ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

ゴナドトロピン製剤

2020年07月04日 | 生殖内分泌

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とよばれる黄体化ホルモン(LH)卵胞刺激ホルモン(FSH)の2つのホルモンは、下垂体前葉のゴナドトロピン産生細胞より分泌されます。ゴナドトロピンの生合成や放出は、視床下部において産生・分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)によって調節されています。性発育に伴ってゴナドトロピンの分泌は増加し、加齢に伴って低下します。また、ゴナドトロピンの分泌は性周期に伴って変化します。
月経周期とホルモンの変化
排卵日推定法

ゴナドトロピン製剤には、(1)FSHとLHの両方を含有するhMG製剤、(2)hMG製剤からLH成分を除去してFSHのみにした精製FSH製剤、(3)遺伝子組換型FSH製剤があります。

もともとのhMG製剤は閉経期女性の尿から精製され、LHもFSHと同等に含まれています。 開発当初はロット間の反応性にもばらつきがありました。 精製方法が進みLH含有量の少ない精製FSH製剤(uFSH)が発売され、近年では遺伝子組み換えFSH(rFSH)も使用できます。

ゴナドトロピン療法では、hMG製剤やFSH製剤を連日投与して卵胞の発育を促し、卵胞が一定 の大きさに達したら、LH作用のあるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与して排卵を誘起させます。

ゴナドトロピン製剤の種類


これらのhMG製剤のLH含有量の違いをむしろ逆に利用して症例に応じた卵巣刺激が行われます。LHは卵胞発育の初期にはあまり要求されず、卵胞発育の後半にLHの働きにより主席卵胞以外の卵胞を閉鎖へと誘導する選別が行われます。従って、低ゴナドトロピン性性腺機能不全症の場合、排卵誘発の後半でLH含有のhMG製剤を使用します。

ゴナドトロピン療法


ゴナドトロピン療法は多胎と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いが、そのリスクを最小限に抑えた方法がFSH低用量漸増法です。FSH製剤を低用量で開始し、主席卵胞の発育がみられるまで投与量を少しずつ増量する方法です。FSH 低用量漸増療法ではFSH の投与日数が長期化する傾向があるので、通院の負担を軽 減するために在宅自己注射の導入が求められていました。2008年に FSH 製剤の在宅自己注射が認可され、ペン型の注入器も発売されました。




ゴナールエフ皮下注ペン(rFSH)

参考文献:
1) データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2) インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016
3) 生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014

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