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野生アザラシの観察ルールや必要な機材について

大自然の中で生きるアザラシの姿は、とても力強く、やはり水族館や動物園で飼育されている個体とは一味違います。アザラシが好きな方が、野生に暮らすアザラシの姿を見ることができたなら、一生モノの思い出になり、またアザラシが生息する海の保全や環境に関心を持つきっかけになるはず。

最近ではITの進歩、SNSの発達により、野生のアザラシに関する情報の収集も、以前より格段に容易になりました。それこそ当サイトでも野生アザラシの情報はそれなりに紹介しているとおりです。また野生動物を見に行く観光ツアー、アザラシウォッチングツアーなども盛んになってきました。なので以前より、手軽に野生の海獣に会うことができる時代になっています。いやー、良い時代ですね。

一方で、アザラシを見ることが簡単になったとしても、相手は野生動物な事には変わりません。野生動物との付き合いには不変なルールやマナーがあります。

ここでは野生のアザラシの観察時のルールやマナー、観察に必要な機材などを、私の実体験を踏まえて紹介したいと思います。

【野生アザラシ観察の大前提】野生アザラシは人間が好きではないという認識で

アザラシ好きな人間は、アザラシが好きだからわざわざその野生個体を観察したり撮影したりするわけではありますが、大前提として

アザラシをはじめとする野生動物たちは人間が大っ嫌い。人間が彼らの生息地に踏み込むことは、彼らにとって直接的にプラスになることはほぼ無い。

という認識で行動しましょう。簡単に言えば”人間が近づけば、基本的には逃げ出す”ということですね。

アザラシを見るということは彼らのテリトリーに入っていくこと。また海はアザラシ以外の様々な野生動物(他の海生哺乳類、海鳥、魚、、、etc)が暮らす場ですし、人間が観察する側の陸側も、陸生哺乳類、鳥類、昆虫、植物が暮らす場でもあります。この前提を踏まえて、なるべく影響を与えないような形でアザラシを観察しましょう。

私も野生アザラシを観察するときはいつもこの認識は忘れず、彼らのテリトリーにお邪魔する感覚でおります。自然の姿のままのアザラシを観察しようと思ったら、こちらの気配を最小限に抑え、アザラシの行動に影響を与えないように苦心することになります。

「人間と野生動物が仲良く暮らす」というのは幻想、、、とまでは言わないでも、できることは、お互いのテリトリーを侵しすぎないように住み分ける、くらいがせいぜいなところかなと、個人的には考えております。

静かに観察する

野生のアザラシを前にしても静かにしていることは、彼らの自然な姿を観察するための最も大切なコツでもあります。

野生アザラシを見つけると「アザラシだーーー!!!」と絶叫する方、「ゴマちゃーん」と大きな声で呼ぶ方。また手を叩いて音を出て、気を引くようにして呼んでいるつもり(?)な方を見かけたことがあります。が、これは野生アザラシとの距離を遠くする行動です。

野生のアザラシはペットや家畜などの飼育動物ではないので、声や音を出しても人間に寄って来ることはありません。むしろ、野生のアザラシは人間が出す大きな音や声には驚き、海の中に入って泳いで距離をとるなどして、逃げていきます。なので観察中は物音を極力出さないようにしましょう。声以外の音にも注意です。例えば車でアクセスするような場所では、エンジン音などにも注意が必要で、遠くに車を止めてこっそり近づくこともあります。(車から観察した方が警戒されないパターンもあるので一概にどちらが良いとも言えないのですが)

また音以外にも派手な動きをしない、必要以上に近づかない、というのも大事。アザラシは身の危険を感じたらあっという間に逃げ出すので、とにかく警戒させるような動きはしないようにしましょう。

冒頭の繰り返しになりますが、野生動物は人間が嫌い、向こうから人間に好意的に近づいてくることはない、という認識で。。。

人間の食べ物を与えない。

これも絶対に守るべきルールです。特にお菓子のような人間の加工食品には野生動物が通常摂取しないような物質も含まれています。(海に暮らすアザラシが人間のお菓子のようなものを食べているわけはありませんよね。)

野生動物が人間の食べ物を貰うことに慣れるとそれに依存してしまい、体調を崩す、狩りをしなくなる等の影響が出て、自力で生きていけなくなることも。ヒグマでは、人間が餌を与えた→人間を怖がらなくなる→人里に下りてくるようになる→危険なので害獣駆除される、、、といった悲しい悪循環の事例もあります。

