過去に恋愛で痛い思いをした人はどれくらいいるだろう。
私は最初の彼を初めてふった時にどれだけ泣いたか、２番目の恋人の裏切りにどれだけ手ひどい痛手を負わされたか、ピクセルレベルでその時の情景を痛いくらいよく覚えている。心が失血死しそうだった。考えてみたら、世の中みんな、そういう失恋を乗り越えて生きているんだということに気づいた時には、周りにいるすべての人々が満身創痍の古参の戦士たちに見えて、あの人も、この人も…と尊敬の眼差しで見渡してしまった。
そしてその後、ある意味で強くなり、人を疑うということを覚え、自分でも気づかないまま、コンパスが壊れてクルクルと回っているように、私の恋愛史もかなり迷走した。私の黒歴史、暗黒の時代は、中世ヨーロッパと同じくらい長きに亘ることになり、途中、ある人のせいでもう少しで死ぬところだった事件なんかも通り過ぎた。
そういう暗黒時代を通り過ぎていく中で、強い信頼感で結ばれた結婚もいくつか見てきた。そういう人に、「相手を信じられますか？」と聞くと、「できる」と自信を持って答えが返ってきて、本当にそんな人に自分も出会えるのだろうか…と、信じたい気持ちと不安とが入り混じった変な気持ちを味わっていた。
そして迷走からやっとルネサンスを経て、産業革命が起こったくらいの頃に出会ったのが、今のダーリン。でも彼に出会った当初、私はまだ本気で信じきる覚悟はできていなかった。信じたいと思いつつも、心のどこかで「何かあったら私から先に縁を切る」という、臆病の裏返しでできた覚悟は心の隅に常にあった。
でも、私の疑いの気持ちを毎回、毎回、毎回、裏切り続けたのは、この彼だった。まだ彼という人間をよく知らない時期に「もしかして」と５％くらいの疑いの気持ちが生じても、びっくりするくらいの真心が伝わる言葉と行動で誠実さを示してくれた。事件が起こるたびに（私たちの周りにはなぜかドラマクイーンが多く、しょっぱなから何度も巻き込まれている）、いつもそこに、私の側にいてくれたのは彼だった。
むしろ私自身が我儘なのか、愛されたい欲が強いのか、まだ臆病なのかはわからないけども、どうも信じようとする前に、性善説をとる前に、いまだに「私ばかりXXしている！」「XXしてくれないなら、ちょっと今後のことも含めて考える！」と思ってしまう癖が抜けないのは私の方。
でも最近、もう少し、「自分がどういう気持ちか」ではなく、「彼はどういう気持ちなのか」、彼の側に立って、彼がして欲しいと思うことをしてあげたい、と思うようになった。
人を愛した時、「愛しているから、自分がしてあげたいことをする」のではなく、「彼がして欲しいこと」をしてあげたい、そういう考えが頭に浮かぶようになったのは、彼のおかげのような気がする。彼は私がして欲しいことを知っていて、それが彼がやりたいことかどうかに限らず、やってくれるから。彼が私を愛するのを見て、人を愛するとはどういうことか、学ばせてもらっている。
うちのダーリンくんは年下で、かつオレ様である。「何だと!?」と思うようなオレ様発言もあるけれど、私が人を愛することを学びつつあるのは、このオレ様野郎からである。彼には内緒だが。
世の中、何がどう変わっていくのかなんて、誰にも予測できない。でも、彼には、精一杯悔いのないように、彼がそうしてくれているように、私も無償の愛を捧げたいと思っている。
彼のような人に、私も出会えたということが、自分を信じてたとは言え、奇跡に近い出来事だったようにも感じる。まぁそれくらい迷走してたということでもあるのだが。「大丈夫、絶対そういう人に出会えるよ！」とは安請け合いはできない。でも、「私でも、出会えたよ！可能性はきっとたくさんあるよ！」とは言える。それが誰かの希望になれば、と願いながら。
