訪問歯科医えるさの日記

フリーランス訪問歯科医が診療していて気づいたことを書いています。

私が大学を辞めてフリーランスになった理由

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私のプロフィールを見てくださった方の中には「フリーランス歯科医師」という働き方に疑問を持った方もいるかもしれません。

フリーランス歯科医師はあまり認知されていないと思います。

この職業に関して、私の歯科医師としての歩みをつらつらと書いてみました。

歯科医師の方もいちドクターの話として見ていただき、少しでも参考になったら幸いです。

 

歯科医師の進路

歯科医師は大学を卒業して免許を取得後、研修医として1年勤務することが定められています。

研修医を終えても、まだまだ知識も技術も未熟なため、仕事をしつつ勉強していきます。

勉強のための職場は「大学」か「開業医」か、大きく分けると2つになります。

口腔外科など、「大きい病院に勤務する」というパターンもあると思いますが、上記2つに分けた理由は「給与」です。

 

「大学」=給与なし

「開業医」=給与あり

その意味で「大きい病院」は「開業医」の方に分類されます。

 

そうです。歯科の世界でも「無給医」は存在するのです。

 

歯科の無給医問題に関して、思っていることは山のようにありますが、正直今はまだそれを語る勇気はありません。

無給で働く全国の歯科医師のためはもちろん、日本の将来のためにも声を上げるべきだとは思いますが、今は怖くてできません。

下手なことをすれば歯科医師の世界から抹殺されるのではないかと思ってしまうのです。

大げさな、と思うと思いますが、大真面目です。今も書いている手が震えています。

 

医者の無給医問題は、調べていただければもう少し詳細に書いてあると思います。

ここではあえて詳細は控えさせていただきます。

 

私は研修を終えて「大学」で学ぶという選択をしました。

なぜ無給なのに働くのか?他の職種の方々から心底理解できないという感じで問われるのですが、

  1. 勉強をするという観点で言えば一番良い環境だと判断したから
  2. 大学で無給で働きながら学ぶというのが当たり前の選択肢として存在するため、もはやそこへの疑問が薄れている
  3. 経済的に裕福な家庭で育っている人が多い、奨学金もあることなどから、給与がなくても何とか生活できてしまう

私の場合、理由は大きくこの3つ。1→3の順でした。

 

3に関して、私は大学での身分上、奨学金がもらえませんでした。実家から通うことで生活費を浮かせば生活はできました。また、バイト先を含め週6日働いており帰宅時間も大学勤務の平日は21時頃だったため、家事をあまりやらなくて済んだのは非常に助かりました。

 

2に関して、もはや「文化」と化しているということです。外国ではウォッシュレットがないのが普通ですが、その国の人たちは特に不便とか不満を感じて毎日を過ごしていないのと同じです。日本に来ても「日本はすごいな、でもうちの国ににはないのが普通よね」といった感じです。

 

1に関して、大学に残る決心をした歯科医師のほとんどが1番にこれを理由に挙げるのではないでしょうか。

開業医、特に普通のクリニックはとにかく患者をどんどんこなす(失礼ですが)ことが最優先なので、教育は後回しになりがちです。経験年数が浅かろうが、貴重な戦力なのです。

対して大学は教育を一つの役割として明確に定めています。教育を行うためには採算が合わないこともありますが、それをやる余裕が(多少)あるということです。

このような事情は研修医を終える頃の歯科医師ならばみんな分かっています。その上で進路を選ぶ際に、各々の事情を考えて選択していきます。

 

私は「無給」という環境ではあったものの、大学で学ばせてもらったことには感謝しています。

どの業種でもそうでしょうが、新人を教育するのは本当にエネルギーが要ります。それに毎年付き合っている大学の先生方には本当に頭が下がります。

現在の私の知識や技術を身につけられたこと、いい職場を紹介してもらえたこと、いい仲間に出会えたことは全て大学にいたからこそです。まずはそのことに感謝したいです。

 

