今回のテーマは科学と宗教です。現在、私が言及しようとしているディープ・ステートに関する議論を行う上で、必ず避けては通れない問題があると思っています。

 

 

それは私たちが科学をどのようにとらえるのか、そして宗教をどのようにとらえるのかという問題です。

 

政治的な議論を行うとき、私たちが正しいか、間違っているかを判断するとき、必ず私たち自身は、科学的な信念、そして宗教的な信念を前提とせざるをえないのです。

 

オーストリア生まれのイギリスの哲学者、ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインは次のように言っています。

 

「基礎づけられた信念の基礎になっているのは、何ものによっても基礎づけられない信念である。」

――『確実性の問題

 

ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン

 

PERSON
ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン(1889 - 1951)…『論理哲学論考』、『哲学探究』などの著作を残しました。『論理哲学論考』では、哲学が扱うべき領域を定義し、「語りえないことについては、沈黙するほかない。」とし、哲学が自らの領域を超えて、本来語りえない領域に足を踏み入れていることに警笛を鳴らしました。

 

 

私たちがあるトピックについて議論しているとき、その時に用いる理屈は、学校で習ったことであったり、または、会社で教えてもらったことだったり、テレビで言っていたことだったり、あるいは、とある宗教の世界観であったりします。

 

そしてそのトピックから離れた、私たちがそのトピックにおける議論に使用する理屈の方は一体、正しいのか間違っているのか、または確からしいのか、不確かなのか、考える必要があると思います。

 

とかく社会についての議論が行われているときには、このような議論の前提となっている理屈についての議論が全く行われずに議論が進む場合があります。こういった物事について考えていきたいと思います。

 

それでは見ていきましょう。

 

 

 

アブラハムの宗教

私はあえてこのことに言及しなければならないと思っていますが、欧米、特にアメリカにおける様々な政治的な議論はアブラハムの宗教から脱却できないということです。

 

アブラハムの宗教とは、簡単に言いますと、ユダヤ教キリスト教イスラム教の総称であり、ユダヤ教を起源とした宗教全般を言います。

 

従って、トランプ政権であれ、いわゆるディープ・ステートであれ、神に対する信仰がどの程度のものであるのか、または悪魔崇拝の程度がどの程度のものであるかの、いかんを問わず、絶えずアブラハムの宗教に見られる世界観が前提となります。

 

これまでに私が見てきた欧米のユダヤ教に対する批判、フリーメイソンリーイルミナティと呼ばれる秘密結社についての批判の多くが、その程度の差こそあってもアブラハムの宗教に見られる色彩を帯びています。

 

歴史的にみても、ユダヤ教、フリーメイソンリーやイルミナティへの批判の先頭の一角に立っていたのはカトリックやプロテスタント、あるいは正教会などの神父や牧師でした。それ以外の学者やジャーナリストなどの面々を見ても、その程度の差こそあれ、必ずアブラハムの宗教の世界観を大きく超えません。

 

確証バイアス

最近では私たちが信じている科学が間違っているという議論も見られますが、科学哲学という分野が哲学において形成された頃から、科学は反証しえる限りにおいて科学であるという考えが生まれています。反証を許さないものは科学ではなく、権威主義ではないかということになります。

 

カール・ポパー

 

PERSON
カール・ポパー(1902 - 1994)…科学的言説の必要条件として反証可能性を提唱しました。ポパーは、精神分析(フロイトやアドラー)とマルクス主義、またウィーン学団の論理実証主義を批判しました。一方で、ジョージ・ソロスの師という側面もあります。

 

現在では、認知科学の分野でも、これを発展させた考えがあり、自分が信じている理論について、それが確かであるという理由ばかり集めてくることを確証バイアスといいます。

 

代表的な例は様々ありますが、以前に挙げたリチャード・ドーキンスの例を用いるのであれば、インテリジェント・デザイン理論などが現代科学へ挑戦する理論として提示されています。

 

リチャード・ドーキンス

 

PERSON
リチャード・ドーキンス…アメリカで一定の支持を集め、教科書などにも登場するインテリジェント・デザイン理論を徹底的に批判しています。

 

インテリジェント・デザイン理論は進化論を批判するために提示された理論で、基本的にはアブラハムの宗教を前提としています。進化論という権威を批判する理論のように見えますが、実際、インテリジェント・デザイン理論は、数々の物証を無視した旧約聖書という権威を重視した確証バイアスに陥っていると考えるべきです。