直接的にアザラシに餌を与えるのを控えるだけではなく、周囲への他の生物への影響も鑑みて、生息地周辺に人間の食べ物は残さないようにしましょう。

ゴミを残さない。

海獣観察に関係なく、アウトドア関係の基本的なマナーですが…。ゴミも全て持ち帰りましょう。タバコを吸う方は、携帯灰皿も忘れずに。

生体・死体を問わず野生のアザラシには触らない。(捕まえるのは法令違反の可能性も)

あまり無いケースだとは思いますが、触ることのできる場所にアザラシがいても触らないようにしましょう。野生のアザラシは寄生虫や何らかの病気を持っている可能性があります。どんなに可愛く見えても野生動物は「汚い」ものです。うかつに触れるべきものではありません。また逆に人間側からアザラシに病気を移す可能性もあります。最近は人獣共通感染症やワンヘルスの考えも浸透しており、だいぶこの辺りの理解は広がっているようにも思います。

また野生の海獣は凶暴ですし、こちらに敵意が無くても、相手にとっては、生死をかけて全力で防御のために攻撃してくる可能性もあります。むやみに捕まえたり拾ったりしないようにしましょう。実際、2007年6月から7月にかけては野生アザラシに近づき過ぎた女性がかまれたり引っかかれたりして救急車が出動するという事故が起きました。

野生のアザラシには必要以上に近づかないようにしましょう。

なお、許可なく生きているアザラシを積極的に「捕まえる」行為は鳥獣保護管理法などの法律で規制されているので、そもそも犯罪となる可能性があります

衰弱している様子のアザラシを見つけた場合は?

アザラシは野生動物であり、その辺に転がっているのは普通のこと。見かけたしても、すべて保護する必要はなく、そっと見守るのが原則です。

”野生動物の生死に人間が干渉すべきではない。衰弱して死んだとしてもそれは自然の摂理の中のことであり、一個体の生死がその種の存続に影響を与えるレベルではないほどの個体数がいる種(”国内希少野生動植物種など法で保護が担保されていない種)”という考えのもと、仮に衰弱個体がいたとしても放置する、というのも正しい考え方です。

特にゴマフアザラシは一部地域では増えすぎることによって漁業被害が出ていますし、場所によっては駆除をしています。そのような種について個体ごとに保護する必要があるかは、様々な観点から色々な判断ができる、、ということも知っておいて損は無いかな、と思います。

また野生動物の幼鳥や幼獣が単独でいるように見えても、近くに親がいる場合が多いです。そのような場合、うかつに幼い個体に対して人間が干渉することにより、本来の親が育児放棄する可能性がありますので、基本的には幼獣や幼鳥を見かけた場合は放置が野生生物との付き合いの原則になります。

”そうはいっても弱っている生物を見過ごしにできない”という人情も、これはこれで理解はします。一般の方が許可なく捕獲するのは法律(鳥獣保護管理法等)に抵触する可能性があり、また上述したとおり衛生面からも推奨されるものではありません。このような場合、傷ついた野生鳥獣の保護は行政機関の仕事なので、最寄の市役所・町村役場に連絡し判断をお任せするのが良いと思います。最寄の水族館・動物園・獣医さん等の専門家がいる施設に相談するのもありかもしれません。その結果、回収の必要なし、自然の推移に委ねる、という判断になってもそれはそれで合理的かなと思いますので、「弱っているアザラシがいるのを、行政に通報したけど、何も動かなかった。怠慢だ!」とはなりません。

最後に「じゃーお前が弱っているアザラシを見つけたらどうするよ?」という点に考えを記載してこうと思います。
私個人としては、日本に生息するアザラシで絶滅が危惧されるほど個体数が減っている種はいないと認識しているので、仮に海で弱ったアザラシを見かけても基本放置します。研究のため、あるいは死体にヒグマが寄ってくる可能性もあるので関係機関に情報くらいはお伝えするかも?いずれにせよ私からは個体の保護は求めません。(研究機関が研究のためだったり、あるいは行政機関がヒグマが寄ってくることを防ぐために個体を回収したり処理すると判断されたら、それを止めるものでもないけど。)

アザラシが嫌いな方、海獣による被害を受けている方などにも配慮を。

海獣たちと人間の関係はとても複雑です。わざわざ野生のアザラシを見に海に行くような方はアザラシたちに対してプラスの感情をお持ちだと思いますが、すべての人がアザラシや海獣に対して良い感情を持っているわけではありません。

