郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

年の瀬に一度きりの愚痴

2023年12月31日 | 時事感想

 今年初めて、大晦日にしたためています。

 このブログをはじめたのは、まだ母が元気な頃でした。思いもかけず長い年月が流れ、今年の一月二十一日、母が身罷りました。葬儀に続き、相続やらなにやら、慌ただしい日々が続きました。

 去年、書いていたのは宝塚の記事です。念願叶って、ご贔屓がトップになられて、忙しい中にもなんとか観劇もかなったのですが、まさに天国から地獄へ!!!

 そのことを書こうと、何度か試みてはいたのですが、やめにしました。もう少し事態が落ち着き、私の怒りもおさまってから、書きます。

 ただ一つ、私はもう、金輪際週刊誌は読みませんし、テレビのワイドショーも見ません!!!

 半分その内側に身を置いたことがあっただけに、マスコミがいかに嘘しか報道しないかはわかっていたつもりだったのですが、現実は忍耐を超えました。

 来年の大河は紫式部だそうですので、もしかしたらしばらく、新たに平安時代のことを書くかもしれません。

 ご贔屓の幸を祈るとともに、マスコミの浄化を願っています。

 最後に、みなさまどうぞ、良いお年をお迎えください。

 

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚キキ沼に落ちてvol18 Never Say Goodbye

2022年05月21日 | 宝塚

 

OGPイメージ

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。宝塚カフェブレイク★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やっ...

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

 宙組とキキさんについては、この1年でいろいろなことがありましたし、ありがたいことに、観劇もできています!
 ブログを書きたいなあ、とは思ったのですが、生で拝見できただけではなく、あまりに幸運なお席で、奇跡のような出会いをしてしまったりすると、かえって書けないものですねえ。
 それもありましたし、人事がはっきりしないと、それだけで胸が痛くなるものなんだと、沼に落ちて初めて知りました。
 今回もまだ、先のことがわからなくはあるのですが、なんかもう!!! 予想もしていなかったほどに、すばらしかったです!!! なにがって、もちろん『NEVER SAY GOODBYE 』。

宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』初日舞台映像(ロング)

宝塚カフェブレイク ★芹香斗亜がまっすぐで熱い男をレモンをかじりながら演じてるよ 20220417

 『NEVER SAY GOODBYE』は、そもそも16年前、宙組2代目トップスター・和央ようかさんと、初代トップ娘役・花總まりさんが、添い遂げ退団なさったときのさよなら公演でした。
 通常、宝塚の退団公演は、劇とショーの2本立てです。しかし、『NEVER SAY GOODBYE』は一本ものの本格的なミュージカルです。
 なぜそうなったかといえば、おそらく、なんですが、和央さんは直前の公演で大怪我をなさっていて、お医者さんには、「まだ舞台は無理」といわれていたというお話ですから、動きの激しいショーは避けて、トップお二人の歌唱力を生かしたオリジナル・ミュージカルで、となったんじゃないんでしょうか。

 作・演出は小池修一郎先生。
 音楽は、アメリカの作曲家・フランク・ワイルドホーン氏でした。
『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』などのブロードウェイ作品を手がけていたワイルドホーン氏と宝塚のご縁がここからはじまり、ワイルドホーン氏は、宝塚以外にも、『MITSUKO〜愛は国境を越えて〜』や『デスノート THE MUSICAL』など、複数の作品を日本で手がけておられるようです。
 ついでに言えば、ワイルドホーン氏と和央ようかさんは、これをご縁に、ご結婚なさっておられます。

 で、音楽がいい、というのはわかっていたのですが、スペイン内戦のお話、と聞くだけでなんだか、うーん。無理かも! と、唸ってしまったんですね。
 その昔、高校生のころ、ヘミングウェイの『誰が為に鐘は鳴る』を読もうとして、何度寝落ちしちまったことか、結局、読み通せませんでした。
 「ジョージ・オーウェルが内戦に参加して、ファシストよりもソビエトの方が嫌いになり、『動物農場』や『1984年』を書いたんだよねえ」と、断片的な知識があったがために、よけい、どうなのっ!?!?! ともなりました。
 
