共同正犯についてわかりやすく解説してみた【刑法総論その13】

共同正犯刑法

(PR)法律資格を目指す方必見!!

効率よく資格の勉強をするには、低価格でかつ効率よく学習できるオンライン講座がおすすめです。
特に、アガルートアカデミー資格スクエアはかなり人気が高く利用者も多い予備校となっており、当サイトと併用することで法律の理解が深まります!
現在、無料相談・無料相談実施中なので、この機会にぜひお試しください。

共犯がわかりません。助けてください!

法上向
法上向

共犯は刑法総論の最後にして最大の山場だね。特に共同正犯がよく出題されるから,共同正犯についての考え方を見ていこうか。

共同正犯は難しいです。しかし,コツをつかめば楽です!今回はそのコツ(着眼点)をつかんでもらうことを目標にして,毎度のごとく「わかりやすさ」第一で頑張っていきたいと思います!

共同正犯のポイント

共同正犯の考え方についてまず押さえる必要があります。学説ではいろいろなものがありますがここでは通説判例を中心に取り上げます。さらに要件を押さえることで共同正犯の必要最低限の知識はそろいます。あとは論点として,共謀共同正犯承継的共同正犯……を押さえていけば大丈夫でしょう。

①共同正犯とは何かを押さえる。
②共同正犯の要件を押さえる。
③共同正犯の論点を理解する。
それでは行きましょう。

共同正犯の考え方

刑法60条を確認

六法の刑法を開くといろいろな条文があり,それぞれ罪が書かれていることがわかります。その罪に該当する犯人のことを単独正犯と言います

たとえば,人を殺した場合は刑法199条により殺人罪にあたるというわけです。

では複数人で罪を犯した場合はどうなるのでしょうか。この場合は刑法60条より共同正犯となるのです。刑法60条をみてみましょう。

(共同正犯)
第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

普通は2人でやろうが1人でやろうが犯罪は条文上の単独正犯なのです。しかし,刑法60条があるがために共同して犯罪を行った場合は共同正犯として犯罪が成立するわけですね。

つまり,共同正犯は,単独正犯とは別の犯罪形態となります。

たとえば,AさんとBさんが人を共同して殺した場合は殺人罪の共同正犯殺人罪ではない!)に該当し,適用条文は刑法60条及び刑法199条を書くことになります(刑法199条ではない!

条文に記載された犯罪とはまた別の共同正犯としての類型になるというわけです。

「共同して」とは

となると,「共同して」とはどのような場合をいうのかが問題になります。いろいろ学説上は言われていますが,以下のような考えが通説でしょう。

共同して=共謀=(故意)+正犯意思+相互の意思連絡

「共同して」とは共謀を表します。文字面は難しそうですが意味的には合意と思っていただければ大丈夫でしょう。

そしてその合意というのは,正犯意思(犯罪を実現する意思「〇〇罪やってやるぞー」)と相互の意思連絡(「一緒にやりましょう!」)が合わさったものです。もちろん,通常の単独正犯と同じく故意(犯罪事実の認識・認容)も必要となります。すべて主観面にかかわるものです。

結局は「一緒に(相互の意思連絡),〇〇罪やるぞー(正犯意思)」が共謀=「共同して」の意味であるというわけです。

共同正犯だとどうなるのか?

共同正犯にするメリットはずばりそれぞれの因果関係はあまり重要でなくなる点です。共同者全体で因果関係が形成されればよくなります。

このように共謀があれば,一部しか実行行為を行っていない場合であっても共同での行為に因果関係が認められれば,全責任を負うことになります。

これを一部行為全部責任の法理と言ったりします。簡単にいえば共同正犯では因果関係が認めやすくなるのです。

なぜ一部行為全部責任か?

すると,なぜ共謀があれば一部行為全部責任なのか,疑問に思うと思います。これについては様々な学説がありますが,判例通説とされる因果的共犯理論を用いると,結果に対して(心理的)因果を発生させるからです。

共同であれば,共犯者は心理的に犯罪を行いやすくなります。また心理的に共同の関係性から逃れにくく=犯罪からの離脱がしにくくなります。そのような共同関係を形成したすべての者は実行行為を一部しかしてなかろうか全部責任を負うべき,という背景があるのです。

ポイントは心理的な因果でよいという点です。通常の単独正犯のように厳格な因果関係は必要ないので,共謀=心理的因果=一部行為で全部責任を認めてよい,という流れをとるのですね。

まとめ

それでは共同正犯とは何か?その考え方についてまとめてみます。

①共同して=共謀=(故意)+正犯意思+相互の意思連絡である。
②共同正犯で罰するメリットは一部行為全部責任が認められることである。
③なぜ一部行為全部責任が認められるか,というと,共謀により結果に対して心理的因果性が生じるからである。

共同正犯の要件

共同正犯の要件も学説の対立が激しい部分ですが,わかりやすくまとめてみます。

〈共同正犯の要件〉
①共謀
②実行行為

①共謀

まず上記の考え方からもわかるように共謀は必要不可欠です。もう一度共謀とは何だったのか確認してみましょう。

正犯意思相互の意思連絡でしたね。もしろん故意も必要となることをわすれないでください。故意がなければそもそも犯罪は成立しません(過失犯があれば過失犯の検討になる)。

