桐箱に木綿紐をとおしています
朝から雲が低い日で
雨が降ったり止んだりです
ここ数日は、桐箱に紐を通す日々です
聴こえるのは、ただ
木綿紐がこすれる音…
ただそれだけです
誰とも話すこともなく、
ただ一日を紐通しに費やしています
父の下働きに入ったとき、はじめてさせてもらったのが
紐通しでした
蓋置きの桐箱で
お弟子さんと一緒に1500個の桐箱に紐をとおしました
なかなか桐箱に紐が通らず、
人差し指の先から血が滲んできたことを覚えています
一年にいくつの桐箱に紐を通すか、わかりませんが
この紐通しは省くことのできない工程です
土にさわりたいなあ、と思いながら
紐通しを一日朝から夕方まで独りでこなして、
あの頃のことを思い出しています
父も母も他界した今…
独りで紐通しをしているわたしを
どんな風に思っているのか
両親の声はなかなか聞こえてきません