『発掘あるある大辞典』の「納豆にダイエット効果」がインチキだというのが今、話題になっていますね。アメリカの教授の発言に、実際に言ってるのと全然違う内容の字幕をつけたり、本当は血液を検査すらしていないのにさも血液検査で効果が証明されたかのように見せかけたりしたとか。


捏造はもっての他ですが、そうでなくても私は前々からあの手の健康番組はいかがなものかと思っていました。


もう少し正確に言うならば、番組そのものというよりはむしろああいった番組で「なんたらは体に良いなんとかかんとかを含んでいる」とか紹介されると店頭から紹介されたそのなんたらが消えるという現象について、いかがなものかと思っていました。


食べ物というのは、種種雑多な化学物質からできています。昔ながらの製法で作ってようが何だろうが、その点に変わりはありません。その中には、人体に良い影響を与えるものもあれば、悪い影響を与えるものも含まれています。また、適度な量なら良い影響を与えるけれどとり過ぎると悪い影響が出るものもあります。


発がん性物質だとか体に悪い化学物質だとかは添加物やら化学調味料やら残留農薬に入っているもので、元々の食べ物には入っていないものだと思われがちですが、実際には、最初から有害物質を含んでいる食べ物は珍しくありません。しかしたいていの場合、その量が微量なので普通に食べている分には問題が起こらないのです。


ところが、なんらかの野菜とか果物とか、飲み物とかに体に良い成分が含まれているからといって、そればっかりやたらと食べたりしたら、その体に良い成分だけではなく、同じ食べ物に含まれている有害物質まで大量にとることになってしまうかもしれません。


例えば、ホウレンソウには体に良い葉酸やビタミンAが多く含まれていますが、同時に『シュウ酸』という人体にとって有害な物質も含まれています。このシュウ酸を多くとり過ぎてしまうと、呼吸困難やシュウ酸カルシウムによる結石、それによって生じる腎不全などが起こり、場合によっては昏睡や死に至ることさえもあります。


普通に食べている分には、ホウレンソウでシュウ酸中毒なんて起こらないでしょうが、もし『あるある大辞典』のような健康番組で「ホウレンソウは葉酸たっぷりで体に良い」なんて紹介されて、むやみやたらとホウレンソウをたくさん食べる人が出たりしたら・・・((((((ノ゚⊿゚)ノ


ちなみに、ホウレンソウをゆでると、シュウ酸がお湯へと溶け出すそうですが、十分にシュウ酸を除去するためにはホウレンソウの10倍の量の水が必要だとか。

前回の記事に対して、こういう話がしたいならソースも書いた方が良いという指摘があったので、プソラレン関連の記事についてのソースを出しておくことにしましょう。一週間近くも前なのでコメントした当人は多分もうこないでしょうけどね。


まずは、『遺伝子組み換えでない害虫に強いセロリ』で発疹などがおこったという話のソースから。

 Nature’s chemicals and synthetic chemicals: Comparative toxicology

Proc. Nati. Acad. Sci. USA Vol. 87, pp. 7782-7786, October 1990 Medical Sciences


 著者のBruce N. Ames教授はカリフォルニア大学バークレー校の教授で、このブログのお気に入りに入れてある発がん性物質についてのデータベース開設者の一人でもあります。実を言うと、この文献には問題のセロリが遺伝子組み換えでないとはどこにも書かれていないのですが、これが書かれた年自体が市場での販売を目的とした遺伝子組み換え作物が最初に開発される前ですので、それよりもさらに前に起こった事件のセロリが遺伝子組み換えなわけがないと判断しました。


 まあ、遺伝子組み換え作物が売られるようになる前に書かれた論文で、わざわざ「このとき売られたセロリは遺伝子組み換えではない」とか書いたりはしませんよね。


 次に、プソラレン+紫外線で紫外線だけの場合よりも強力な光老化が起こるという話。

 Psoralen photoactivation promotes morphological and functional changes in fibroblasts in vitro reminiscent of cellular senescence