正犯意思とは,犯罪を実現する意思のことでした。ここでは共同正犯なので正犯意思は犯罪を共同して実現させる意思となります。

相互の意思連絡はどこかに集まって話し合いをすることをイメージしてしまいがちです。しかし,実際に連絡行為がなくとも,黙示でオッケーであり,一斉に形成されなくても順に伝わっていくパターンでもよいとされています(伝言ゲーム的なパターンです)。簡単に認められるイメージでいましょう!お互いに何するかわかってればいいのです。

②実行行為

これは大事です。実行行為がなければそもそも犯罪は成立しません。しかし先ほども言った通り共同正犯には一部行為全部責任の法理が成り立つので,全員が実行行為をすべて行う必要はなく,役割が分担されていても問題ありません

ようは誰かが実行行為を行っていればいいのです。

さらに応用で,実行行為は重要なものでなければならないとされています。そうでなければ犯罪実現の因果を作ったとはいえないためです。もし重要なことをしていない共犯者であれば共同正犯は成立せず幇助犯の検討に移ることになります。これを学説では第3の要件「重要な役割」としているものもあります。

しかし今回はわかりやすさのために①共謀②実行行為としておきました。

共同正犯の論点

共謀共同正犯

共謀しているがまったく実行行為を行っていない者に共同正犯を認めていいのか?という論点があります。これを共謀共同正犯といいます(共謀しか加担していない共同正犯)。ズバリ!結論は認めていいです(もちろん,反対説もあります)。

ただし実行行為の要件は満たさないので,②の要件は実行行為に匹敵するほどの重要な役割と理解しておきましょう。計画を立てて指示したり,道具を提供したり,その人がいなかったら犯罪が行われていないのであれば,実行行為を一切していなくても犯罪結果の因果を形成しているので全責任を負うことになるからですね。

承継的共同正犯

途中から共謀して犯罪を行った者について全部責任を認めるかどうかという論点もあります。これを承継的共同正犯(前の状況を承継して共謀して加わった共同正犯)といいます。

途中参加者に全部責任を認めるかについては肯定説,否定説激しいところですが,一応肯定説としておくのがよいでしょう。ただし,すべての場合に肯定されるのではなく,判例・通説は因果性を非常に厳格化して扱う傾向にあります

たとえば判例では傷害罪の承継的共同正犯は認めていません(暴行に途中参加した者が参加前の傷害の責任を負うかどうかで認めていない)。これは因果性がないからですね。前の暴行に途中参加者の行為の因果性が認められるわけがありませんもんね。

一方で恐喝や詐欺の場合は承継的共同正犯は認められやすくなります。そもそも恐喝や詐欺の恐喝行為や欺罔行為は交付行為と関連性が高いので,途中参加で交付行為だけ行った者も恐喝や詐欺の結果について全責任を負うといえるからです。

承継的共同正犯の考え方が全然わからないんですけど(汗)…

法上向
法上向

なかなか演習や刑法各論の理解を積まないとここは難しいかもしれない。

わかりにくいと感じたら「承継的共犯は認めるが,傷害罪の承継的共同正犯は認められない。」という結論だけでもまずは押さえておこう!

身分と共犯

身分犯(一定の身分があることで犯罪が成立するもの)の場合の共犯関係はどうなるのでしょうか?つまり身分のある者と身分のない者とで身分に基づく犯罪をした場合どうなるのか?という論点です。

これは刑法65条に規定があります。

(身分犯の共犯)
第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

上記条文は初心者にはかなり分かりにくい条文です。1項2項で矛盾しているように思えるかもしれません。

1項構成要件的身分犯について2項加減的身分犯について規定したものだといわれています。

構成要件的身分犯は、その身分があることによって犯罪が「成立する」ものです。身分がなければ犯罪は成立しません。賄賂罪(公務員)のようなものですね。

加減的身分犯は、その身分があることによって犯罪が「加重される」ものです。身分がなくても基本的な犯罪は成立します。いつぞやにやった保護責任者遺棄罪は加減的身分犯です。保護責任者が身分ですね。保護責任者でなくても一般的な遺棄罪は成立します。身分は加減性を決める要素というわけです。

刑法65条を踏まえると

行った犯罪が構成要件的身分犯の場合は、身分のある人×身分のない人では、両者ともに構成要件的身分犯の共同正犯が成立することになります(刑法65条1項

行った犯罪が加減的身分犯の場合は、身分のある人×身分のない人では、身分のある人には加減的身分犯が成立しますが、身分のない人には通常の刑なので加減されていない犯罪が成立するにとどまります(刑法65条2項

このように身分犯が構成要件的か加減的かによって共犯関係がどの程度成立するかが変わってくるというわけです。

法上向
法上向

法律を知らない友だちとかに刑法65条を見せると混乱するだろうな。法学部ってどういうことを勉強してるの?条文読めば法律ってわかるじゃん!って聞かれたときには刑法65条を見せてあげよう(笑)。

まとめ

以上,共同正犯についてみてきました。結局問題を解く際には要件に事実をあてはめていけば一応様になります。

そこで最後にもう一度要件だけ復習しておきましょう。

〈共同正犯の要件〉
①共謀(特に正犯意思,相互の意思連絡)
②実行行為(重要な役割も考慮する)
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

(PR)予備試験・司法試験をお考えの方必見!

予備試験・司法試験をはじめ、法律を効率よく、勉強するならアガルートアカデミー資格スクエアをおすすめします!
低価格でかつ自分の時間に沿った学習が可能で、予備試験・司法試験を受験する多くの方が利用しています。
オンラインにもかかわらず、サポートが充実しているのも人気の理由ですね!

当サイトと併用することで効果倍増です!!

刑法
はじめての法
タイトルとURLをコピーしました