読書メモ「よくわかる!家賃債務保証の知識:中島拓」
賃貸借契約を家主と入居者が結ぶ際、連帯保証人をつけるか家賃保証会社に加入するかが必要となる。
この保証契約に関し学ぶなら今回紹介する一冊がオススメだ。
この家賃保証会社についてよく理解せず保証契約も不動産業者に任せきりだ、という大家は多いと思う。
契約中何も起きなければ良いが、家賃滞納や夜逃げなどが起こった場合、家賃債務の保証関係は理解していないと痛い目を見るだろう。
1.不動産賃貸と保証人
不動産の賃貸借契約を結ぶ際につける保証は2つの方法がある。
1つは旧来から行われてきた
連帯保証人
をつけるもの。
もう1つは近年増加しつつある
家賃保証会社
と契約するもの。
連帯保証人をつける方法はライフスタイルや家族との繋がりが変化する背景もあり、
年々減少傾向にある。
それに対し家賃保証会社と契約する方法は、増加傾向にある。
・賃貸借契約上の保証人は、契約期間内を包括的に「根保証」する存在
普通賃貸借であれば2年間が一般的だが、その期間の債務を保証する契約となっているだろう。
この根保証契約とは、2年間という継続的な取引が行われる契約に用いられるもので、他には就職時に取り交わす「身元保証」が該当する。これは就職する人間が、会社に損害を与えた場合、その債務を保証人に請求することができるという主旨だ。
・賃貸借契約を更新しても連帯保証人との契約も更新されるとは限らない。
普通賃貸借契約の場合、更新期間が過ぎ入居者が継続して住みたいのであれば、そのまま契約を更新することになる。
しかしここで注意したいのが
連帯保証人との保証契約も自動更新されるわけではない
ということだ。
入居から2年が経過すれば保証人の状況も変化して当然であり、改めて保証契約を結び直さなくてはその効力が生じない可能性が高い。
また普通賃貸借契約の場合、更新を家主が拒絶する場合、家賃滞納など「正当な理由」が必要となる。
・家賃滞納時は直ちに契約を解除し、保証人に連絡する。
賃借人が長期間家賃を滞納しているのに、家主が契約を解除せず賃借人に使用させたままにするのは「信義の原則」に反するので、保証人は一方的に保証契約を解除できる。
つまり家主が取るべき措置を怠り、いたずらに保証人の債務を増やすことは許されないのだ。
・賃借人と保証会社の契約でも連帯保証人が必要となる場合がある。
賃貸借契約の保証は包括的だが、保証会社の保証はその一部に限定される。
・物件の瑕疵および原状回復を原因とする不払いは、保証会社の免責事由となる。
つまり物件に不具合があり、修理するしないなどで家主と入居者が揉めていることを理由とする家賃不払いは、保証会社は代位弁済しないということだ。
・保証会社が夜逃げ、倒産した場合
基本的に別の保証会社に加入してもらうこととなるが、加入時の保証料を誰が支払うかが問題となりえる。最悪は家主が払うことになることもあるだろう。
2.保証会社と不動産業者との関係
物件の管理や客付けをお願いする不動産会社から保証会社を提案されることは多い。
家主にこだわりがなければその提案に従って審査をしてもらうだろう。
保証会社と不動産業者はお互いの利益で関係が繋がっている。
(1) 契約手数料
不動産業者が契約を取ると得られるマージンのこと。
この金額は保証会社が自由に決めることができ、一律で決まっているものではない。
規模が小さい保証会社は契約を取るため、この手数料を他社より多く出すことが多い。
小さな保証会社は当然その破綻するリスクも大きく、そのリスクを負うのは家主になるのだ。
(2) 与信基準
入居希望者と保証契約を結ぶかどうかは、各保証会社の基準に従って審査される。
傾向として大手の保証会社は審査が厳しい。
一方新興で小規模の保証会社は審査が緩い。
不動産業者としたら、せっかく入居希望者を見つけたのに審査で落ちるのはかなわない。
そのため不動産業者は
手数料が多く、審査が緩い保証会社
を選びやすくなる。
また家主も将来保証会社が破綻するリスクより、目の前の空室リスクを優先させるため、どこでもいいから保証会社の審査が通れば良い、と考えがちだ。
3.根保証の極度額を設定しないと連帯保証が無効になる
2020年4月1日に民法が改正された。
これ以降に連帯保証人をつける場合、保証する債務の
極度額を具体的に設定する必要
が出てくるのだ。
この改正点については次のサイトなどで確認してほしい。
極度額とは賃貸借契約において、保証人に降りかかりかねない債務の上限のことで、普通賃貸契約2年間で家賃が月5万円なら
2年間分の家賃(5万円✕24ヶ月)120万円+原状回復費用
を具体的に契約書に記載する必要があるということだ。
これまで連帯保証契約を結ぶ際、この金額を記載しないため気軽に契約していた人も具体的な120万円という金額を見ればためらうことは必至だ。
そのため今後はよほど親しい親族でもなければ、連帯保証契約を結ぶことは難しいだろう。
またこれまで結んでいた連帯保証も、更新時にこの具体的な金額を設定して契約し直さなければならないので、家賃保証会社と契約をし直すケースも増えるだろう。
4.おわりに
保証契約についてはいざ家賃の滞納などが起こらない限りは、気にする必要がないことかもしれない。
しかし、いざ起こってから勉強していては遅いだろう。
事前に大家が正しい知識を身につけ、備えておければ被害も最小限で留められるのではないだろうか。