           Journal of Cell Science 111, 759-767 (1998)


 同じく、プソラレンを摂取してから紫外線に当たることでガンの危険性が高まるという話。

 Malignant Melanoma in Patients Treated for Psoriasis with Methoxsalen (Psoralen) and Ultraviolet A Radiation (PUVA)

The New England Journal of Medicine VOLUME 336 APRIL 10, 1997


 これは、乾癬の治療にプソラレンと紫外線をわざわざ使った場合についての論文ですから、普通のセロリに入っている程度のプソラレンと日光中の紫外線くらいでガンのリスクが上がるかどうかは分かりませんけどね。というか、私自身はたいして変わりゃしないと思っています。そうでなきゃ、前回『もうセロリは怖くて食べられない・・・という結論を導きたいわけじゃないんです』とわざわざ書いたりはしませんから。


 それから、病気にかかったセロリではそのプソラレンなどの『フロクマリン類』の量が上昇していて、さわっただけでその後に紫外線に当たると酷い紅斑ができた、という話のソース。

 Mechanism of photosensitivity reactions to diseased celery

BRITISH MEDICAL JOURNAL VOLUME 290 27 APRIL 1985


 文献が多いんで書くのがちょっとしんどくなってきましたね。次は、前回取り上げた白血球がプソラレン+紫外線でやられてしまうという話のソースです。

 Inactivation of leukocytes in platelet concentrates by photochemical treatment with psoralen plus UVA

Blood, Vol91, No 6 (March 15), 1998: pp 2180-2188


 ちなみに、この論文の主旨は「プソラレン+紫外線で白血球がやられて免疫力が低下してしまうので危険」というものではなく、「プソラレン+紫外線で白血球を殺せるので、血小板製剤に混ざってしまった白血球(これが副作用を起こすらしいです)を殺してしまって血小板製剤の安全性を高くすることができる」というものです。ポジティブシンキングですね。まあ、白血球なんて体の表面にあるものでもありませんから、プソラレンを摂取してしまったとしても、紫外線の方の影響はあんまり受けないんじゃないかな、という感じはしますが。


 これでやっと最後です。プソラレン+紫外線でHIVの遺伝子が活性化されるという話のソースは・・

 In vivo activation of human immunodeficiency virus type 1 long terminal repeat by UV type A (UV-A) light plus psoralen and UV-B light in the skin of transgenic mice

JOURNAL OF VIROLOGY, Sept, 1991, p.5045-5051


 なんというか・・見れば分かりますが、全部英語です。PUBMED(医学や生物学などの論文が収められたアメリカのデータベース)で検索して探したんだから当たり前なんですけどね。しかしこんな風にソースを示したところで、誰が読むというのでしょうか(反語)。いちいちこんな風にソースを貼るのもかなりめんどくさいんで、多分今後は特に要望が無い限り、こんな風にわざわざソースを示したりはしないでしょう。(要望があってもしないかもしれませんけど。)


崎嶋(以下、崎):「前回と前々回に話したプソラレンには、紫外線による光老化や発がん性を高めるといった危険性の他に、免疫系の働きを低下させる作用や、HIVの遺伝子を活性化させる働きもあるのではないかと言われています」



羽生(以下、羽):「もうセロリは怖くて食べられない!((((((ノ゚⊿゚)ノ」



崎:「・・・と、いう結論を導き出したいわけじゃないんですよね、私は(;^_^A」



青田(以下、青):「違うのか」



崎:「プソラレンはセロリだけではなく、パセリなんかにも入っていますし、そもそも植物が作り出す発がん性物質や、その他の人体に有害な物質は何もプソラレンだけじゃありません。その他のものについても今後とりあげていきたいと思いますが、要するに、『買ってはいけない』が合成の添加物やら何やらについてやったみたいに些細なリスクまで取り上げて、『危険性があるから排除すべし!』なんてことを言い出すと安全な食べ物なんて何も無くなるよ、ということがここで言いたいことなわけです」