例えば北海道では海獣による漁業被害に苦しんでいる猟師さんがたくさんおります。アザラシが好きな方もこの点は理解した上で、海獣ライフを送るべき、、と思います。

できればもう一歩踏み込んで、海獣と人間が共存するために自分にできることはないか、を考え、実際の行動される方が増えて欲しいなぁと思います。

野生のアザラシ観察に必要な装備

基本中の基本・防寒対策

北海道は真冬は気温が氷点下になるのが普通です。さらにアザラシの生息地は海沿いや岬付近が多く、風が強く、体感温度は恐ろしく低いことになります。真冬ではない無雪期でも急に寒くなることもあるので油断は禁物です。防寒対策はしっかり!

服の重層化はもちろんですが、防寒靴・手袋・カイロなども用意したほうが良いと思います。そして忘れがちなのが「耳」の防寒対策です。北海道の冬は10分も耳を外に晒しておくと痛くてたまらなくなります。耳あてや耳まで覆える帽子があれば良いのですが、持っていなくてもタオルやマフラーを巻くだけでも相当違うはず。これは海獣観察のための装備というより、北海道の冬の屋外活動(街歩きレベルでも)を行う時は基本のことです。

双眼鏡(野生のアザラシ観察では必須アイテム!)

野生の海獣・アザラシ観察時に必須のアイテムと個人的に考えているのが双眼鏡です。値段もピンキリですが、そこまで高額なものは必要ではなくて、5000円程度の物で十分だと思います。

とはいえ、アザラシのための双眼鏡と言っても、どのように選べばよいのかわかりにくいと思います。”選んではいけない”の双眼鏡もあるし。。。手ごろな価格(5000円以下~1万円前後)で手に入る優秀な双眼鏡についてはこちらにまとめました。

ちなみに私が使っている双眼鏡はこちら。そんなに高いものではありません。

もっとお値段お安めで”とりあえず”の物でしたら、以下のPENTAXのタンクローを推薦します。私も昔タンクローシリーズにはお世話になりました。

撮影機材について

野生のアザラシを撮影しようと思ったら、カメラに望遠機能や望遠レンズはあったほうが良いのですが、この辺りは私が解説するまでもなく、野鳥撮影の機材などを参考に、財力と本気度に応じて揃えていくものかと思います。

ドローンによる撮影はやめておくべき、、、だと思います。

手持ちや三脚機材によるアザラシ撮影はそれほど大きな問題が生じることは無いと思いますが、撮影関係でで最近問題になってきているのが、ドローンによる野生動物の撮影です。

私個人は、法的に問題がないとしても、アザラシをはじめとする野生動物へ与えるリスクや周辺への影響を考えると、ドローンによるアザラシや海獣の撮影は行うべきものではないと考えております。

ドローンは上に書いた「野生アザラシのテリトリーに入る」という観点では、手持ち撮影以上にテリトリーに入ることが容易すぎなのです。仮に撮影時に写ったアザラシはその場で気にする様子はなかったとしても、周辺の生物は?墜落した時の海洋環境への影響は?静かにアザラシ観察や自然環境を楽しんでいる他の人への影響は?、、、考えだすといろいろ思うところが出てくるんですよね。なので私はドローン撮影には手を出さないことにしましたし、ドローン撮影によるアザラシ映像や写真は評価しないと思います。

もちろん、学術調査や何らかの行政目的達成のためにドローンを飛ばしてアザラシの調査をするとか、あるいは漁業者が追い払いのためドローンを飛ばす、といったものは、個人の撮影とは線引きされるものだと思います。

(いずれドローンによるアザラシ撮影の懸念にフォーカスをしたコーナーを作りたい。。。)

事前準備~事前に集めておく情報はどのようなもの?