 しかし、再演は決まっていて、キキさんがご出演なさるわけですから致し方もなく、初演の中古DVDを買って、見てみました。
 結果、これは案外いいかもっ! と変わっちゃったんです。

 主人公のジョルジュはポーランド出身のカメラマン。フランスを中心に各国で仕事をしていて、自らデラシネ、根無し草だと自覚しています。
 ヒロインのキャサリンは、アメリカ人の社会派・劇作家。小池先生によれば、リリアン・ヘルマンがモデルだそうです。

 お話のはじまりは、1936年のハリウッド。
 日本でいえば昭和11年。 二・二六事件が起こった年です。
 
 第一次世界大戦ののち、ロシアは史上初のソビエト連邦共産主義独裁国家となり、やがて世界恐慌が起こって、不況が長引く中、ドイツではナチスドイツ、イタリアではムッソリーニのファシスト党が政権をとり、そして、スペインでは左派連合が普通選挙で勝って、ソビエトに続く社会主義のスペイン共和国が成立します。

 このとき、すでにソビエトでは、スターリンの大粛正が始まろうとしていて、地獄のような状況だったのですが、世界的には、ナチスドイツにおける、社会主義者やユダヤ人への弾圧が目立ち、ソビエトの対外宣伝が上手かったことも手伝って、多くの知識人が、左翼共産党に夢を抱いていました。

 キャサリンはあきらかに、左翼に夢を抱いたアメリカ人劇作家として描かれていますが、ジョルジュはかならずしもそうではなく、しかし、ナチスの力が強くなったことによって祖国ポーランドを失い、根無し草となってしまったという心情が、切々と歌われます。

 二人が出会ったのは、『スペインの嵐』というハリウッド映画の製作発表パーティー。
 主演女優・エレン、エレンの愛人でカメラマンのジョルジュ、エレンと共演予定の本物の闘牛士・ヴィンセント・ロメロなど、関係者が集っているパーティーに、作家のキャサリンが抗議に現れます。自分の書いたシナリオとちがい、娯楽一辺倒にされてしまって納得がいかない、というんですね。

 『スペインの嵐』は現地ロケを予定していて、しかし社会主義のスペインは世情が落ち着かないため延期、と言っていたところ、スペイン共和国広報担当のパオロから、「今度、バルセロナで人民オリンピックがあり、開会式には闘牛士たちも登場して華やかなので、ロケに取り入れてはどうか」という提案があります。

 実はこの年、ベルリンオリンピックが開催される予定でしたが、それに対抗して、バルセロナで人民オリンピック(オリンピアーダ・ポピュラール )を計画していた、というのは、史実なんです。
 小池先生は、1992年のバルセロナオリンピック開会式で、そのときから50数年前、幻の人民オリンピックに出場するはずだった老人が紹介されるのを見て、強く関心を抱かれたんだそうです。

 そして史実は、そのままで、とても劇的です。
 幻の開会式の前日、1936年7月18日の夕方のことです。
 開会式関連の催し「民俗芸能の夕べ」のリハーサルの最中、モロッコ、セビリアで反乱が起こり、スペイン全土に広がろうとしているので、オリンピックは中止せざるをえない、との速報が舞い込むんです。

 反乱を起こしたのはスペイン陸軍で、植民地モロッコにいたフランコを中心とする将軍たちが、各地の駐屯所に指令を発しました。
 当初、共和国政府は、これを甘く見ていましたし、実際、海軍と空軍は、ほぼ共和国政府に従いました。
 しかし、保守勢力が強かった南部、セビリアを中心とするアンダルシア地方では、反乱軍が勝利します。

 闘牛が盛んなのは、実は、このアンダルシアなんです。それも、セビリアとロンダ(崖の上の街として知られています)。
 18世紀、現代闘牛の様式確立に大きく寄与したのが、ロンダのロメロ一族でして、3代目のペドロ・ロメロは、ゴヤが肖像画の連作を残し、ヘミングウェイの『日はまた昇る』の登場人物のモデル、ともされています。

 