羽:「あ、もしかして今回はここで終わり?」



崎:「今あるプソラレンネタはもう尽きましたので」



青:「短っ!汗



崎:「良いじゃないですか、たまには短くたって。あせる手軽に読むことができますしね」

崎嶋(以下、崎):「前回、セロリには紫外線による発ガン性や光老化を促進するプソラレンが含まれている、という話をしました」



青田(以下、青):「品種改良で害虫に食べられにくくなったセロリだとそのプソラレン?が増えるとか、そんな話だったっけな」



崎:「・・・だったっけなって、今回は珍しく早く更新しましたから、ついこの間ですよ?覚えておいてください( ̄_ ̄ i)。実は、セロリにはこのプソラレンの他にも、5-メトキシプソラレンや8-メトキシプソラレンといった同様の効果をもつ物質が含まれています。これらの物質は『フロクマリン類』と呼ばれているのですが、ここで気をつけて欲しいのは、病気にかかったセロリでは、この『フロクマリン類』がものすごく増えるということです」



羽生(以下、羽):「・・・なんで?」



崎:「えっ・・・いえ、そこまではまだ調べてません。ただ、人間でも病気になったら活性酸素を産生したりして細菌を殺すのに使ったりしますから、それと同じようにセロリも細胞に有害な物質を使って細菌なんかを撃退しようとしているのかもしれません」



青:「活性酸素って、よく体に良くない、ってテレビとかで言ってないか?」



崎:「良くないですね。細胞に害を与えるからこそ細菌を殺すのにも使えるわけですが、人間の細胞にも有害なのでまさに『両刃の剣』というやつです。抗生物質なんかだと細菌だけ殺して人間の細胞にはほとんど害を与えなかったりもするんですけどね」



羽:「話が逸れている」



崎:「確かに逸れてますね。で、そのフロクマリン類が病気にかかったセロリではどのくらい増えるのかというと・・・


5-メトキシプソラレンで14.7倍

8-メトキシプソラレンで20倍

そして・・プソラレンでは、なんと216倍です!!」



青:「216って・・・」



羽:「前回の害虫に強いセロリだとプソラレンが7~8倍あって、それで食べてから日光に当たった人に発疹とか火傷がでたって話じゃない。それが216倍っていったら・・」



崎:「1分間さわっただけで、その後紫外線に当たった時にひどい紅斑が出て、それが完全に治るのに6週間かかり、その後も痕が残ったりもしたそうです」



青:「さわっただけでそれかよ?!」



崎:「全部のセロリでそうなったというわけじゃなくて、そういうものもあった、というだけの話ですけどね。いずれにせよ、病気にかかっていないセロリならフロクマリン類の量も少ないので、こんな事はまず無いでしょうけど」


崎嶋(以下、崎):「『学問の蛇道』は来年(多分、春頃)にリニューアルオープンを考えています。と、いうのも、これまでの記事を見てみると、中身があまりなかったり面白みに欠けたりするものが多かったりするような気がして、それもこれも私の知識の不足しているからです。そういうわけで、今はリニューアルに向けていろいろと文献を読んだりしているところなのですが・・」


青田(以下、青):「また更新が遅い言い訳か」


崎:「その通りです、すいませんm(u_u)m。・・で、もういっそリニューアルまでは閉鎖しようかなとも思ったのですが、読者登録をしてくださっている方もいることですし、それも何なので、これまでに集めた情報を少しずつ小出しにしていくことにしました。今回がその小出しネタ第一弾・『無農薬でも大丈夫なセロリ事件』の紹介です」


