が抜けているので、採択には反対します。日本文教出版は、鎌倉時代と室町時代が一緒に取り扱われていますが、これは分けるべきであり、その方が中学生には理解しやすいと思います。

(酒井委員)
 はっきりと歴史観が感じられるのは、育鵬社だと思いました。また、東京書籍についても、字が大きくて見やすく、内容のバランスもよいかと思いました。

(西村教育長) 
 育鵬社や日本文教出版について、歴史観がわかりやすく説明されていると思います。特に育鵬社は、掲載されている人名数が倍くらい多いのでよいのではないかと思います。選定委員会でこれについての議論はされなかったのですか。

(景山教育次長)
 人名数の件については、大阪府の報告書にもありました。しかし、人名数の多い少ないで決められるものではありません。人名にルビがあってわかりやすいという意見と、人名数の掲載の多い少ないについての良し悪しは別として、数が多いのではないかという意見がございました。

(神足委員)
 日本文教出版は、今現在どの時代を学んでいるのかがわかりやすく工夫されているのでよいのではないかと思いました。育鵬社、帝国書院についても同様のものがあり、わかりやすくてよいのではないかと思いました。

(戸山委員長)
 今、各委員からご意見をお伺いし、東京書籍、日本文教出版、育鵬社などさまざまな意見をいただきました。結論を出すには、今しばらくの時間を要すると思いますが、採択すべき種目が他にもまだたくさん残っている状況でございます。つきましては、社会の歴史につきまして、英語の後にあらためて審議をし、採択させていただきたいと思いますが、これにご異議ございませんでしょうか。

(各委員)
なしの声あり

(戸山委員長)
 それでは、社会の歴史については、後ほど審議し、採択させていただきたいと思います。
 次に、社会の公民について審議いたしたいと思いますので、説明をお願いいたします。

(園田学校教育推進室長)
 社会の公民につきましては、社会科の歴史と同様、7者のうちから4者を取り上げました。後ほど詳しく申し上げますが、育鵬社、教育出版につきましては、賛否両論多様な意見がでました。他の2者につきましては、異なった意見はありません。
 まず、東京書籍ですが、人権的視点、国際状況、今の問題などがバランスよく取り上げられている。人権的な記述も適切であり、写真・図・資料がよく、補足説明が入っていてよくわかる。グローバルな視点で地球の中にある日本として、意見説明されている。次に、教育出版ですが、裁判員制度が体験的に扱われている資料集としても使え、取り扱い内容として、「言葉で伝え合う」、読み物資料「より深く考えよう」といったコーナーが子どもたちと一緒に考えていきやすい。一方、菅首相の写真が多すぎるという意見もありました。次に、日本文教出版につきましては、人権的視点、国際状況、今の問題などがバランスよく取り上げられていて資料集としても使える。東大阪市の扱いが大きい。写真・図・資料がよく、グローバルな視点で地球の中にある日本として、意見説明されている。最後に、育鵬社ですが、わが国の主権としての領土問題、拉致問題に関する記述がある。日本国の主権について述べられていて、自国を愛せるような内容がある。一方では、在日韓国・朝鮮人、中国人が多い東大阪市の現状からして、チベット問題や拉致問題など、配慮して取り組むべきである。前政権の首相や政府の写真が多く、少し古い、という意見もありました。先ほども申しましたが、東京書籍、日本文教出版につきましては、異なった意見がなく、教育出版、育鵬社につきましては、多様な意見がございました。

(戸山委員長)
 それでは、社会の公民につきまして、何かご質問、ご意見等ございませんでしょうか。

(西村教育長)
 育鵬社は、国旗・国歌について4ページにわたって記載しています。また、領土問題や拉致問題など、主権・歴史観がわかりやすく説明されており、161ページには、日本人と外国人の国歌に対する意識と態度のちがいについてのエピソードが載っており、中段には木原氏の談話も紹介され、国際的な視点から国旗・国歌について教えており、踏み込んだ部分が特徴的でよいと思います。

(酒井委員)
 公民に関しては、中身から国家観が感じられるかどうかを重視すべきだと思いますが、そういう意味では、育鵬社はよいのではないかと思います。また、東大阪や奈良についての記載という点では、日本文教出版もよいのではないかと思います。

(朝日委員長職務代理者)
 育鵬社の教科書ですが、東大阪にはたくさんの在日韓国・朝鮮人の方々が住んでいらっしゃいますので、チベット問題等の人権問題についての配慮もすべきではないかと思います。

(神足委員)
 東京書籍や育鵬社など自衛隊についての記載がありますが、東日本大震災後に記述が変わったようなことはありますか。

(園田学校教育推進室長)
 東京書籍につきましては、39ページの自衛隊についての記載ですが、「国際社会で活躍する自衛隊」から「東日本大震災で活躍する自衛隊」に訂正されております。

(戸山委員長)
 ただいま、各委員からさまざまなご意見をいただきましたが、公民につきましても結論を出すには、今しばらくの時間を要すると思いますので、先程の歴史同様、他の種目の審議の後にあらためて審議をし、採択させていただきたいと思いますが、これにご異議ございませんでしょうか。