野生の海獣はたいてい人間目線ではなかなか行きにくい不便な場所にくらしているので、事前に生息地の情報チェックを入念に行わければなりません。観察できる場所そのものの情報はこのサイトにいろいろ載せていますが、生息地周辺がどのような場所かはご自身でも把握しておきましょう。私は最低でも以下の項目くらいは調べて行きます。これらの情報のリサーチに役立つサイトはこのページの最下部に掲載してあります。

・アクセス方法(生息地までの道・距離・所用時間・公共交通なら時刻表・レンタカーなら営業所とその営業時間)

・当日の天気情報(特に気温・風・波・潮の干満・日の出日の入り時刻)

・平年の天気(特に気温←装備・服装の参考のため)

・付近の人家の有無(人家が無い場合は食料(車の場合、ガソリンも) の準備も欠かせません。)

余裕をもった計画を立て、特に真冬の訪問時は決して無理をしないでください。生息地付近で事故があった場合、助けてくれる人はいないと思って慎重に行動してください。いや、冗談ではなくこんな場所もあるので。。。↓

↑天売島。細い農道をきこきこ自転車を漕ぎアザラシを見に行った。周囲は無人地帯。冬期は除雪されず、ほとんど人が通らないので遭難したら春まで気づかれないかも\(^o^)/

上記の情報の他にも
・周辺の観光情報・美味しいもの情報・温泉情報サーチも欠かしません(私の場合)。
魚が主食の海獣たちがうろうろしている≒魚が豊富≒港が近い≒アザラシ生息地周辺の魚介は旨いです。特に北海道は都道府県別温泉の源泉数第三位の温泉大国。アザラシを見た後の冷えた体で入る温泉もまた格別。野生の海獣を見に行く際の楽しみの1つです。

携帯電話・スマートフォンは使えなくても大丈夫な前提で

最近では携帯電話の普及に伴い、野生のアザラシを見に行っても「こんなところにも電波が届く」と感動することが多いのですが、北海道のへき地だと結構微妙なところもあります。あまりスマホや携帯電話は頼りにしないで行動できるようにしましょう。

私も普段はGoogleマップのアプリに地図を頼りにしているのですが、電波が入らなくて困ったことがあります。現地についてからスマホの地図で確かめる、、、とかそういうのは危ない。。。

海獣捜索の事前情報収集に使うサイト

かなり以前にまとめたので、古いサイトも多いのですが、ご参考まで。

気象情報の検索

気象庁|電子閲覧室(過去の20km間隔に設置されているアメダスデータと、気象台によって観測されている過去の気象統計データを最高一時間間隔で検索できます。すごい世の中になったも のです。訪問前に気温等を調べておくと便利です。)

気象庁|潮位表 (文字通り潮の干満を調べるサイト。)

Yahoo 天気情報-波予測アニメーション- (波の高さ・向きはどこの天気予報サイトにも出ていますが、ヤフーの天気情報が優秀なところは波の長 期予報をアニメーションにして波の変化を表示して直感的にわかりやすくしているところです。)

Yahoo 天気情報-風予測アニメーション- (上記の風速・風向きバージョン。)

国立天文台>こよみの計算>日の出日の入り (日の出・日没時間を検索できます。市町村レベルでの検索が可能だけどそんなに細かいのはいらないかも(^^;)

JWA-気象協会(かなり細かい現在の各地の天気情報(気温・降水量・風向・風速)が一 時間おきに更新(多分アメダスと連動している)され、天気予報(風速・風向・波高情報あり)、さらに各地の日の出・日の入り、潮の干満情報まで無料でカバーするサイト。モバイル用もあるのでアザラシ生息地の現場付近でも情報が入手できるので重宝するサイトです。

地図・ルート検索サイト

地理院地図・電子国土(日本国政府が整備している地図。二万五千分の一の地図では等高線も描かれ、岩場に接近するルートなどを検討するのに重宝します。下のGoogleマップでは3次的な地形は掴みにくいので・・・)

Google maps (航空写真と連動し現地の岩場の状況なども確認ができる野で重宝します。その他ルート検索が可能で、ご存知ストリートビューで現地の道路状況も結構わかります。あまりに細い道はストリートビューでは写らないけども。スマホではカーナビ代わりに経路検索もできますし。)

北海道内各地やアクセス道路の状況を画像で見られるサイト

北海道開発局 道路画像リンク集(北海道各地の国道に仕掛けられ たカメラから現在の道路の画像が見られるページ。道路が凍っているか一目瞭然。トップページのみリンクフリーなので、トップの上記メニュー内から「道路」 →左記メニューから「北海道の道路画像リンク集」へ入ってください。)

北の道ナビ【峠情報】 (北海 道の峠の画像・気温・風向き・路面状態が見られるサイト。厳冬期には重宝します。携帯版あり峠に差し掛かる直前まで情報をチェックできるのでそちらも忘れ ずに。携帯版へは最上部メニューにアクセス方法が書いてあります。北の道ナビトップページでは北海道内 での各市町村間の距離と時間検索もできるので重宝します。)

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