青:「もうちょっとネーミングを考えろよ(;´Д`)ノ」


崎:「分かりやすいネーミングをこころがけました。まだ小出しの段階なので、この事件が正確にはいつあったのかまでは調べていないのですが、1986年以前のアメリカのようです。つまり、20年以上も前ですね。この頃、『害虫に強いから無農薬でも大丈夫なセロリ』というのがつくられ、販売されました。ちなみに、このセロリは遺伝子組み換えでつくられたわけではありません」


羽生(以下、羽):「食品として販売する目的で遺伝子組み換え作物が初めてつくられたのは1994年のことだしね」


崎:「『遺伝子組み換えではなく』『無農薬』となれば、今ではキラキラ安全キラキラの代名詞みたいなものです。しかし、このセロリを食べた国中の人々から、『日光に当たった時に、発疹や火傷が生じた』という苦情が殺到しました。実は、セロリには元々、『プソラレン』という光老化や発ガンといった紫外線による細胞への悪影響を促進する物質が含まれているのです。その『プソラレン』が、この『遺伝子組み換えでもないのに害虫に強いセロリ』では、通常のセロリの7~8倍もの量になっていて、その結果、害虫だけでなく、人間にも被害が出てしまったわけです」


羽:「どこぞのマンガで、『本当に元気な野菜は農薬なんか使わなくったってそんなには虫にやられないもんだ』みたいなセリフを八百屋のオジサンが言うシーンがあったけど、そんな野菜、本当に安全なんだか?」


崎:「世の中では、『遺伝子組み換えは危険』で、『品種改良など従来のやり方でつくられた作物は安全』というような認識が横行していますが、少なくとも遺伝子組み換えならば、どういう物質が作られることによってその作物が害虫に食べられにくくなっているのかが分かっています。しかしながら、昔からのやり方で作られた作物が害虫に強い場合、いったいどんな物質が作られたり、増えたりすることで害虫に強くなっているのか分かったものじゃありません。『たくましく育ったから』みたいな精神論的な理由で植物が害虫に食べられにくくなるはずもなく、自然にそうなった場合や品種改良の結果であれ、あるいは農薬や遺伝子組み換えであれ、虫に食べられにくくなっているのならばなんらかの物質の働きが関与しています。そこのところを忘れて、『農薬や遺伝子組み換えは植物を食べる生き物に有害な物質をつけたり作らせたりしているから危険』でも『自然に害虫に食べられにくくなった植物はそうじゃないから安全』みたいな認識をしていると、逆に『食の安全』は失われるかもしれませんよ」

崎嶋(以下、崎):「前回の更新から三週間近くもあいてしまいましたね・・・。最近忙しいとはいえ、これはサボりすぎです汗


羽生(以下、羽):「『最近忙しい』なんて言い訳をいれるところがまた見苦しいけど」


崎:「うう・・・ともかく、せっかく久々に更新したんですから、ちゃんと学問の話に移りましょう。ところで、前回と前々回にやったアルミニウムがアルツハイマーの原因疑惑は、どうもまだ完全に払拭されたというわけではなかったみたいです。まあ、このへんについてはまたそのうち調べてから書くとしますが」


青田(以下、青):「『そのうち』っていうのは、永遠にこないものなんだよな」


崎:「そんなことありませんって!あせる・・・ところで、このブログのそもそもの目的は『天然=安全、合成=危険』という現代日本に蔓延している信仰の・・」


羽:「日本だけじゃなくて、イギリスとかアメリカでも流行ってるみたいだけど」


青:「必ず欧米の後追いをしようとする日本の風潮から考えると、多分向こうの方で先に始まって、それが日本にうつってきたんだろうな」


崎:「そういう細かい話はさておき、とにかくその信仰の進行を食い止めることこそがこのブログの本来の目的なのです!」


青:「11月も半ばに冷房はよせ!あせる


崎:「さーて、みなさん、みなさんは、無農薬の野菜は安全だと思っていませんか?しかししかし、必ずしもそうとは言い切れないのですよ。なぜならば、食事を通して摂取される農薬のうち、質量にして99.99%ほどは、いわゆる『天然農薬』というやつだからです」


