低炭水化物ダイエット勉強会
前回、食事制限への対処法として低炭水化物ダイエットを紹介しました。
僕は、これを虐待への対処法として活用する以前から、知識と経験がありました。
もう15年ほど前ですが、この勉強会があったからです。
日本で低炭水化物ダイエットの先駆者、釜池豊秋先生と江部康二先生のお二人を招いての勉強会でした。おそらく2005年か2004年の冬だったと思います。
うろ覚えですが、この頃、日本では、まだ低炭水化物ダイエットの存在自体あまり知られていなかったように思います。
このとき学んだことを、10年以上後で、食事制限への対策方法として異国の地で使うことになるとは思っていませんでした。
僕は低炭水化物ダイエットを食事制限への対策に使っていますが、肥満、糖尿病対策としても有効です。
また、人類の進化の歴史にも迫る身近で壮大な話題でもあります。
今回は少し趣の違う話題ですが、低炭水化物ダイエットをより良く理解することで、虐待対策にも、ダイエットにも、糖尿病策にも、ちょとした会話の小ネタにも使えて便利です。
低炭水化物ダイエットができないマウス
この勉強会が開かれるきっかけを少し紹介します。
当時僕はある遺伝子の遺伝子欠損マウスを作成してその機能解析をしていました。
いろいろと実験をしている内にそのマウスはエサから糖(グルコース)を除くと死んでしまうことが分かりました。
その遺伝子がないと低炭水化物ダイエットができないということです。
この結果を受けて、教授が「僕の大学時代の同級生に低炭水化物ダイエットを糖尿病治療に使っている面白いのがいるから電話してみよう」と即電話。電話の相手が釜池先生でした。
話している中で、「今度こっちに来いよ。飯でも食いながら話そう。」の展開になり、後日、実際にお会いすることができました。
研究発表
お会いしたのは京都市の河原町丸太町にあるレストランだったように記憶しています。
この研究発表兼お食事会に釜池先生と同様に低炭水化物ダイエットを京都で行っている江部先生も参加されました。
江部先生は、そのとき、この本を参加者みんなにプレゼントして下さいました。
僕の発表は、この先生方には面白くないものだったと思います。
自分たちが推奨する低炭水化物ダイエットが、たった一つの遺伝子が無くなるだけで、出来なくなるという発表ですから。
それでもちゃんと最後まで聞いて頂き、貴重なご意見、質問を頂きました。
釜池先生は、糖尿病患者への低炭水化物ダイエットを行ったときに実際に血糖値が下がるというデータを出されていました。
血糖値よりも、凄い変化が出るのが体重の減少で、実際の数字に驚きました。
糖尿病患者は、同時に肥満であることが多いのですが、低炭水化物ダイエットをストイックに続けると短期間にどんどんと体重が減少するのです。
患者さんの中には、その急激な体重の減少に恐怖してわざわざ糖質を摂ってしまう方もいるそうです。
釜池先生が言われていたのは、体重減少はあるところで必ずパタッと止まり、多くの場合それはその人が18歳のころの体重だそうです。
この勉強会の後、僕も低炭水化物ダイエットを実践し、体重減少は、自分が18歳のころの体重で本当にピタッと止まりました。
これ以後、体重が増えても気にならなくなりました。
必要なら、また、低炭水化物ダイエットをすれば良いだけですから。
前回の記事にも書きましたが、低炭水化物ダイエットの特徴は、猛烈な空腹感に襲われないことです。
だから、それほどの苦痛はありません。
その後アメリカに来て太った時期もありましたが、週一回のフットサルとそれほどストイックではない低炭水化物ダイエットで18歳のころの体重をアラフィフの今も維持しています。
実験・実演
釜池先生の提案で食事の前後で参加者全員血糖値を測定しました。
釜池先生は糖分が含まれる食材とそうでない食材を熟知しており、そのレストランで出される食事から低炭水化物を選んで食べて血糖値が上がらないことを示すとのことでした。
そのコントロール実験として、僕のような普通の人が出される食事を普通に食べるということをしました。
