サラリーマンドライバーの時代

 トラックドライバーの賃金平均は年収500万円にも満たない。リスクと隣り合わせの仕事にも関わらず、割に合わないとの声が聞こえてきそうだが、ここを変えていかない限り、ドライバー不足の解消はまず難しいのではないかとも思う。

 トラックの業界団体で、全日本トラック協会という団体がある。全国のトラック運送会社約6万社が集まる団体であるが、そこでは、毎年、業界の実態調査が行われており、このほど2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態調査結果なるものがまとめられた。令和元年の5月から7月の実態を調査したもので、約650社が回答している。

 それによると、男性ドライバーの平均賃金はというと、月34万6600円で、前年よりも2.1%増となっており、年間賞与を加えると、月39万5200円となり、前年よりも5.5%増となっている。

特積み、いわゆる路線のドライバーは、賞与込みで月41万5100円で前年よりも7.4%も増えているが、一般のドライバーはというと、月37万1500円となり前年よりも増えたのは僅かに0.5%となっている。一般においては、賞与を除くと、月33万5700円となり、前年よりも0.8%のマイナスとなっているのだ。

 一方、女性ドライバーの平均賃金はというと、月27万1200円で、前年よりも6.3%マイナスとなっており、賞与を含めても月30万100円と前年よりも4.9%マイナスとなっている。 

 年収にすると、特積みのドライバーでも498万1200円と、僅かではあるが年収500万円に届かない。一般ドライバーになると、445万8000円と、500万円には遠く届かない状況だ。女性ドライバーに至っては、360万1200円と400万円にも届いていない。

 年齢別賃金では、50歳から59歳が月41万1500円と最も高くなっているが、40歳から49歳が41万900円と僅か600円の差でしかない。30歳から39歳は39万800円と、40万円を割るが、それでも50歳代と比べ、差は僅かに2万円だ。

 ドライバーは、体が資本の力仕事といえるため、若い働き盛りの時が最も稼げるといわれている。そういう意味では、30歳と50歳のドライバーの賃金を比較して、50歳の方が賃金水準が高いという結果に、少し違和感も覚えるところでもあるが、しかし言い換えると、仕事を続けても、20年で2万円しか賃金が上がらないということも言えるわけで、そう考えると、ドライバーという仕事に、夢も希望も抱けないのではないだろうか。

事故を起こせば重大事故や死亡事故になりやすい、大きなリスクと隣り合わせでありながら、労働時間はというと、全産業の平均より20%も長いのである。これでは、ドライバーに進んでなりたいという若者はいないのは至極当然といえる。

 スポーツ選手のように体が動く若い時の方が活躍でき、稼げるというように、ドライバーもバリバリ働ける若い時の方が稼げるということにしても構わないのではないか。昔のように無秩序というわけにはいかないが、若者だとこれくらい稼げるのだよという何かがあれば、それが一つの魅力にはなるはずだ。

逆に、それができないならば、せめて年相応な賃金体系に変えていかねばならない。完全なサラリーマン化にするということもありなのではないだろうか。今の時代を考えると、むしろその方が人手不足の解消につながるといえるのかもしれない。もしかすると、「サラリーマンドライバー」という考え方が時流なのかもしれない。

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