File:Francisco de Goya - Portrait of the Matador Pedro Romero - Google Art Project.jpg - Wikimedia Commons

 

 ネバセイには、キキさん演じるヴィセント・ロメロを筆頭に、闘牛士が7人出てきますが、ヴィセントをのぞく6人は、アンダルシアが反乱軍の手に落ちたと知ると、その闘牛の故郷へむけての脱出を試みます。
 その一人、真名瀬みらさん演じるファンは、はっきり「俺の生まれはセビリアだ」と歌っていますし、6人の出身地も、アンダルシアなのでしょう。

 そして、史実として、南部を掌握したフランコ反乱軍は、慰問に闘牛を催したという話です。
 一方のバルセロナ。
 ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』には、内戦勃発から時がたち、おそらくは幻のオリンピック期間に開催されるはずだった闘牛のポスターが、古びて、虚しく、貼られたままになっている、という描写があったりします。

 ネバセイにおいて、ヴィセント・ロメロただ一人、バルセロナ出身だったとされていることについては、つい、妄想が働いてしまいます。
 ロンダのロメロ一族の一人が、許されない恋をして駆け落ち。バルセロナ郊外に落ち着いて、ヴィセントが生まれた、とか。恋の相手、ヴィセントの母は、やはり、セビリア・ロマの美しいフラメンコ・ダンサーでしょう。水音志保ちゃんが好演しましたヴィセントの恋人、テレーサのように。

 ネバセイは、幻のオリンピックを、物語の中心にすえています。
 ジョルジュを含むハリウッド一行と、ソビエトの招きを受けたキャサリンは、偶然、バルセロナの開会式リハーサルで出会います。
 そこへ、反乱勃発の知らせ。ジョルジュとキャサリンは、内戦が始まったスペインに、残ることを決意するのです。

 バルセロナは、首都マドリッドに次ぐスペイン第二の都市ですが、実は、独自の言語を持つカタルーニャ(カタロニア)の中心地でもあります。
 バルセロナで左派が強かったのは、工業化が進み、労働人口が多い都市であると同時に、右派は自治を認めず、左派は認めていた、ということもあります。
 したがいまして、カタルーニャ語を駆使する詩人や劇作家をはじめ、文化人や芸術家、知識人の多くも、左派を支持していました。

 これは、ネバセイでは語られていないのですが、スペイン左派の最大勢力はアナキストで、その系統の労働組合運動(アナルコ・サンディカリスム)の拠点が、バルセロナにありました。
 アナキズム(無政府主義)は、ロシア革命の先陣をきった思想ですが、革命の進展とともに弾圧されるようになりました。
 これは、『アナスタシア』において、主人公真風ディミトリーが、「父はアナキストで収容所で死んだ」と言っていますので、宙組ファンにはなじみです。

 スペインでは、1931年に第二共和国が発足して以来、右派と左派の対立は激しく、この年の選挙で、かろうじて左派連立政権が成立したとはいえ、バルセロナのCNT(無政府主義労働者連合)の人々は、多大な危惧を抱いていました。
 これまでの右派との衝突で、将軍たちが政権をとったとすれば、自分たちの多数が殲滅されるだろうと、わかっていたからです。

 7月18日の夕刻、CNTは、カタルーニャ州自治政府首相に、武器の供与を拒まれ、翌朝にいたるまで、武器の確保に奔走します。一部陸軍下士官の協力も得て、軍の武器庫を襲い、港に停泊中の船舶、銃砲店などから、ありとあらゆる武器をかき集めて、反乱軍の進軍に備えました。
 CNTの素早い反応に、治安警備隊、突撃警備といった警察組織も、バルセロナでは、共和国政府側につきます。
 当然と言えば、当然のことでした。左派共和国政府は、選挙で選ばれた正当な政府だったのですから。

 CNTは、素早く民兵隊を組織し、翌日、人民オリンピックに出場するはずだった外国人選手たちも、その多くがにわか兵士となり、戦いました。
 『カタロニア賛歌』に、オーウェルが書いているのですが、バルセロナの民兵隊は途中まで、「上下関係のない、自由な軍隊」だったのだそうです。これは、CNTが中心になって組織したからこそ、でした。彼らは、なによりも自由を重んじていたのです。