僕は血糖値80から100mg/dlへ上がりましたが、釜池先生はなんと食事の後の方が血糖値が食前よりも下がるという結果でした。糖分を含まない食事を摂ることで血糖値が一時的に希釈されるという理解で良いのかと思います。
なかなか面白い実演でした。
シェアしたい話
このとき江部先生、釜池先生が話していた興味深い話、面白いなと思った話を覚えているだけ紹介します。
穀物(糖質)はそもそも人間の食事ではない
農耕(穀物)の前に人類は狩猟採集の生活をしていた。
本来の人類は肉食動物。それが数千年程前から、狩猟採集では増えた人口を維持できなくなり仕方なく始まったのが農耕。
この時期、食生活が変わったことにより人類の体格は小さくなり、健康状態も悪化して寿命も短くなった。
人類の数百万年の歴史で考えると穀物(糖質)を摂るようになったのは、この数千年のことであり、ごく最近のこと。
糖質を摂り続けることで糖尿病になるのは、人類が糖質を食すことに未だに適応できていない証拠。
糖尿病という病気は存在しない
糖尿病というのは、本来の食事ではないもの(糖質)を食べ続けて調子が悪くなると言っているのだからこんなものは病気とは言えない。
ガソリンを飲んで調子が悪くなると言っているようなもの。
手の親指が太いのは人間の特徴
人間の手の親指は他の指よりも太くこれはサルにはない特徴。
人間が石など手にとり、動物の死肉の骨を叩き割って食べていたからではないかと言われていました。他の捕食動物が食べ残した動物の肉や骨に群がるハゲタカのような生活をしていたらしいです。
低炭水化物ダイエットをすると歯磨きをしなくて良い
糖質を摂らなければ歯がねちゃつくことがなくつるつる。歯磨きをしなくても気持ち悪くない。糖質を摂っていないので虫歯にもならない。
僕もこれは実感しました。
この経験からも糖質は人間本来の食事ではないと実感することができます。
ただ、このレベルになるにはかなりストイックにやる必要があります。
醤油を使ってもダメです。
スタミナをつける方法
釜池先生に食事と運動のタイミングについて質問しました。
食事との兼ね合いで考えると運動というのはいつするのが良いのでしょう?
何が目的かによる。筋力をつけたいとかスタミナをつけたいとか。
スタミナです。実験は体力勝負なところがありますから。
今は夕食の後に鴨川の河川敷を走っています。
逆だよ。朝から何も食べずに夕食の前、一番空腹になったときに走りなさい。走って帰ってきたら、糖質を抑えた夕食を食べて、すぐに寝なさい。これが一番スタミナが付く。
これも言われるままに実践しましたが本当です。
その後もスタミナに問題を感じたときはこれを実践しています。
釜池先生ってトライアスロンの世界レベルのアスリートというもう一つ顔があるユニークなお医者さんです。スタミナの付け方の指導は的確でした。
書籍紹介
どちらの先生も沢山の本を出されているのですね。全く知りませんでした。
ここに紹介して感謝の意を表したいと思います。
血糖値の気になる方やダイエットに興味のある方は読んでみても良いと思います。
また、薬を使わずに糖尿病を直したいという方にもお勧めです。
江部先生はブログも書かれているようです。
お別れ際に
レストランを出て別れ際、釜池先生が僕の所へわざわざ来られました。
「シンイチ君、本当にありがとう。クリニックで患者さんを診てる毎日で、こんなサイエンスの話もしないし、そんな頭も使わんのや。だから、今日は本当に楽しかった。どうもありがとう。」
釜池先生から出る対等感のオーラにびっくりしてしまいました。経歴を調べて貰えれば分かりますが、すごーい方なのですが、全く偉ぶることなく僕に接してくれました。
あれ、これって新しい友達が出来たってこと?と親子くらい年下の僕が錯覚してしまうほどの対等感のオーラと言ったら分かって貰えるでしょうか。
ということで、15年程前のことですが、なぜか、これほどに覚えています。
そして、このときの得た知識を今、食事制限への対策法として使っています。