その間、私たちはみな買い物に行って自分自身を慰めるべきです』
私を守るために彼らが取るあらゆる手段から私を守るため。』
キリストの磔刑が海戦の移乗攻撃用のフックに付けられていることは、おそらく説明の必要がないだろうが、「ウォールド・オフ・ホテル」のみやげ物店で2017年に発売されたこの限定シリーズ作品に付けられた商品説明は、次のようになっている。
――「高張力アルミニウムと聖なる装飾品から造られた戦術サポート器具」。
極度に単純なマーケティングとは裏腹に、《グラッピング・フック》を買うのは簡単ではない。購入希望者は、4万ポンドをかけてこの高価な買い物をするチャンスを得るために、くじ引きの箱に連絡先を入れるように言われる。
くじ引きの当選者は、次の手紙を受け取る。――
「ご愁傷様。貴殿の名が帽子から選び出されましたので、バンクシーの限定版《グラッピング・フック》を1点お買い上げいただけます。詳細は以下の通りです。バンクシー「グラッピング・フック」。ウッドステインとシェラックで仕上げた木製十字架、着彩アルミニウム製のフック及びボルト、着彩ポリウレタン製のイエス、合成麻製ロープ、スチール製支柱及びピン、指示書、ステンレス鋼製ねじ。
作家により署名と番号が付されています。
2017年制作。高さ60cm、幅42cm、奥行き24cm。ロープ付き。
40,000ポンド+付加価値税(適用される場合)。
「グラッピング・フック」は、2018年1月15日週に出荷される予定です。
次の点にご注意下さい。
――これらの作品に関するペストコントロールの証明書の発行申請は2019年1月から受け付けますが、当初の所有者のみが発行を受けられます。」
最も曖昧で、それゆえに好奇心をそそられる要素は「指示書」だ。
この作品の全体的な意味について言えば、おそらく良き意図をもった政治家が戦争の勃発と他国の領土の侵略に及ぶ時代における近代的な十字軍を象徴しているのだろう。
あるいは、すべての信者が自らの宗教に囚われているとか、ほかの意味があるのかも知れない。
コピーライトマークが描かれたすべての作品のうちのひとつで、紙に描かれている。
バンクシーは2002年に250部を発売し、数枚の手書きドローイングを仕上げた。
ここに展示してあるのは、それらの作品のひとつだ。
バンクシーはこれに自筆でサインして、この絵に描かれた警官のモデルとなった男性への贈り物にしている。
この作品を通して、作者は、法と秩序を代表する人について、自分の意見を率直に伝えている。
すると、これらのイメージは風刺的な性質を帯びてくる。
しかしこの作品は、とてもシンプルだ。
警察官が、中指の見紛うことなきジェスチャーで、見る者の注意をぐっとつかむ。
お気に召しただろうか。
警官がこのジェスチャーを向けているのは、おそらくあなたではなく当局です。
何故なら、彼の背後にはアナーキーのシンボルが見てとれる。
あるいは、これはまたしても、当局が友好的であることはめったになく、信頼すべきものではない、ということを人々に思い出させる作品かも知れない。
あるいは、もしかしたら、口うるさい市民に業を煮やした警官が「失せろ」と言っているだけかも。これをどう見るかは、あなた次第だ。
この作品で彼は街頭での抗議に参加する人を描いているが、その顔はバンダナで隠されている。一見すると、彼は火炎瓶を投げようとしているように見える。しかし近付いてよく見ると、彼が実際に手にしているのは花であるとわかるのだ。
バンクシーがこのような絵を初めて描いたのは、2003年、パレスチナへ初めて旅行している最中のことだった。
ガイドは彼に向かって、壁の背後から見ている者は誰もいないと言った。
何か気に入らないことがあると、私たちは抗議し、ときには当局に声を届けようと街頭に出て抗議の意思を表現する。
けれどもしばしばこのような抗議は暴走し、本当の戦争にエスカレートすることがある。そうなると、他のどんな戦争もそうであるように正しい者も勝者もいない。
あるいは、おそらくバンクシーが言いたかったのはこういうことかもしれない。
1型糖尿病という状況でも自分自身であり続けることに価値がある
今日にいたるまで、ハート形の風船を手放そうとしているこの少女の絵は、バンクシーの作品のなかで最も分かりやすいもののひとつとされてきた。
この絵は最初、ロンドンのサウス・バンクの階段下の壁に描かれていた。
この作品を使って、バンクシーは美術史上最も大胆不敵といっていいような悪ふざけをやってのけた。
「どうやら我々は“バンクシーされて”しまったようだ」とサザビーズのシニア・ディレクターで現代アート欧州担当責任者のアレックス・ブランクチク氏は述べている。
サザビーズの声明は「作品購入者は、話を聞いて驚いていた。今後のことについては、現在、話し合いをしているところだ」としている。サザビーズは、購入者の身元を明かすことを拒否。土曜日の夕方、バンクシーは自身のインスタグラムページに、絵の額縁にシュレッダーを取り付ける様子を撮影した動画を投稿。その後、画面はオークション会場に移り、絵が部分的に裁断された瞬間が映し出された。最後に、「リハーサルでは毎回うまくいったのに……」というメッセージと共に、作品がシュレッダーを通って上から下まできれいに裁断される様子が紹介されている。
後にサザビーズは、落札者はこのままの金額で絵を購入することを決めたと発表した。購入者である欧州の女性は匿名を希望しており、「最初はショックだったが、美術史に残る作品を所有することになるのだということに気づいた」と述べている。そして、まさにその通りのことが起きた。この新たな作品は、《ラブ・イズ・イン・ザ・ビン》と呼ばれ、ドイツのバーデンバーデンに展示された。