精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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うつ病に電気ショックが有効!? 医師国家試験 113D2

昔行われていた治療法が、近年再び脚光を!

医師国家試験(2019年度)113D2 精神科

電気けいれん療法について正しいのはどれか。

a 65歳以上は適応にならない。
b 重症うつ病は適応疾患である。
c 副作用として筋強剛がみられる。
脳神経外科医の立ち会いが要件である。
e 患者やその保護者の同意なしに実施できる。

 今回は、電気けいれん療法についての問題です。

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タイトルでわかりやすいように”電気ショック”と書きましたが、「電気ショック」と言われると、ちょっと表現が刺激的な点と、救命救急の現場で用いられるAED自動体外式除細動器)などの心臓に電気ショックを加える治療法と間違われやすいためか、現在では電気けいれん療法と記載されるようです。

 

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AEDを使う人

電気けいれん療法とは!?

電気けいれん療法とは、頭のこめかみの部分に電極を当てて、脳内に電気を通電することで、精神症状を軽減させる治療法です。

 

強い自殺念慮のあるうつ病統合失調症などに用いられます。

 

電気けいれん療法のガイドラインにも「精神科によって起こる症状を迅速に改善し、病状が遷延することによるADL、QOL(生活の質)の低下など2次的な障害を予防できる。」と書いてあります。

 

さらに「薬物療法と比較して効果は同等かそれ以上であり、迅速な改善が期待できる」とも書かれており、「薬より効く可能性があるの!?」とやや驚きますよね。

 

百聞は一見に如かずということで、こちらのメーカーさんの作成したyoutube動画を見て頂けると、どんな感じで治療するのかがよくわかりますね。


MagVenture TMS療法によるうつ症状の治療。高い患者処理性能。

実は1950年頃までは盛んに行われていた治療法

この電気けいれん療法は、1930年頃にヨーロッパで開始され、その後日本に輸入されて1950年頃までは盛んに行われていたようです。

昔は精神病の薬が十分になかったことに加え、治療効果が高かったため頻用されていたようです。

しかし、治療によって記憶障害や、電気刺激による発作で暴れるため骨折などの副作用が生じたこと。(ひどい場合には、けいれん時に胃の中身が逆流して窒息死してしまうなんていう悲惨な例もあったようです。)

また、「電気ショック」という響きが残酷な印象を世間に与えた点や、実際に懲罰目的で一部の病院で用いられていたなど問題点があったため、向精神病薬の到来により廃れていったようです。

 現在行われているのは「修正型」電気けいれん療法

一度は廃れてしまった電気けいれん療法ですが、近年では修正型電気けいれん療法(mECT)」として再び注目を浴びるようになりました。

 

電気けいれん療法は元々治療効果自体は認められていたのですが、けいれんや骨折などの副作用が問題でした。

そこで現在では、手術室で麻酔科医の協力を得て全身麻酔科&筋弛緩薬使用のもとでけいれんなどの副作用が起きにくいように配慮して実施されるようになりました。

個人的には「なんで”修正”ってついてるんやろ?」と前から思っていたのですが、歴史的背景があったんですね!

一番の適応は重度のうつ病

最大の適応は重度のうつ病です。すでに記載しましたが、自殺の危険性が高かったり、薬が全く効かない人に対しても、劇的に効くすることがあるようです。

個人的には実際に見たことないのですが、昨年(2019年7月頃)にやっていたNHKクローズアップ現代でちょうどこの電気けいれん療法の特集をやっていて、かなり効果があるんだなーと感じたのを記憶しています。

www.nhk.or.jp

 

他にも、将来の就職を見据えて色んな大学病院の精神科医局のホームページを見ているのですが、とある大学の精神科医精神科医を志した理由に「電気けいれん療法が劇的に効くのを見て感動した」と書かれていたので、めっちゃ効くのかもしれないですねー(残念ながら実習で見れなかったです(´;ω;`))

 

治療回数は、1回10分~40分で、これを週5回(平日毎日)×6週間=合計30回行うのが標準なようです。放射線治療とかのスケジュールと似ていますね。

 

ただ、万能な治療かと言われると、そうでもないようです。クローズアップ現代の特集でも言及されていましたが、一次的に改善しても数ヶ月するとうつ病が再発するという例もあり継続的な研究が必要なようです。

また日本では、麻酔科医が少ないので、行える施設も限られているようです。

いずれにせよ、「電気刺激がうつ病に効果的」という事実は、うつ病は単なるメンタルの問題ではなく、「脳の構造的問題」に結びつくということなので興味深いですね!

それに、患者さんの選択肢が増えることは良いことですよね!

問題の解説

電気けいれん療法について正しいものを選べということですが、

a 65歳以上は適応にならない。

→年齢は関係ないです。

b 重症うつ病は適応疾患である。

ガイドラインの1次適応としては、大うつ病統合失調症双極性障害とあるので大正解です!、今後は統合失調症双極性障害に絡めた問題が出るのでしょうか?

c 副作用として筋強剛がみられる。

→副作用は通電後すぐは、痙攣重積やせん妄など。覚醒後に頭痛や筋肉痛、吐き気、見当識障害などがあるようですが、筋強剛はないようです。筋弛緩薬と投与するので、それを意識したひっかけでしょうか?

脳神経外科医の立ち会いが要件である。

→これも麻酔科医でしたね!こういったひっかけは注意したいですね。今後は、「手術室で行う」とかも出題ポイントになりそうですね。


e 患者やその保護者の同意なしに実施できる。

→電気を通電するのに同意書なしでやるのは倫理的にまずいですよね。

 

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