青:「『いわゆる』とか言われても・・・そんな言葉、初めて聞いたんだが」


崎:「植物は動かないので人間は忘れがちですが、彼らだって生きています。生きているからには食べられたくありません。私だってそうです」


青:「心配せんでも、誰も食べたいとは思わんだろうよ( ̄_ ̄ i)」


崎:「しかし走って逃げることも噛み付いたりして戦うこともできない植物には、おおざっぱに言って二通りの防御方しかありません。一つは、堅い殻やトゲなどで身を守る方法、そしてもう一つが、自分を食べる相手に害を与える化学物質をつくり出すという方法です。この植物が作り出す化学兵器が俗にいわれる『天然農薬』です」


青:「だから、俗にはそんな言葉使われないって!」


崎:「ところが、世間にあふれる『天然=安全』神話のためか、この『天然農薬』については、ろくに調べられていません。かつて、1052種類の化学物質について発ガン性が調べられたことがありましたが、このうち天然農薬はわずか52種類でした。・・・そして、その52種類のうち、半分以上の27種類に、動物実験で発ガン性が認められたのです((((((ノ゚⊿゚)ノキャー


羽:「植物もだてに厳しい自然淘汰と進化の歴史を生き抜いてはきてないってことね」


崎:「このあたりの話は、もう少し情報が集まったら掘り下げてみたいところですね。では、今回はこのへんで」

崎嶋(以下、崎):「今日確認してみたら、読者登録がなんと14人になっていましたよ。いつの間にやら二桁に達していたんですねぇ」


羽生(以下、羽):「この中でちゃんと読んでくれている人はどの位いるのやら」


崎:「なっ、何を言うのですか(((゜д゜;)))読む者と書いて読者ですよ?!皆さんちゃんと読んでくれてるに決まってるじゃないですか」


羽:「でも最近読者登録した人には、登録時のメッセージが『読者登録させてくださいね』みたいなのもあったし、これはもしかすると、いわゆるアクセスこじ…」


崎:「おかしな事を言わないでください�( ̄口 ̄)失礼ですよ、読者にも私にも」


青田(以下、青):「まーでも、前はそのアクセス孤児?とかいうのすら来なかったんだから、少しはマシな状態になってきてんじゃねーの?」


崎:「だーかーら、そんな事ありませんってば!」


青:「そうか…それじゃ、少しもマシにはなってないわけだ」


崎:「そっちじゃなくて…もう良いです、本題に入りましょう。

 血液中にアルミニウムが入り込むとアルツハイマー病と似たような症状が起こるけどそれはアルツハイマーじゃないんだよ~、という話を前回はしました」


青:「で、それだと結局、アルミでボケることに変わりはないんじゃないかって俺が聞いたんだったよな?」


崎:「…そうでしたっけ?」


青:「そうだよ!(\ /#)」


崎:「じゃあそういう事にしといてあげましょう。…それはそうと、確かに血液中にアルミが入ると、いわゆるボケの原因にはなるようなんですが、しかし、じゃあ例えば、アルミ缶とかアルミ鍋なんかが危険かっていうと、それはまた全然別の話です」


青:「なんでだよ?」


崎:「何でかと言えば、腸から吸収されるアルミニウムの量はごくわずかだからです」


羽生:「だいたい、鍋とか缶から溶け出すアルミの量自体そんなに多いとは思えないしね」


青:「確かに、そんなどんどん溶け出すようなら穴があくだろうしなぁ」


崎:「それに、少々なら腸から吸収されても、腎臓で処理してくれますしね。前々回あたりで話した透析患者の場合は、透析の機械を通して直接アルミニウムが血液中に入った上に、そもそも腎臓が悪いから透析をしていたので、腎臓から尿中へのアルミニウムの排泄もうまくいかず、そのせいで脳の方に影響が出て痴呆になっちゃったわけです」


