美容・形成外科医 中村優のブログ

美容・形成外科・メディカルイラストレーションなどについて書いていきます。

不安なダウンタイムを乗り越えるために

こんにちは。
今回のテーマはダウンタイム(術後の腫れ)をどう乗り越えるか、です。

眼瞼下垂手術は術後1週間で抜糸、強い腫れは2週間、そこから半年~1年ほどかけて落ち着いていきます、と私は説明しています。

ダウンタイム中は成功したか・失敗したか、というのは特に患者自身にとって非常に判断に困る時期だと思います。

 

医師からしたら、半年経てばみんな落ち着くのだから、君も一緒だよ。大丈夫安心して。という考えでいても。
患者からしたら見栄えを良くする手術を受けたはずなのに見栄えが悪くなっている!!となるわけです。

実際、Twitterや質問箱を見る限り、患者さんのダウンタイム中の不安は計り知れないもので、情報交換アカウントが多数見られるのが現状です。

 

さて、ここからが本題。
まぶたの手術は多くの場合、左右の瞼を同時に手術します。
そして、それぞれが違う術野なので腫れの強さ、引くスピードなどがそれぞれのペースで進行します。つまり左右均等でないことが多いのです。

 

もちろん放置して治るものと治らないものがあるため、その判断は主治医に判断してもらうのが一番です。

主治医は当たり前ですが手術をやっています。
その手で、頭で、手術を覚えています。
また、手術記録、経過写真・動画などからその心配要素が生じる原因を作ってないかを振り返るわけです。モニターでもなんでもない方でも写真を撮ったりするのはそのためです。

なので、きちんと写真や動画で記録を撮っている先生は真面目で、しっかりしていると言えます。それら判断材料をもって、主治医はその状態は「再手術が必要です/経過観察で治りますよ」を判断するわけです。第三者に失敗ですが成功ですか?と術後の写真だけ見せても、判断は難しいのはそれが理由です。

 

ということで、ここからは実際の症例写真を見ながら解説を進めます。

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他院で埋没を5回、切開二重をされた方。
今回は眼瞼下垂の治療及び重瞼線の修正を希望して来院。

状態)
・瞳孔中心まで開瞼できていない
・重瞼線は広く眠そうな印象で目をつぶった時の食い込みが強い
治療)
通常の挙筋前転を行いつつ、
幅の広い位置にあった前回瘢痕を含みつつ余剰分の皮膚切除

 

そして1ヶ月後。

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患者さんから質問。
この線(赤矢印)が気になります。これは消えるのですか。

 

ここで術後写真や手術記録を主治医は振り返るわけです。

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直後には予定外線は入っていない。
手術記録・術中写真を見る限り、腱膜をしっかり再剥離できて縫合創縁には腱膜の断端を縫い込んでいる。眼輪筋も温存されている。

これら判断材料を以てして、主治医は考えます。

う~む。これは手術操作的には問題ないはず。
自然に治る・・はず!

 

そして更に1ヶ月。なんと予定外線はもう少し強く食い込んできた。

うむむむ、でも治るはず。

 

そして更に1ヶ月後(術後3ヶ月)

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予定外線は消えて、重瞼線はほぼ左右差なく、閉瞼時の食い込みもとても浅くなりました。ヨカッタ!

ここからまだまだ更に瘢痕が柔らかく、自然になっていくことが見込めるわけですが、ひとまず!一段落ついた一例でした。

 

患者さんから信頼頂き、治りますよ、信じますと円滑に診療が進んだ好例でした。

 

まとめ

・ダウンタイム中の腫れは必発と心得よ
・それでも心配な事は主治医に確認を

今回はご厚意により、
似た経験をするであろう今後の患者さんへ向けて写真提供いただきました。
ありがとうございました。

 

2020・9・18 中村優