道教とは?日本文化にも見られる影響

道教は、老荘思想、陰陽五行思想、神仙思想など様々な思想が融合した台湾・中国の宗教の一つである。

  • 老荘思想:無為自然を説く老子や荘子の道家の思想。
  • 陰陽思想:宇宙のあらゆるものを陰(いん)と陽(よう)の二つに分類する思想。
  • 五行思想:宇宙のあらゆるものは水・火・木・金・土の5種類の元素からなるとする思想。
  • 神仙思想:不老不死の神仙(仙人)が実在し、人間自身も神仙になれるとする思想。

道教と言っても、日本人にはあまり馴染みがないかもしれない。但し、実は様々な面で日本文化も大きな影響を受けている。

例えば、安倍晴明で知られる陰陽道も道教の陰陽五行説を由来としているほか、陰陽が描かれた太極図のイメージは日本でもよく見かける。

今回は、道教の影響を受けている日本文化の例をまとめてみた。

お中元

日本では、7月15日を中元として日頃お世話になった人に贈り物をする。このお中元も、元々は道教に由来している。

道教では、1月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元としている。この3つの日には、それぞれ天官、地官、水官という神様が、人々の善悪を天神に報告、それに基づいて各人の運命が決定されると言われている。そのため、上元・中元・下元の日には罪を懺悔し、これらの神様に供え物を供える風習があった。

これが、目上の人やお世話になった人に贈り物をする日本のお中元の由来となっている。

大安・友引などの六曜説

カレンダーや手帳に「大安」や「友引」など、各日の運勢が記載されていることがある。「結婚式は大安に挙げる」だとか「葬式は友引を避ける」だとか、今でも冠婚葬祭の日程は六曜説に沿って選ぶ人も多いだろう。

このように六種の曜(先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口)があるとする六曜説も道教に由来する。

仏滅という言葉に反して、六曜説は仏教との関係性はない。そもそも、仏教では占いは良くないこととされており、六曜説はれっきとした道教の風習なのだ。

鬼門

日本では古くから北東(十二支の方角では丑と寅の間)が鬼門とされており、鬼が出入りする方角として忌み嫌われてきた。この鬼門という考え方も道教に由来する。

鬼門では「井戸、便所ほか不浄物、台所、浴室、洗面所などは大凶」とされている。また、鬼門とは反対の南西の方角(裏鬼門)は、「神棚、仏壇は大凶」とされている。

なお、武士の世界では、城を建てる際に鬼門の方角に厠をつくることも多かった。鬼門の災いを恐れないことが、武士の気構えであると考えられていたようだ。

現在では、よくないことが起きる場所や苦手とする人物や事を表す言葉としても「鬼門」が使われており、道教の風習が日本語にも根付いている例と言えるだろう。

端午の節句・七夕

陰陽五行説を由来として日本に定着したのが節句である。1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕(しちせき)、9月9日の重陽(ちょうよう)と季節の節目となる五つの日が節句とされている。

端午の節句は、日本人に最も馴染み深い節句だろう。古くから日本の宮廷では節会として節句を祝っていたものの、武家政治へと移り変わっていった際に「菖蒲」と「尚武(しょうぶ)」を掛けて武士の間では特に端午の節句が盛んに祝われたようだ。

昔から、菖蒲は邪気を避け、悪魔を払うという信仰があり、季節の変わり目である端午の節句には菖蒲酒や菖蒲湯に入るという風習が今でも残っている。

七夕は、日本では「たなばた」として祝う。織り姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)の伝説も、元々は道教の神話である。織姫は中国語では「織女(しょくじょ)」で、織女は道教で一番偉い神様「天帝(てんてい:玉皇大帝の別名)」の娘とされている。

石敢當(いしがんとう)

沖縄県に旅行に行くと、石敢當と刻まれた石を見かける。石敢當も元々は道教的な風習で、福建省が発祥とされている。

石敢當は邪気除け、魔除けである。邪気・鬼は直進しかできないとされており、T字路や三叉路などの突き当りに魔除けとして置かれている。

還暦

数え年61歳(誕生年に60を加えた年)を迎えたことを祝う還暦。「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」で知られる十二支と、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の十干の組み合わせ(干支)が60種類あり、干支が一回りして誕生年の干支に還るため、還暦と呼ばれている。昔は魔除けの力があると伝えられる赤い産着を赤ちゃんに着せていたことから、日本では出生時に還ることを祝う還暦においても赤いちゃんちゃんこを贈る風習が残っている。

なお、数え年121を大還暦と表現するが、ギネス世界記録に公認された大還暦の事例はフランス人のジャンヌ・カルマン氏のみのようだ(諸説あり)。

番外編①:甲子園球場

プロ野球チーム阪神タイガースの本拠地であり、春と夏に高校野球全国大会が開催される甲子園球場。甲子園球場は、大正13年(1924年)8月1日に竣工、この年は十干、十二支のそれぞれ最初の「甲(きのえ)」と「子(ね)」が60年ぶりに出合う縁起の良い年であったため、甲子園球場と名付けられたそうだ。

十干と十二支は、道教的な暦の表示であり、甲子園球場の命名においても道教の影響を少なからず受けていると言える。

番外編②:土用の丑

土用の丑の日には、鰻を食べる風習がある。土用とは、四立(立夏・立秋・立冬・立春)直前の約18日間を示す五行思想の言葉である。夏の土用のうち、十二支が丑に当たるのが土用の丑である。

土用の丑の日に鰻を食べる風習は日本の江戸時代に始まり、平賀源内が土用の丑の日を発明したというのが通説となっているようだ。味のこってりした鰻が夏には売れず、鰻屋が平賀源内に相談したところ、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めたところ大変繁盛したとのことだ。


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