【中長編】終わりの町で鬼と踊れ : 閑人書房

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【中長編】終わりの町で鬼と踊れ

2020年9月9日 
※この作品はネット掲載終了しています。

終末後の世界を生きる子どもたちの青春群像劇


作品名終わりの町で鬼と踊れ
作者作楽シン(御桜真)
文字数約10万9000字
所要時間約3時間35分
ジャンルダークファンタジー(現代FT)
作品リンクカクヨム

レビュー

「弱肉強食じゃねーよ、適者生存だろ。――どちらかが滅びるのなら、奴らを消すしかない」


ウイルス感染によって「吸血鬼」と化したモノたちがはびこるようになり、混乱と暴動のなか世界が滅びてから二十年。吸血鬼と敵対し、人間同士で物資を争い、掠奪者の溢れる荒廃した世界で生まれ育った少年は、あるとき、吸血鬼に襲われていたところを外から流れてきたよそ者の少女に助けられる――。

滅亡後の福岡、という現実と地続きの終末世界に一瞬で引きずり込まれる。
奪われる前に奪い、憎み憎まれながら、荒廃した世界を生きる子どもたち。だけどそんな中でも、互いの心に触れて、不器用に優しさを分け合えるような出会いがあり、あたたかな繋がりが生まれる。
その出会いは、少年にとって希望か絶望か――?

先の見えない閉塞感ただよう世界で、それぞれに守りたいものを守りながら懸命に日々を生きるひたむきさが鋭く胸を抉る終末ジュブナイル。

キャラクターpickup
榛真はるま
「お前が勝手にびびったんだろうが、ほんといい加減な奴だな!」
「……母さんには言わないでくれよ」
「別にいいんだよ、どうだって。俺は別にお前のことだって信頼なんかしちゃいなかった」
…人間たちの隠れ住む島の生まれだが、島での仕事はせず、物資の調達と偵察を兼ねてひとりで街をフラフラしていることが多い。ぶっきらぼうだけど何だかんだお人よしなツンデレ男子。
紗奈さな
「なんだ。お前、人間か。奴らかと思った。危うく殺すところだった」
「お前を助けようと思ったわけじゃない。たまたまだ。放っておけ」
「うるさいから黙らせたけど。腹が減ったし疲れたし眠い」
…吸血鬼に襲われていた榛真を助けた、よそ者らしき少女。いつも仏頂面で無愛想。パドルで敵をぶちのめす撲殺系ヒロイン。
亨悟きょうご
「たった今この目で見ましたー。榛真くんがー女の子にー」
「お前みたいな無謀な奴、心配してもしょーがねーや」
「こえーよ、吸血鬼なんて嫌いだよ。身体能力おかしいし、いつ殺されるか分からないし。でも吸血鬼は違うだろ、ヤクザ達とは。生きるために生き物を食らうなんて、今更だろ」
…もともと炭鉱ヤクザの一人で、吸血鬼に襲われていたところを榛真に助けられた少年。のんきだけど神経質で、あまり本心を見せない。

・世界が滅んだ後の福岡、という現実と地続きの終末世界に一瞬で引きずり込まれる。土地鑑あったらもっとゾクゾクしそう、地元民うらやましい。

・「吸血鬼」に襲われたと思ったら、今度は人間のヤクザ集団に追い回される世界…。しょっぱなから派手にぶちかましてくれる。

・殺られる前に殺れ! な世界観。修羅の国福岡、まじ修羅の国。

・パドル振り回して敵をぶちのめしていく撲殺系ヒロイン。

・文房具は妹のためだろうなと思ってたけど、わざわざペットフード確保してたのはこれかぁー。ぶっきらぼうな男の子がわんこ構い倒したり妹に優しかったりするの、きゅんとする。そういえばこの子、怪我人にも弱かったな。

・ああちゃんと比較的安全なホームがあって、家族がいて、主人公を庇護対象として見ている大人たちもいるんだなって、ちょっとだけほっとする。

・心配されて煩わしがったり、お説教を聞き流したり、普通に反抗期の男子っぽい。

・嘘つくの下手くそか。七歳も年下の妹相手にぜんぜん誤魔化せてない感…(笑) てゆーか妹かわいすぎん?

・得体の知れないよそ者に対して、それでも警戒より心配が勝っちゃうところ。信用しないとか嫌いだとか言いながら、なんだかんだで弱ってる相手を捨て置けないところ。不器用で律儀で健全な子だなって。そしてそのことを絶対に認めない面倒くさい子でもある(笑)

・スワンボートデート。なんだか間が抜けていて、世界のほうがひどく間違っているような違和感が、非日常感を際立たせる。

・友達に笑われてからサングラスかけるのはやめたとか、いつも仏頂面の女の子の表情変えさせてちょっと気分よくなってるとことか。普通の男の子だなぁって感じ。

・おにぎりとコーヒー。泣いてまうやろー!

・とっとと地面に飛び移って戦う紗奈ちゃんと、あわててスワンボートで追っかける榛真君。絵面が間抜けで笑える。

・傷ついた自分を否定したくて、まず怒りがくる。自分のことでいっぱいいっぱいで、他人の気持ちを慮るのは難しい。

・史仁×杏樹たぎる。二人の歴史が切なくて、杏樹の悲鳴が苦しくて、涙腺にくる。

・…からの、榛真君の空気読まない「バカじゃねーのか、お前ら!」…君のそういうとこ嫌いじゃないです。

・紗奈ちゃんパート、榛真君のこと「面倒くさいやつ」って言いすぎじゃないですかね。面倒くさいけども(笑)

・榛真君が隠しているつもりのことは大体ぜんぶバレバレ。…って気はしてたけど、さすがにあんな慎重に隠してた故郷の場所が敵にまでバレバレとは思わなかったよ!?

・お母さんが「放蕩息子の指図は受けないよ!」ってキレるシーン、好き。普段は自由にさせてるけど、心配とか心配とか心配とかが溜まりに溜まってたんだろうなって。

・もう憎しみが積み重なりすぎて、みんなで共存する道を選べた時期はきっと、とっくの昔に過ぎてしまっているんだけど。でも人間だろうと吸血鬼だろうと、どうしたって奪い合うことしか出来ない相手と、優しいもの温かいものを分け合える相手がいて。みんながみんな苦しんでいるんだと知ってしまったことが、重たくてしょうがない。

・美しい生まれ故郷。ものすごく大事で、守らなきゃって思ってるのも本当で、だけどずっとここにいたくない、逃げ出したいって思いがどこかにある。いつも島を出てひとりでフラフラしてんのは、そういう閉塞感から逃れるためでもあったんだな。

・生きたいと言った少女は、お前を助けられて良かった、なんて勝手なことを言うだけ言っていなくなってしまって、未来が見えない現実を生きていかなければならないことの息苦しさが胸に迫る。かたわらに守るべき存在がいることにどうしようもなく救われる、美しいラストシーン。

・(能古島検索してみたら、海を臨むコスモス畑うつくしすぎて泣いた)



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