羽:「そういえば、動物実験も血管に直接アルミニウム塩を注射してたんだっけ?」


青:「あー、言われてみれば確かに」


崎:「だいたい、缶から溶け出すアルミニウムくらいでボケるようなら、胃潰瘍とか十二指腸潰瘍の治療のためにケイ酸アルミニウムとか水酸化アルミニウムゲルとかを飲んだ人は一発でボケちゃうじゃないですか」


青:「そんなもの飲むのか」


崎:「まーそういうわけなんで、アルミはそんなに避けてまわる必要はありません。…腎臓が悪いなら話は別ですけど」


青:「そうは言っても、やっぱり少しは腸からも吸収されるんだったら避けた方が無難なんじゃないのか?」


崎:「それはまあ、確かに無難と言えば無難かもしれませんけど、今回取り上げたのがたまたまアルミだっただけで、この程度の危険性があるものだったら、天然のものも含めて他にもいくらでもあるんですよ?そういうのを全部避けてたら多分生きていけないと思いますけどね」
崎嶋(以下、崎):「今回は珍しく初っ端から本題に入ります。前回は、透析の機械から溶け出したアルミが認知症…ま、いわゆる老人ボケですが…を引き起こした事から、『アルミがアルツハイマーを引き起こしている』と言われるようになった、というところまで説明しましたね。しかし実はこの話、後日談があります」


羽生(以下、羽):「後日談っていうのは何かヘンな気がするけど」


崎:「まあ良いから話を続けさせてくださいよ。…え~はい、ところがですね、アルミが血液中に入ったせいで認知症になってしまった人の脳をちゃんと調べてみると、アルツハイマー病の脳に特徴的な、アミロイドタンパクによる老人斑が無かったんですね。そしてさらに、それからけっこう後の話ですが、逆にアルツハイマー病で死んだ人の脳を調べてみると、アルミはまったく検出されなかったのです。

 つまり、アルミが血液中に入る事よって引き起こされていた認知症とアルツハイマー病は、症状が似ているだけでまったく別の病気だったというわけですね」


青田(以下、青):「要するに、同じようにくしゃみや鼻水が出ても花粉症と風邪は全然別の病気…ていうのと同じようなもんか?」


崎:「まあ、そんな感じです。その例えで言うなら、『アルミでアルツハイマーになる』というのは、『杉が生えている所に行くと風邪をひく』みたいなもんですかね」


羽:「花粉症と風邪は症状もだいぶ違うと思うけど」


青:「そりゃそうと、今の話じゃ、アルツハイマーとは違っても、結局アルミでボケるってところに違いはないんじゃないか?」


崎:「そのへんの話はまた次回という事で(^-^)ノ~~」
崎嶋(以下、崎):「ここのところ全然更新していないのに、妙に読者登録が増えたんですよね。どういうわけでしょう?」


青田(以下、青):「俺としてはむしろ、こんなに更新が滞ってる事の方がどういうわけでしょう、だ」


崎:「いやー、最近何かと忙しくて。10時過ぎまで研究室に残って、家に帰ってきてお風呂に入ったりしたらもうほぼ12時ですし」


青:「なんかツッコミどころが特に無いな」


羽生(以下、羽):「蛇道らしくもない」


崎:「それからダラダラしてたらいつの間にやら2時、3時…」


青:「そこでダラダラするなよ!\(゜□゜)/」


羽:「さっさと寝れば良いのに」


崎:「待ってください、これにはちゃんとした理由があります」


羽:「一応聞いといてあげる。どんな理由?」


崎:「寝る前には歯を磨かなくてはいけません。しかし疲れて帰ってくると、その気力すらなかなかわいてこない。だから寝ることもできずにダラダラしてしまうわけですね」


青:「ちっともちゃんとしてないよ、崎嶋研究員!」


羽:「何の真似なんだか?」


崎:「それはそうと、久しぶりの更新なんですからちゃんと学問をやっておきましょう。今回からの新・テーマは、『アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こす』伝説です。この伝説、けっこう知ってる…というか、信じている人も多いのではないでしょうか?私もずいぶん前に『特命リサーチ200X』で見てからけっこう長いこと信じていました」