(各委員)
なしの声あり

(戸山委員長)
 それでは、社会の公民につきましても、後ほど審議し、採択させていただきたいと思います。

(中略)**************

(戸山委員長)
 それでは、改めて社会の歴史について審議いたしたいと思いますので、再度意見がありましたらお願いいたします。

(園田学校教育推進室長)
 他の教科も調査員からの報告の説明をしましたので、箇条書きで申し上げます。
 まず、東京書籍は、版が大きく見やすい。写真や資料が多く、副教材を買う必要がない。章と章のつなぎに年表がつけられ、時代の流れをつかみやすいものにしている。各章の最後には、確認の設問を入れたり、学習した時代の振り返りを設けるなどして、学習した知識の定着を図っている。“みんなで考えてみよう”では、生徒が、自ら考え発表させる内容がある。次に、帝国書院は、各章の導入には、“タイムトラベル”が設けられ、大きなイラストで各時代の特色が表現されている。イラストからたくさんのことを子どもたちに考えさせることで、学習への意欲が高まる。単元ごとに、課題とチェック&トライが設定され、学習のねらいをはっきりさせ、その知識の定着を図る工夫がされている。最後に、日本文教出版は、様々な人権問題について、生徒の理解が深まる内容になっている。全単元を通して、世界の中で日本史を捉えられるよう地図や資料などが配置されている。各章の導入部には、大きな絵や写真を配置し、その時代の特色をイメージしやすいように工夫されている。章末の“学習の活用”では、各時代の特色を整理しやすいものになっている。以上の意見がありました。

(朝日委員長職務代理者)
 東京書籍は、わかりやすく、副読本が要らないのがよいと思います。先ほども述べましたが、日本文教出版は、鎌倉と室町が一緒に取り扱われているが、やはりこれは分けるべきであると思います。

(戸山委員長)
 現在、日本文教出版の教科書を使用していますが、英語と同様に発行者が変わっても、新2年生・3年生は継続使用できますか。

(園田学校教育推進室長) 
 新3年生のみ継続が可能です。

(酒井委員)
 はっきりとした歴史観を大切にしたいというスタンスですので、東京書籍か育鵬社のどちらかです。

(西村教育長)
 私は、歴史認識という部分で、育鵬社がよいと思います。

(神足委員)
 人物が多く掲載されているものの方がよいのか、深く掘り下げているものの方がよいのか、決めかねています。

(朝日委員長職務代理者)
 歴史は過去のすべてを肯定しても否定してもいけないと思います。自然観と同じように日本の歴史観を感じていけることが大事だと思います。

(戸山委員長)
 東京書籍が見やすく生徒が興味を持てるように感じます。
 それでは、社会の歴史について、賛否をとりたいと思います。
 東京書籍がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(3名挙手)
 帝国書院がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(挙手なし)
 日本文教出版がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(挙手なし)
 育鵬社がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(2名挙手)

(神足委員)
 正直なところ私は、資料としては東京書籍で、色んな人物が登場するというところでは育鵬社がよいと思うので決めかねています。ただ、どちらかと言われると東京書籍がよいのではと思います。

(戸山委員長)
 事務局の方から何か意見はありませんか。

(園田学校教育推進室長)
 選定委員会の中で、教科書を選定するにあたっては、基本的に子どもたちがどう歴史に興味を持って学習を展開していけるかということから、歴史の流れをつかみやすいとか、読みやすい、使いやすいということについて見ていく必要があるのではないかという意見が出ておりました。

(戸山委員長) 
 この件については、慎重に決めていきたいと思いますので、社会の公民の方を先に決めたいと思います。
 先ほど伺った以外に、調査員からの意見等ありましたらお願いします。

(景山教育次長)
 選定委員会では、調査員からすべての教科書の調査書と、調査員の中で話題になった意見や学校意見、研究会意見を参考に検討しました。その中で、育鵬社については、研究会からのみの意見で、調査員意見や学校意見はありませんでした。それらをもとに全者を検討した結果、4者を答申させていただきました。

(酒井委員)
 数学などと違って社会の場合は、教えやすさだけではなく、何を教えるかも大事だと思います。国際社会の中で日本が国家としてどういう立場にあるかを教えていくことは大事なことであり、領土問題についてもしっかりと表記されている育鵬社がよいと思います。

(西村教育長)
 国旗・国歌や国際社会の中での日本の地位が4ページにわたり記載されており、併せて、領土問題の記載と日本国の主権も述べている育鵬社がよいと思います。

(神足委員)
 日本の国を愛するという面で私も育鵬社がよいと思います。

(戸山委員長)
 それでは、社会の公民について、賛否をとりたいと思います。
 東京書籍がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(1名挙手)
 教育出版がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(挙手なし)
 日本文教出版がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(挙手なし)
 育鵬社がよいと思われる方は挙手をお願いいたします。(4名挙手)

(戸山委員長)
 過半数となりましたので、社会の公民については、育鵬社に決定いたしました。
 最後に、社会の歴史について決定したいと思いますが、更なる意見はございませんでしょうか。

(各委員)
意見なし。

(戸山委員長)
 それでは、先ほど賛否を伺ったとおり、3対2で東京書籍に決定いたします。 

//以上 平成23年(2011年)7月臨時会会議録*****************************

以上