本 ときどき ギターを弾く

本もギターも、私の大切なもの

津軽平野

2020-11-06 11:27:09 | 日記
小学生の頃。
父親の仕事の関係で
秋田に住んでいた。
校舎は木造で
窓ガラスは、うねうねした薄い板ガラス。
風が吹けばすき間から
ヒョウヒョウと音をたてて
風が入り込む。

冬になり、
雪が降ると
教室の隅に
前の晩の雪が積もっていた。
ストーブは石炭で、
その日の日直さんが
倉庫から運んでくるのが決まり。

廊下も教室も、すき間だらけだから
換気なんて必要ないのに
先生は容赦なく窓を開けて
空気の入れ替えをするのだ。

薄い板ガラスから見えるのは
何もかもが白くなった校庭。
秋田は雪が多くて
とても大変な季節だけど、
真っ白な景色を見ると
わけもなく、ワクワクしていた。

雪の降る帰り道は
友だちと雪をぶつけ合ったり
大きく口をあけて、
降ってくる雪を食べたり
寝転がったり滑ったりと

あらゆる方法で
雪と遊んでいた。

家に帰れば
暖かいストーブがあり
暖かいコタツがあり
熱々のごはんがある。

クタクタになるまで遊んで
しもやけに、なっても
なんの心配もないのだ

そんな小学生の頃
同級生のAちゃんが
「今日、おどが(おとうさん)、
帰ってくるんだ」
と言った。
「どこかに行ってたの?」と
たずねると、
小さくコクンとうなずいた

「よかったね!」といったら
またコクンとうなずいた。
とても嬉しそうな顔をして。

あとになって気づいたのだけど
その時はわからなかった。
Aちゃんの、おとうさんは
出稼ぎに出ていたのだ

「津軽平野」を聴くたびに
嬉しそうにコクンと小さくうなずいた
Aちゃんのことを思いだす。

今は時代も変わり
出稼ぎという言葉すら
知らない人が多いかもしれないけど
私にとっては懐かしく
少し切なくなる
曲なのだ



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