ゲイやオネェをキャラクターとして見てない?

LGBT

あずあみです。

ゲイやオネェという言葉がよく聞かれるようになりましたね。
ひと昔前に比べ、今ではとてもライトな言葉として使われるようになったなぁと感じます。

見えない苦労はあるにせよ、少しずつ公表しやすい時代へ向かっているのでしょう。
「ゲイなんです」「オネェなの」って、笑顔で言える人が増えていますよね。

でも、それによって、また新しい偏見を生む可能性があるなぁーと気づいた出来事がありました。

このオネェっていう言葉そのものが適切じゃないのかもしれないんですけど、今回はちょっとすみません。
この記事では、オネェとは「男性が女性らしく振舞うこと」とします。

オネェと聞いて連想する人物像はコレ

あなたは「オネェ」と聞いてどんな人物を想像しますか。

露出の多い服装、派手なメイクに大げさな身振り、大胆な物言い。
大抵の場合、こんなイメージがあるのではないでしょうか。

なんだか人生経験が豊富そうだから、説教されたいという人もいるとかいないとか。

何を隠そう、私もそうでした。
実際のゲイカップル(仮)に出会うまでは、本当に全員がそんな人たちだと思っていたんです。

ゲイだからテンションが高いんだろうとか、グラスを持つ時には小指を立てるのだろうとか。
文章にして実感していますが、あり得ない!
でも、本当にこんな想像をしていたんです。

テレビのオネェは一部のオネェ

というのも、私たちが日ごろ目にしているゲイやオネェの人たちって、テレビの中の人たちなんですよね。

テレビで注目されている彼らはとても魅力的なので、印象が強く残ります。
さらに、テレビでは目立つ人が好まれるので、先ほどのイメージに近い人が特にピックアップされがちです。

こういった一種の洗脳のような形で、私たちの中の「ゲイ、オネェのイメージ」は固められているのではないかと思います。

これ、すごいことですよ。
恐らくこの文章を読んでいる誰もが、同じような人物をイメージしたはずですからね。

すごく怖いことです。

化粧品販売員の時に出会ったゲイカップル

私は以前コスメ販売をしていました。

その時に出会ったゲイカップル(仮)が、私の中の歪んだ「ゲイ、オネェのイメージ」をぶっ壊してくれました。

彼らは頻繁にお店にやって来て、時々何かを買って帰ります。
週に2回、多い時は3回ほど顔を見ることがありました。

彼らは最初から少し変わった雰囲気を出していて…というのも、二人の距離は極端に近かったんですよ。
明らかに友人の距離ではない。パーソナルスペース皆無。
常に肌が触れ合っているのでは?という距離なんです。

そして、必ず2人で一緒に来店します。

彼らの容姿はお互いにとてもよく似ていました。
ただ長さを整えているだけといった黒髪で、前髪は目が隠れるほどに長く、背は低く、ぽっちゃり体系でした。

いつも日焼けした丈の長いTシャツと、ゆったりしたサイズ感の色褪せたデニムを身にまとい、少し汚れた白いスニーカーを合わせる。
必ずそのスタイルです。

恐らく人の視線から逃れるように伸ばされた前髪は、より彼らを目立たせているように見えました。

私は「変わった雰囲気のお客様だな(失礼)」と思っていましたが、それは他のスタッフも同様だったようです。
スタッフは、いつしか二人に「仲良しさん」というあだ名をつけていました。
そこには少し嘲るようなニュアンスも含まれていたように感じます。

私は響きが可愛らしかったので、同じように「仲良しさん」と呼ぶことにしました。

基本的に仲良しさんとの会話は事務的なものでした。
「いらっしゃいませ」「こんにちは」「ありがとうございました」など、必要最低限の会話とも呼べない会話しかありませんでした。

仲良しさんを仲良しさんと呼ぶようになって、なんだか勝手に愛着が湧いてしまった私は、彼らをよく見るようになりました。
なんとなく惹かれたんですよね。

すると、仲良しさんのうち1人はポジティブで、1人はネガティブなようだとわかりました。

気になる商品を手に取るのは必ずポジティブさん。
ポジティブさんに見せてもらいながら確認するのがネガティブさん。

ポジさんは時々口角が上がりますが、ネガさんはほとんど口を動かしません。
長い前髪をかき分け目を出して、世界をよく見ようとするポジさん。
長い前髪がより長くなるように顎を引いて、しっかり世界から自分をバリアするネガさん。

惹かれつつも、どうにも距離を縮められずにいましたが、私を突き動かす瞬間が訪れます。

ある日、珍しくネガさんが商品を手に取りました。
私が見る限り、それは初めてのことでした。

そして、その手首に無数の細長いかさぶたが見えたんです。
リストカットですね。

それで何を思ったのかというのは上手く言えませんが、私はとにかく声をかけていました。

「こんにちは。今、お手に取っていただいた商品のほかに、今日から新発売になった商品がたくさんあります。もしお時間がおありでしたら、ご説明させていただけませんか?」

ネガさんは驚いて商品をもとに戻しました。
言葉が出ないネガさんの代わりに、ポジさんが返事をしてくれます。

「ありがとうございます…たとえば、どれですか?」

私は少し遠くから感じるスタッフの視線をよそに、商品の特徴などを説明しながら、気付けば二人と談笑していました。

私「いつもお二人でいらっしゃいますね。仲良しなんですね。」
ポ「ふふ、ありがとうございます。まぁ、出かける時くらい仲良くしていないと。」
ネ「…。」

ポジさんと会話しながら、ネガさんは黙ってややうつむいていました。
時々チラ、と私やポジさんの顔を見て、うなずいたり首を傾げたりします。

私が商品説明をしていても、良い香りね、これ好きよ、とポジさんが相槌を打ち、ネガさんは無言でうなずき、私たちは穏やかな時を共有していました。

私「たくさんお店に来て下さるので嬉しいです。これからもずっとお二人で来てください。」
ポ「まぁ、仲良くしていられるうちはね。いつまでなんて言えないけれど。二人でお邪魔したいわよね。」
ネ「…。(ポジさんを軽くたたく)」