 

繰り返しになりますが、科学は反証のための様々な物証実験結果を常に求めているものです。科学は絶対的に正しいものではなく、理論の知識体系として存在し、その理論の知識体系は常に反証され続けることによって形を変えていっているものです。

 

繰り返しになりますが、現在主流の科学的事実が批判されているとき、そこにどのような確証バイアスが働いているのかを見出すことが重要です。

 

私は一般論として「現代科学」が正しいかどうかを議論することは、科学の歴史を前提とした場合、意味が通らないと思っています。言い換えるならば、科学が人間にもたらすことや、人間が科学にもたらすことなどについての考察はできるとは考えています。

 

宗教と科学のはざまで

 

私は現在、欧米におけるサタニズムなどについて議論していますが、私はいわゆるクリスチャンの立場からこれについて議論をすることはありません。そこには必ず、「神」以外の信仰の対象はすべて「悪魔」であるという形式があるからです。

 

神の概念についての議論は様々なものがありますが、いずれにせよ、私にとってアブラハムの宗教における「神」はあまり意味をなさず、したがってそれゆえに私は彼らにとって悪魔崇拝者にされる可能性があります。

 

欧米のサタニズム批判にはこのような側面があります。そして現在日本のクリスチャンの中にも様々な考え方がありますが、日本の宗教のすべてを悪魔崇拝だと考える人たちがいます。

 

2016年のアメリカの大統領選挙以来、ディープ・ステートに対する批判を多く目にしてきましたが、その中には日本を完全に自分たちの宗教に染め上げようとする人たちがいます。神道仏教も彼らにとっては邪教なのです。

 

繰り返しになりますが、私は科学を正しいものだとは思っていませんが、科学的知識を利用して物事を考察し、推論することを重視しています。一方で、私は様々な宗教的な物語が展開している世界で生きています。

 

その世界観からインスピレーションを感じることはあっても、何らかの宗教的信念に従って、それ以外のあらゆる世界観をすべて否定することを容認できません。

 

私は神を権威にして自分のその理解を他人に押し付けるようなことなどしたくないし、そういった人間を肯定するつもりもありません。

 

私は宗教的世界観を尊重しないという立場ではないにせよ、基本的には科学的方法にこそ可能性を見出さずにはおれません。

 

アメリカの哲学者チャールズ・パース

 

PERSON
チャールズ・パース(1839 - 1914)…『信念の確定の仕方』(1877)の中で、信念の確定の方法を固執の方法権威の方法ア・プリオリな方法科学的方法という4つの方法に分類し、その中で科学的方法が最も好ましい理由について論じました。

 

そしてあえて書き加えますが、科学が権威主義と結びつくとき、それはもはや、本来的な意味で科学ではないと思っています。

 

インテリジェンスの構築

宗教と科学については今後も議論を展開していきたいと思います。それは、現在の世界の問題を考える上で必要不可欠だと思えるからです。

 

私は太陽中心説(地動説)を信じていますし、現代科学が提示する科学的知識を前提に様々な推測をするようにしています。

 

当然、それはいつ覆るかもわからない、間違っている可能性があるものです。それは必ずしも古い習わしを全否定することを意味しませんし、ときに伝統的な価値観から科学的知識の側を疑うことさえあります。

 

今後は創世記地球宇宙を科学から見た歴史についての議論を展開したいとも思っています。地球の誕生と生命の誕生の科学から見た物語とともに、創世記や様々な神話の意味を問いたいと思います。

 

顕生代のプレートテクトニクス(5億4000万年前から)

 

また、これと関連して科学哲学論理学心理学などについても論じたいと思います。

 

例え、もし、アメリカのディープ・ステートが一網打尽にされる未来が今後訪れるとしても、私たちは次に訪れる新しい権威主義者・全体主義者に備えなければなりません。

 

 

地球の歴史

 

世界は常に、私たちを肉体的にも精神的にも搾取しようとする人間で溢れています。私たちが新しい未来を手に入れたとしても、その未来が、残酷ではないという保証はどこにもないのであり、私たちは私たち自身のインテリジェンスをしっかりと構築することによって、常に戦い続けなければならないと思われます。

 

 

太陽系の歴史

 

最後に

最後までお付き合いいただきありがとうございました。ご感想などありましたら、気軽にコメントください。

 

 

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