2020年11月28日土曜日

Stress

 Stress(1982)

ブラジル初のHeavy Metal Album

 

 

Stress 

 

ブラジルは北部アマゾン河口の街、Belém(PA)にて結成されたバンド。ブラジルで初めてHeavy Metalのレコードを発表したバンドとして知られる。 


1970年代のブラジルには、A Barca do Sol, A Bolha, Arnaldo Baptista&Patrulha de Espaço, Bixo da Seda, Casa das Maquinas, Made In Brazil, Módulo 1000, Moto Perpétuo, O Peso, O Terço, Os Lobos, Os Mutantes, Raul Seixas, Rock da Mortalha, Som Nosso de Cada Dia, Spectrum, Tutti Frutti, Utopia, Veludo, Vímanaといった、優れたロック・バンド、アーティストが既に活動しており、ブラジルでも数多くのロック作品が発表されてきた。

 

が、N.W.O.B.H.Mの流れを汲む、所謂Heavy Metalの作品を正式にリリースしたのは、Stressが1982年にリリースした同タイトルのレコードが最初と言われている。

 

結成は1974年と古く、当初はLed Zeppelin、Black Sabath、Deep PurpleやNazareth等をコピーするバンドとしてスタートする。

 

同じ学校のルームメイトたちとの作曲活動、積極的なライブ活動等によって少しずつ知名度を上げていき、地元ではかなり人気のあるバンドに成長した。

カレッジスクールの卒業を控え、若干二十歳の彼らは一大決心をする。


レコードを作ろう!

 

それまで、ベレンはおろかブラジルでHeavy Metalのレコードはリリースされておらず(軍事政権下のブラジルでは、輸入品が禁止されており、また海外の音楽情報が正しく伝わることは無かったそうだ)、まったくの手探り状態で、巨大な音楽マーケットのあるリオ・デ・ジャネイロにレコードを作りに行くことを決める。


Belém→Rio de Janeiro

3.250km 

何とこの行程を、バスで丸3日掛けて移動した!!というのだから驚き。それに、手配したスタジオ(Sonoviso)が前情報とは違って酷い状況。その小さな録音スタジオには、ただ壊れたドラムセットが置かれてあり、針金やテープ等で補強するところから始めたそうだ(当時のリオにもHeavy Metalのレコードを扱うスタジオや、エンジニア等存在しなかったという事)。

 

しかも、 レコーディングに掛けた時間はわずか2日(1982年8月3,4日)。

トータルで16時間というスピード作業。

 

さらに、当初の予算をオーバーしてMixにかける資金が足りなくなり…。

 

"Quando o técnico foi ao banheiro pegamos a fita e saímos fugidos do estúdio, corremos para o metrô e desaparecemos. Era o jeito... Tudo pelo Metal" , ironiza Roosevelt.

(Roadie Crew No.82 Novembro de 2005)

「エンジニアがトイレに行ったとき、オリジナル・テープを持ってスタジオから逃げたんだ。地下鉄まで走って、フェイドアウト。全てMetalの為さ」(Roosvelt "Bala"-Vocal and Bass)


マジか!!😆😆👏👏💀💀


何だか、これだけでドラマになりそうな冒険談。ブラジルらしいね(笑)


その後、何とか1,000枚の少数コピーをリリース出来る運びとなり、

めでたくブラジル初のHeavy Metalのレコードが誕生した。

レコーディング・メンバーは、

 

Roosevelt Bala (Vocal and Bass)

André Chamon (Bateria)

Pedro Valente (Guitar)

Leonardo Renda (Key)


の四人。特にヴォーカル、ベースのルーズベルトさんは学生時代ローイングの州大会で優勝した経験があるらしく、"Bala"(弾丸)という正にメタルヘッズな通り名を持つ。

さらに、このアルバムはファン・ジン(当事、数少ない海外作品のリリース情報などをキャッチするツールとして重宝された)や、Fulminense FM局の番組の宣伝協力を得て、口コミで噂が広まり、1000枚のコピーは瞬く間にレア・アイテムになったそう。しかも、アルバム・リリースを記念したベレンでのライブには2万人のファンが集った。結成当時のSepulturaが前座で演奏した際には、自身もStressのファンであったことを打ち明けたそうだ(Wikipedia)。 


そして、この作品の反響のおかげもあり、

2ndアルバム「Flor Atômica」(1985)は大手Polygramからリリースされる。


 

音質や演奏力も格段にアップして、N.W.B.H.Mの遺伝子を正しく受け継いだ、

正統派パワーメタルの雄という趣き(こちらも名盤です)。 

音の悪さは抜きにして、前タイトルともに非常に演奏はタイト。ブラジルのJudas Priestとメディアで謳われた通り、ブリティッシュ・ハードを基調とした格調高い作品となった。


ただその後は、よりポップな売れるアルバムを製作したいレコード会社との確執、彼らが結成当初からこだわった母国語(ポルトガル語)による歌詞の影響も手伝い、海外メディアから特に注目されることも無く(2ndアルバムは後にポルトガルでもリリース)、英語で歌うことによって海外で評価されたSepulturaに続け(セパルトゥラ現象)と、英語による歌詞が主流となった主に80年代後半のHeavy Metalブームからも取り残されて、2ndアルバム以降は沈黙が続く。

 

しかし、1996年にはRoosveltoとAndre(彼は90年代にはX-Ratedで成功を収めていた)の旧友二人が中心となり活動を再開 、「Stress Ⅲ」をリリース。

初期作品の再リリース等や、シングル盤Coração de Metal(2005)、Heavy Metal é a Lei(2014) のリリースも手伝い、現在までブラジリアンメタルのパイオニアとしてリスペクトされている。

 

 2016年には、映画"Brasil Heavy Metal"(元SantuárioのMicka Micaellisが発起人となって製作されたドキュメンタリー映画)のサウンドトラック、"Brasil Heavy Metal"を製作し、昨年、2019年6月8日(サン・パウロのメタル記念日になりました)に急逝したAndré Matosをはじめ、80年代から活躍するメタルバンドのヴォーカリスト等が集って録音された。


 
昨年( 2019)年には、待望の4thアルバム「Devastação」をリリース。 
 
合わせて。魅力あふれる彼らの楽曲を愛情を持ってカヴァーされた、ブラジルのメタルバンドらによるトリビュートアルバム 、"Tributo ao Stress - Amazônia Inferno Metal(2013)"も興味深い内容。

 

さて、では名曲"Sodoma e Gomorra"(ソドマ・イ・ゴモハ)で幕を開ける82年リリースのファーストアルバムを聴きながら、ブラジルで新しいHeavy Metalという激しい音楽が芽吹いた瞬間を、一緒に感じてみたい。


 

 

 オブリガード

Rev. Guenyu Katata (Monge Roqueiro)

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