トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

軍事オンチの弁明 その②

2019-02-08 22:05:13 | 歴史諸随想

その①の続き
 軍事にはド素人の私だがスパイ史には関心があり、若い頃は結構スパイ小説を読んでいた。仙台空襲時の誘導スパイ説を信じてしまったのは、そのためだろう。島国日本にスパイはありえない、と言ったコメンターさんもいたが、必ずしも不可能事ではない。英国の作家ジャック・ヒギンズの代表作『鷲は舞い降りた』は、ドイツの落下傘特殊部隊が英国に潜入、チャーチルを拉致しようとする物語である。
 単なる冒険小説のフィクションではないか、と思う方もいるだろうが、実際にドイツ軍はムッソリーニを救出するグラン・サッソ襲撃を成功させていて、絵空事ではないのだ。ヒギンズもこれにヒントを得ている。

 戦時中、落下傘で敵地に侵入したスパイには女もいた。人気サイト・カラパイアの記事「ドラマチックな生き方で、歴史に名を遺した世界10人の女性スパイたち」には、英国のナンシー・ウェイクが挙げられている。ウェイクはパラシュートで武器と補給品を提供する任務を取り仕切っていた。
 ケイト・ブランシェット主演の映画『シャーロット・グレイ』は、ウェイクの戦争体験を基にした作品で、ヒロインのシャーロット・グレイは、英国からドイツ占領下のフランスに落下傘で潜入している。

 現代の日本人からすれば、屈強な男ならともかく女にも落下傘特殊工作員がいたことに驚くが、何でもありなのが戦時中なのだ。名が知られていないだけで、他にも敵地で暗躍したスパイは男女問わずいたはず。ネモは戦時中の謀略への知識もなければろくに調べてもいないのが丸わかりという、情けなさを晒している。
「僅かな目撃証言に基づいた憶測に過ぎない程レベルなことを大真面目に語っている馬鹿さ加減」と挑発したネモだが、この一文だけで歴史への素養の無さを公言しているのだ。歴史というのは僅かな目撃証言さえ貴重な現場証言となり、後世の人々への推測(憶測というのは的外れに過ぎない)を与える。目撃証言がなければ、空襲時の状況も伺えない。文献資料から様々推測するのが歴史学だから。

 もちろん空襲という非常時ゆえに流言飛語が付きまとい、信憑性の疑わしい証言も多々ある。それでも検証するのが歴史であり、真摯な考察が求められるのは言うまでもない。知識も知性もない者からすれば、“大真面目に語っている馬鹿さ加減”となろうが、読点を全く使えないコメンターに知見を求めるのは酷というもの。
 それにHNのネモとは、まさか『海底二万里』のネモ船長から取ったのか?コメント文からはあの古典的SFを読んだとは思えぬし、アニメ『ふしぎの海のナディア』のキャラから得たのやら。

 8年4か月も前の記事をチェックしていることからも、ネモはネットを徘徊する暇人かもしれない。ただ、私的にはこの者がなぜ米軍の空襲作戦記録が国会図書館のHPで提供されているのを知っていたのかが気にかかる。空襲にかなり関心があるのは確かでも、国会図書館に入り浸って読書しているようには感じられない。首都圏在住者なのだろうか。

 毎年7月毎に河北新報は仙台空襲の特集を組み、戦争の悲惨さ、平和への願い……という決まり文句を繰り返している。だが、せっかく国会図書館HPで米軍の空襲作戦記録が公開されているならば、それを紹介してもよいはずなのに未だに紙面には載ったことがない。或いは河北の記者も知らないのだろうか。国会図書館のHPを閲覧する地方在住者はそれほど多くないはず。

 繰り返しになるが、総じて女は軍事に疎い。2019-01-02付で「スポンジ頭」さんから、「私の親戚に終戦時児童ながら戦前生まれがいるが、独ソ戦を知らなかった」というコメントを頂いた。独ソ戦など私の昭和一桁生まれの老母も知らなかったが、「スポンジ頭」さんの親戚とは人に物を教える立場だった伯母という。
 田舎役場事務員に過ぎなかった私の母ならまだしも、教師さえ独ソ戦を知らなかったことには驚いた。小学校教師をしている私の従姉にいつか、独ソ戦のことを聞いてみたい。

よろしかったら、クリックお願いします
  にほんブログ村 歴史ブログへ


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鳳山)
2019-02-08 22:58:03
8年4か月前の記事をチェック、本当に暇人なんですね。そういう性格だから他人様の記事にいちゃもんをつけるんでしょう。呆れ果てます。
とある調査 (スポンジ頭)
2019-02-09 10:04:00
>教師さえ独ソ戦を知らなかったことには驚いた。 

 伯母はソ連を嫌っていましたが、それでも知りませんでした。直接自分に関係ないからでしょうけど。

 そして、有名国立大学の学生でもこのような例もあるので、なかなか教育は難しいものです。正直驚きました。
ttps://twitter.com/hkakeya/status/1089812164053852165
鳳山さんへ (mugi)
2019-02-09 21:31:23
 10年以上前の記事に因縁をつけてきた者もいましたが、昔の記事をチェックする輩は総じて悪文で考え方も異様。せっかく時間があるのに、無趣味だからネットに逃避するのかも。
Re:とある調査 (mugi)
2019-02-09 21:32:51
>スポンジ頭さん、

 遠縁にシベリア抑留者がいたためか、私の母もソ連やロシアは嫌いでした。ただ、日本人だけがシベリアに抑留されたと思っていたのです。そこでドイツ人捕虜もシベリアに抑留された話をして、独ソ戦のことを初めて知りました。

 紹介されたツイートも驚きました。ひと口に筑波大学の学生といえ学部も様々だし、史学の学生の正解率が気になりました。それでも筑波大の文系でも、この体たらくとは、、、

 正答数の平均が最も高かったのが書籍を信頼する人、逆に最も低かったのは民放を信頼する人という調査結果も興味深いですね。尤も書籍も全面信頼は出来ませんが。
ネモはフランス語ではわりとあるハンドルネーム (madi)
2019-02-11 06:46:43
 なし、という意味ですからわりとあります。
 サブカル的には、例えば軍事オタク好みのライトノベル『緋弾ノアリア』だと23巻くらいからかたきやくの小柄の美少女でネモ提督がでてきます。
Re:ネモはフランス語ではわりとあるハンドルネーム (mugi)
2019-02-11 22:22:09
>madi さん、

『緋弾ノアリア』というライトノベルは知りませんでしたが、アニメ化もされた人気作品のようですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8B%E5%BC%BE%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%A2

 wikiのネモ船長の解説にも、「ラテン語で「誰でもない」を意味する nemo から取られている」とありますね。もしかすると、記事にした「ネモ」は『緋弾ノアリア』から取ったのかもしれませんが、「名無し」の意味も込められているのやら。