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2020年7月1日水曜日

大空にかかるスペクトル-虹ができる仕組み③

虹は二重にかかる

 虹のできる基本的なしくみを解明したのは「虹の色はどこから?ー虹ができる仕組み②」で説明した通り、デカルトとニュートンです。デカルトは水滴中の光の進み方を解明し、ニュートンは虹の色が生じる理由を突き止めました。

 雨が降ったあとの空には、無数の水滴が浮遊しています。これらの水滴が太陽光を分散して大空に虹を作ります。虹というと、次の写真のように空に1本の虹がかかった風景を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。


大空にかかる虹の架け橋

 ところが、虹をよく観察してみると、明るい虹の上側にもう一本の暗い虹がかかっていることがわかります。下の写真は上の写真のコントラストと明るさを調整したものです。少しわかりにくいかもしれませんが、矢印の先にもう一本の虹がかかっていることがわかると思います。上の写真もよく見ると、暗い虹が見えると思います。


明るい虹の上に暗い虹が見える

 次の映像は2011年7月に大阪市内の上空で観測された二重の虹の映像です。明るい虹の外周に暗い虹がかかっていることがわかります。

 このように虹は下側の明るい虹と上側の暗い虹が一対になって現れますが、暗い虹は視認しずらい場合が多々あります。なお、下側の明るい虹を主虹、上側の暗い虹を副虹といいます。主虹と副虹では色の並び方が逆になっています。主虹は外側から赤〜紫に変化していますが、副虹は内側から赤〜紫に変化しています。

 虹の神話ー虹ができる仕組み①でも説明した通り、虹は主虹と副虹が一対になって現れることが古くから知られていました。虹ができたときには、副虹が見えていないかどうか確認してみましょう。

虹ができる仕組み

 空気中に浮遊している水滴に太陽光が当たると、光は水滴の表面で屈折して水滴の中に入ります。その光は、水滴の内側で反射し、再び水滴の表面で屈折して外へ出てきます。この過程で光の分散が起こります。そのため、虹が見えるのは太陽と反対側の空に見えます。このとき、次の図のように、水滴の上側から入った光は主虹を作り、下側から入った光は副虹を作ります。


水滴中の光の進み方 主虹(左)と副虹(右)

 主虹は、水滴の中で光は1回だけ反射しますが、副虹は2回反射します。副虹が主虹より暗いのは水滴中の反射回数が多いからです。理論的には水滴の中で3回以上反射する光線もありますが、反射回数が多くなると光が弱くなるため、それらの虹は視認できません。

 なお、強風が吹いていて水滴の形が歪んでいる場合、無数の水滴から光があらゆる方向に反射したり、出てきたりして、光が散乱してしまうため虹はできません。

 水滴から外へ出てくる光は、次の図のように、光の色ごとに特定の角度で明るくなります。主虹では、赤色の光は約42度、紫色の光は約40度で明るくなります。副虹では、赤色の光は約51度、紫色の光は約53度で明るくなります。


主虹と副虹が見える角度

 主虹と副虹の間の空は、主虹の下側や、副虹の上側に比べて暗く見えます。この部分をアレキサンダーの暗帯といいます。

 アレキサンダー暗帯は、古代ギリシアの哲学者アフロディシアスのアレクサンドロスの名前に因んで名付けられました。アフロディシアスのアレクサンドロスはアリストテレスの著書の註解者として有名です。アリストテレスの気象学について解説した下記の著書で、主虹と副虹の間が暗くなることについて言及しています。
Alexander of Aphrodisias, Commentary on Book IV of Aristotle's Meteorology 

 次の写真は主虹と副虹が見えている虹の写真をトリミングしたものです。アレキサンダーの暗帯の領域の空が暗く見えていることがわかります。


アレキサンダー暗帯

 主虹の内側と副虹の外側の領域は水滴からの光が届くため本来の空の色よりも明るく見えています。一方、主虹の外側と副虹の内側のアレキサンダーの暗帯の領域は、水滴からの光が届かないため、本来の空の色が見えて相対的に暗く見えます。「暗帯」では元の空の色が見えているのですから、主虹の内側と副虹の外側の領域を「明帯」と呼んだ方が的を射ているかもしれません。

大空にかかるスペクトル-虹ができる仕組み③

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