大学から定期非常勤かけ持ちへ

現在の私のスケジュールは、月曜→Aクリニック、火曜→Bクリニック…のように曜日毎で違うクリニックで働く「定期非常勤」という働き方です。

医師ほどスポットバイトの募集はないと思うので、フリーランス=定期非常勤ということになるのではないかと思います。

 

非常勤で2〜3ヶ所の勤務先を掛け持ちしている歯科医師は多いと思いますが、私のように5ヶ所(+大学で6ヶ所)で働いている人はあまりいません。

矯正科だと月1のバイト先が多くて8ヶ所とかいうのも珍しくないみたいです。(月1でも定期なので「定期非常勤」)

 

大学は一応立場上は辞めたということになっていますが、 メインで業務を回しているメンツから外れたという感じで、“サブメンツ”として週1回お手伝いしつつ勉強させてもらっている感じです(もちろん無給で)。

 

私の勤務先が5ヶ所になったのは特に大きな理由があるわけではなく、「◯曜日空いてる?バイトの募集があるんだけど」と聞かれ、単純に空いてるかどうかだけ考え「空いてるんで行けます!」と答えていたらこうなってしまいました(笑)

 

フリーランスになったばかりの4月は朝に乗る電車を間違えてしまうのではないか、起きる時間を間違えないか毎日不安になり、勤務日に寝坊して慌てる夢を見たりしました(笑)

でも結果としてそのようなミスは今のところ起こしていません。

 

大学を辞めようと思ったのは、私自身が抗いがたいルールに従って大きな組織の下で働くことに向いていないと思ったから。

私は根本的に自由が好きな人間で、自分があまり納得できない誰かの作ったルールに従って動くことが根本的に苦手であることに気づいてしまったのです。サラリーマンみたいな働き方は私には我慢できませんでした。だからサラリーマンの方々はすごいと思います。

 

フリーになって、本当に精神的には楽になりました。いかに自分に合わないことをやっていたかがよく分かりました(笑)

また肉体的にも楽になりました。7時くらいには家に帰れるようになり、家事もある程度こなせる余裕ができました。寝る時間も増え、自分に向き合う時間もできました。

フリーになって最初にやったのは病院に行くこと(笑)。整形外科でMRIを取り(ヘルニアでした)、婦人科検診へ行き、胃カメラを飲みました。どれも気になっていましたが、週6勤務時代は行けませんでした。まさに医者の不養生ですね(笑)

 

勤務先が多いことについて「大変でしょ?」「忙しくて疲れそう」と言われますが、私は勤務先が多いことでストレスを感じることはあまりありません。

今後フリーで働くことで大変だったこと、いいことをまた改めてまとめようかと思いますが、勤務先が多いと私が苦手な「ルール」をあまり苦痛に感じずに済むのです。

自分が納得できないルールも、そのクリニックの個性の一部と捉える余裕があるというか。

これはフリーになって他の専門職の人と話しても同じ感想を持つ人が多かったです。

 

大学にまだ籍を置いている理由は、認定医の資格取得を目指しており、大学にいた方が取りやすいからです。

同期や後輩など気心の知れた知り合いに会えることや、ベテランの先生方に困っている症例の相談ができることも大きなメリットだと思います。

 

あと当然ですが、稼げる!!(笑)

一人暮らしの人なら死活問題ですからね。節約から節税に考え方が180度変わりました(笑)

 

今回のコロナでフリーランスは何の保証もないことを改めて痛感しましたが、自由が好きな私は保証よりも自由なことの方が大事なので、フリーであることを後悔していません。

 

 

 

まとまりのない長文になってしまいました。自分の人生をそのまま語ると熱くなるもんですね(笑)

歯科医師の働き方について、私もまだまだ若輩者なので語れるほどの知識も経験もありませんが、今後も自分の経験と感想をまとめたり、何かしらの形で発信して誰かのお役に立てればいいなとささやかながら思っています。

 

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!