なんだかもう、私はこの二人がだいすきになってしまいました。

それから、よく来店する二人の接客は自然と私が担当するようになります。

ポ「今日は、入浴料を探しに来ました。」
私「お二人のお好みの香りからすると…こちらは?」
ポ「良い香り、ねぇ?」
ネ「…。(うなずく)」
ポ「今夜はこのお風呂にしましょうよ。」
ネ「…。(うなずく)」
私「素敵!おふろはご一緒に?」
ポ「そうね、一緒に…」
ネ「!それは、」
ポ「あら、だってそうじゃない、いいじゃないの。」

初めて聞くネガさんの声は、とても低く、柔らかく感じました。
一緒にお風呂に入っているということを知られるのが、少し照れ臭かったようです。

そんな仲良しさんの姿も、私には愛しく見えました。

最初は、仲良しさんが帰ったあと、私はスタッフに囲まれました。
スタッフは、仲良しさんのことについて、なんでも知りたいといった様子でした。

「どうだった、どうだった?」
「新商品の説明と、本当に仲良しだねっていう話をして。実際に本当に仲良しなんだもん、羨ましくなるよ~」
「やっぱり、カップルなのかな?」
「あ、それは聞いてないなぁ…」
「えー、今度聞いてみてよー!」
「OK、気が向いたらねぇ~~~」

「ねぇねぇ、付き合ってるって?」
「あぁっ忘れた!ごめんー」
「一緒に住んでるのかな」
「んんー、どうだろう…?」

「今日は何を買ったの?」
「いつものトナー!」
「で、どう?カップルだって?」
「わはは、どうしても聞き忘れるなぁ、ごめんねぇ」

そのうち、どうやら私からは何も情報が得られないとわかったスタッフは、しつこく聞くことをやめました。

私はというと、仲良しさんにその質問をすることはありませんでした。
なんだか、そんなの野暮でした。

おそらく仲良しさんはゲイカップルでしたが、彼らがあえてそれを口にしないということは、私がそれを知る必要はないということでしょう。
それに、私にとってはどうでもいい…というと寂しいかもしれませんが、彼らの関係に執着することはつまらないことだったんですね。

仲良しさんは仲良しで、それ以上でも以下でもありませんでした。

ゲイでもオネェでも派手じゃなかった

さて、この仲良しさんは、恐らくゲイカップルだったんですよね。
直接聞いてないので、実のところは謎ですが…。
肌が触れるほどに寄り添って歩き、一緒にお風呂に入る仲。
まぁ、ほぼカップルでしょう。

そして、ポジティブさんはその所作や言葉使いから、ほぼ間違いなくオネェだったと思います。

右手で商品を手に取る時には、可能であれば(ネガティブさんが密着していない場合など)左手を添え、裏声のように上ずる発声をしました。
笑う時には口元を手で隠すようにし、語尾には「好みだわ」「素敵よ」など「わ」や「よ」を多く使っていました。

随所に女性を感じる雰囲気がありました。
この記事でいうオネェに該当しています。

でも、ポジさんは私の知っているオネェとかけ離れていました。

まったく派手じゃないんです。
むしろ地味。

声も小さいし、メイクもしてないし、露出のあるファッションでもない。
全部、違うんです。

そして、私は私が恥ずかしくなりました。

そんなの当たり前だろ、と。

ゲイだから、オネェだから、って。
そんなイメージがあること自体おかしいだろ、と。

女性はみんなスカートを履くのか?
男性はみんなネクタイを締めるのか?

バカみたいだ!!!

ばかやろーーーーー!!!

オネェだから、ゲイだからっていうのはナシ

私は仲良しさんに出会うまで、何の悪気もなく「オネェだから…」「ゲイだから…」っていう思想を持っていました。

最初に話した通りの内容です。
彼らはとにかく派手で、面白くて、ずば抜けていると、思っていたんです。

仲良しさんは、いつもとても仲良しでした。
ポジさんが必ず商品を手に取ってあげていました。
世界と壁を作るように前髪を伸ばしていました。
ネガさんの手首は傷だらけでした。

彼らは、とても静かに、彼らとして生きていました。

私たちは、日常の中で、何の悪気もなく、傷付ける気持ちもなく、無意識に誰かを泣かせていることがあります。

それは家族かもしれないし、友人かもしれないし、まだ会ったことのない「キャラクター化」されている誰かかもしれない。

何の偏見もなく生きることは難しいです。
私たちは自分にさえイメージを作っています。
「これ、なんとなく私っぽい」とかね。

それをなくすのではなく、もっと例外に柔軟にならなければいけないと感じた出来事でした。

ゲイだから、オネェだから、って、こんなのナシにしましょう。
ゲイもオネェもキャラクターじゃなく、1人の人です。
キャラクター(創作)じゃない。リアルなんです。

女だから家事育児が得意とか、男だからバリバリ働くとか、そういう常識が壊されつつある今。
その範囲をもう少しだけ、広げてみませんか。

ゲイっていうのは、その人のほんの一部でしかない。
異性愛者だったらみんな地味な服装をしている、なんてほんとバカみたいな話でしょ。
それだけで、その人の何かがわかる?嘘でしょ?

まとまりのないこんな文章から、あなたに何かを感じ取ってもらえたら幸いです。
最後は丸投げで…おわり~。

LGBT
愛と破壊の戦士あずあみ

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