yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

イプシロンは卒業! “攻め”の収束!

シャワーを浴びているときに,急にピンときました(笑)
ぜひこの感動をお伝えしたく,キーボードを叩いています.

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数列{a_n}がαに収束するとき,

 lim (1・a_1+2・a_2+‥‥+n・a_n)/(1+2+‥‥+n) =α

となるそうです.


どうやって示しましょうか?


最初はイプシロンで証明していたのですけど,実は,すごく簡単な方法があるんです!
見つけてしまいました.

***********

数列{b_n}がαに収束するとき,

 lim (b_1+‥‥‥+b_n)/n =α


***********

を利用します.


a_1を1個,a_2を2個,a_3を3個,‥‥という風に並べることで,新しい数列{b_n}を定めると,何が起こるでしょう?

 {b_n}:a_1,a_2,a_2,a_3,a_3,a_3,
     a_4,a_4,a_4,a_4,a_5,‥‥

この数列は,収束するでしょうか?

数列{a_n}がαに収束するというのが前提なので,十分番号が大きいとa_nはαに十分近いです.
並ぶ数が{a_n}の項ばかりなので{b_n}も番号が十分大きいと,b_nはαに十分近いです.
つまり,{b_n}もαに収束します!

よって,

  lim (b_1+‥‥‥+b_n)/n =α

です.つまり,

 b_1 / 1,(b_1+b_2) / 2,(b_1+b_2+b_3) / 3,‥‥

という数列はαに収束します.

だから,この数列の一部分を取り出した無限数列も,αに収束します.
(十分に番号が大きいと,値は十分αに近づくから)


例えば,

 (b_1) / 1,(b_1+b_2+b_3) / 3,
  (b_1+b_2+b_3+b_4+b_5+b_6) / 6,‥‥

は収束します.

 3=1+2,6=1+2+3

です.次は,

 1+2+3+4=10

だから,

 (b_1+b_2+b_3+b_4+b_5+b_6+b_7+b_8+b_9+b_10) / 10

です.

これは,

 {b_n}:a_1,a_2,a_2,a_3,a_3,a_3,
     a_4,a_4,a_4,a_4,a_5,‥‥

から,

 1・a_1 / 1,(1・a_1+2・a_2) / (1+2),
  (1・a_1+2・a_2+3・a_3) / (1+2+3),‥‥

となっています.
まさに,今回考えたいものですね!

だから,

 lim (1・a_1+2・a_2+‥‥+n・a_n)/(1+2+‥‥+n) =α

が成り立ちます!

 

けっこう鮮やかに証明できたと思っているのですが,いかがでしょうか?
日本語と式だけでは,ちょっと伝わりにくいですかね.
そうでしたら,もし良ければ,式の部分をご自身の手で書き出してみてください.
けっこうハッキリ分かってくるのではないかと思います.
読むだけって,なかなか理解は深まらないですからね.
良ければ,チャレンジしてみてください!!

 

極限などについて大学1年レベルで面白いネタを集めた本
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