青:「その言い方だと、そのアルミニウムとアルツハイマーの話は嘘なのか?」

崎:「ま、そういうことになりますね。そもそも、アルミニウムがアルツハイマー病の原因と考えられるようになったのは、1960年代に腎臓の透析を受けていた患者にアルツハイマー病と同じような痴呆症状が現れたことに端を発します」


青:「アルミと透析に何の関係があるんだよ?」


崎:「この透析の機械からアルミが溶け出していて、それが患者の血から脳へと入り、この痴呆症状を引き起こしていたんですよ」


青:「そんなことがあるのか…(・_・;)」


崎:「まあ、60年代の話ですから。で、動物実験でもアルミニウム塩…これは、おおざっぱに言えば純粋な金属のアルミニウムを酸で溶かした時にできるものですね」


羽:「硫酸アルミニウムとかね」


崎:「そのアルミニウム塩を注射した動物でも、脳に異常…繊維状の沈着物があったんですが、このあたりから、アルミニウムがアルツハイマーを引き起こしてるんじゃあないのか、なんて話になっちゃったわけです。さあ、それでは、事の真相は如何に?!気になるところで、以下、次号です」
崎嶋(以下、崎):「そもそも皆さんは、アミノ酸がなぜ『アミノ酸』という名前なのか知っていますか?それは、『アミノ基』という部分もっている酸だからです」


青田(以下、青):「�( ̄口 ̄)そのまんまだ!」


崎:「確かにそのまんまと言えばそのまんま何ですけどね。でも、アミノ基は塩基性なんですよ?」


青:「…まったく意味が分からん。ここは一応一般向けなんだから、もう少しわかりやすく言えよ(-"-;)。そもそも『塩基性』っていうのはなんだ?」


羽生(以下、羽):「『塩基性』とは他の分子やイオンなどに電子を提供する性質のこと」


青:「ますます意味が分からん( ̄○ ̄;)」


崎:「酸性が水素イオンを放出する性質であるのに対して、塩基性はその逆、つまり水素イオンを受け取る性質と説明される場合もありますね」


羽:「プラスの電気をもっている水素イオンを受け取るのはマイナスの電気をもっている電子を提供するためだから、『電子を提供する性質』という説明の中に、『水素イオンを受け取る性質』という意味も含まれてるんだけど」


青:「くっ…話に全然ついていけん(-"-;)」


崎:「分からない人はぶっちゃけ酸性の逆だと思ってくれたら良いです」


羽:「要するに、『アルカリ性』と『塩基性』はほぼ同じ意味だってこと」


青:「えーと、で、それが何だって?」


崎:「すっかり混乱してしまってますねぇ(^_^;)良いですか、塩基性のアミノ基をもっているアミノ酸がなぜアミノ『酸』なのか。それは、アミノ酸にはアミノ基の他に、前回ちょっと出てきた『カルボキシル基』というものもついているからです。このカルボキシル基の酸性がアミノ基の塩基性よりも強いので、アミノ酸はアミノ『酸』なわけですね。で、ドパミンにはこのカルボキシル基とアミノ基のうち、アミノ基の方しかない。一方、ドパミンの元『L‐DOPA』にはいろいろなアミノ酸と同じで、このカルボキシル基とアミノ基が両方ある。そういうわけで、ドパミンの元の方はアミノ酸用の搬入口を出入りできるけど、ドパミンそのもの方はできないのです。では、今回はこのへんで(^-^)ノ~~」


青:「なんかいつもより短くね?」


羽:「いつもが長すぎるような気もするけど」