Sunday, October 18, 2020

らーは苦労が多い犬だった−3(バベシア症)

都会の場合はどうだかわからないけれど、わたしの住む近所では、夏になるとダニの発生が頻繁で、らーもダニに悩まされた時期がある。
スポットタイプのダニ予防薬を使うと、らーは皮膚がかぶれてしまう。(らーの場合、原因は、皮脂が少ないため皮脂を伝わって全身にいきわたるはずの薬が、一か所に留まることで起きるものだった)

そんならーのダニ対策は、青森ヒバのオイルをシャツにいっぱいかけて、そのシャツを着てもらうことだった。
これは効果があったのだけど、それでも一度フタトゲチマダニというゴマ粒ほどの小さなダニがついてしまったことがある。
すぐに退治できたので、病気になる心配はないと思っていたのだけど・・・。

ある日いつものように、犬仲間が集まって犬たちを遊ばせていたら、らーがゆら~っと人が貧血で倒れるのとそっくりな倒れ方で、倒れた。
起き上がってもまた、ゆら~っと倒れる。
すぐに主治医に診てもらうと、極度な貧血であることがわかった。
真っ先にバベシア症を疑うものの、顕微鏡検査では原虫の姿が認められなかった。
PCR検査を申し込んだが、当時は、沖縄県内で試験をするのではなく検体を本土へ送るところから始まるもので、結果が出るまでに10日程度かかるものだった。 

他に疑うのは免疫介在性溶血性貧血、恐怖でいっぱいになる。
バベシアと免疫介在性溶血性貧血、どちらも怖いけれど、バベシアであるようにと願うしかなかった。バベシアなら大きなオペをせずに済むと思った。

PCR検査の結果が出るのを待たずに、バベシアの治療を開始、同時に同胎の兄妹、友人の元気な若い大型犬の血液検査をお願いして輸血に備えた。いざというときに供血してくれる元気な犬がいるといのは心強い。

極度の貧血で、目も口の中も色を失い、呼吸も楽そうではない、らーが可哀想でしかたない日々を数日過ごした。

それでも、4才という若さ、抗生剤の治療が効いて、らーも食べてくれるのですぐに普段の生活ペースにまで戻ることができた。

それからPCR検査の結果がでて、バベシア症であることが確定。
正直、ほっとした。これなら勝てる、治療費もあるていど想像がつく。

仮に免疫介在性溶血性貧血であったなら、主治医と相談していたのは、治療に実績がある医師に託すこと、そのためには東京へらーを運ぶことが必要で、治療費も合わせて試算すると莫大な費用に思えて金策の心配まで加わる。

どうかバベシアであるように.....ただ願う。思えば変な話だった。バベシアだって死ぬ病気。

さて、一時的に回復はしても、再発の恐怖はなくならない。
いつまた、バベシアが勢力を強くして、らーの赤血球を破壊し始めるかわからない。

そのままではいられない、根治に向けて、たどり着いた治療は、アトバコンという抗生剤を使う治療。

当時アトバコンは国外から輸入するもので国内では、人間のエイズの患者さんの感染症の治療薬としては一部、導入されてはいたもののまだ治験の段階であったように思う。現在はどうだろう?

当時のレートで日本円で14万円支払ってアトバコン(お薬の名前は、メプロン)1本、米国から輸入、10日間の服用。
途中で、下痢や嘔吐などお薬の副作用が出ないのを祈り、服用開始。

黄色のクリーム状の液体、わたしと獣医師2名、すぐに指につけて味見をしたのを覚えている。

甘っ、これならきっと、オヤツに浸しても食べるだろう!あとは強気で臨む。
治療は期待通りの成果をあげて、その後のPCR検査ではもうバベシアは潜んでいる様子もなかった。

実際に、らーが13才と8カ月の生涯を終えるまでバベシア症は再発しなかった。
アトバコンの前に、アジスロマイシンでバベシアを叩いて体力を回復してからの治療だったのがダブルに効果的だったのだと思う。

供血のための2頭も、血液検査の適合まで調べて待機してもらったが、輸血はなくて済んだ。
医療費について、動物医療保険が1回1万円分をカバーしてくれたので手元から出たのは20万円程度で済んだと記憶。
輸血は受けなくて済んだけど、供血のための健康診断と血液検査はしてもらったので1頭当たり1万円+いくらかかかったと記憶している。


海遊びはダニもつかないし安心