 小池先生は、このバルセロナのオリンピック選手民兵隊を切り取り、そこへ、ただ一人のバルセロナ出身闘牛士、ヴィセント・ロメロを加えているのですが、スペイン内戦を生きた若者の群像を、リアルに描くに当たって、すばらしい照明の当て方だったと思います。

 ジョルジュはヴィセントを通じて彼らと知り合い、そしてそこに、自らの故郷を見出します。

 長くなりましたので、続きます。
 5月27日、円盤の発売を心待ちにしている、今日この頃です。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロミオとジュリエットの悲劇 VOL1

2022年02月20日 | 宝塚

 

OGPイメージ

宝塚の前田正名 VOL2 - 郎女迷々日録 幕末東西

OGPイメージ宝塚の前田正名VOL1-郎女迷々日録幕末東西ご無沙汰しました。OGPイメージ宝塚キキ沼に落ちてvol17-郎女迷々日録幕末東西...

宝塚の前田正名 VOL2 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

 去年の後半、私は宝塚スカイステージに加入しました。

https://www.tca-pictures.net/skystage/

 要するに、一日中、宝塚の番組を放送しているチャンネルでして、なぜ入ったかと言えば、もちろん、キキ沼に落ちたからです。
 全部見る時間はありませんし、どうしようかなあ、と思ったのですが、見たいものはとりあえず録画すればいい、と自分を納得させました。

   そして、去年のスカイステージでは、『ロミオとジュリエット』の過去の舞台映像が放送されていまして、その中には、これまでDVDにもなっていなかったものが、ありました。

OGPイメージ

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

「桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録後編下」の続きであり、「幕末維新はエリザベートの時代vol1」の続きでもあります。といいますか私、「宝...

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私は、上のリンクに、以下のように書きました。

 次いで「ロミオとジュリエット」ですが、これはフレンチ・ミュージカルです。演出はまたしても小池修一郎氏。
 初演は2010年星組、2011年雪組、2012年月組、2013年星組再演でした。そしてこれまた、外部でも上演しています。
 キキちゃん(芹香斗亜さん)は星組で初演を経験。明日海さんは月組で、役代わり主演を務めていました。
 明日海さんのロミオは、すばらしく美しかったそうです。

 阪急系のホテルでは、どこでもスカイステージを無料で見ることができます。  
 去年、中村様と観劇のために泊まっていたホテルで、偶然、2012年星組初演のものを見ました!
 キキちゃんは、モンタギュー家の若者の一人で、いわゆるモブだったんですが、私、目を皿のようにして見て、結局、中古DVDを買いました。

 私がスカイステージに加入したときには、ロミジュリ放送は終わりに近づいていたのですが、月組、雪組も、なんとか録画することが、できました。

 私、『ロミオとジュリエット』の音楽は、大好きだったんですが、ただ、これまでどれも、今ひとつな気がしていたのは、肝心の主演、ロミオとジュリエットが、どうも、あまりピンとこなかったからです。

Romeo et Juliette 15. Aimer (English Subtitles)

 上は本家フランスのロミオとジュリエットですが、もちろん、ジュリエットは高音がきれいに出ていますし、二人の歌のハーモニーに聞き惚れます。

 宝塚のこれまでのロミジュリで、もっとも足らなかったのは、ジュリエットの歌唱力でした。
 ロミオはそこそこ歌える方が演じているのですが、ジュリエットはなぜか、みなさん高音が出ていなくて、難しい曲なのかしら? と首をかしげていたんです。

 ところが、録画しました2011年雪組、ジュリエット役代わりで、唯一DVDにもなっていなかった夢華あみさんのバージョンを見たとき、そのすばらしさに驚きました。
 下手だからDVDになっていなかったのかと思っていたのですが………、ちがっていたんです。

 そして、主演の音月桂さんは、言葉を失って見入ってしまうほどに、ロミオそのもの、でした。

 この舞台は、まずヴェローナの広場で、モンタギュー、キャピュレット、敵対する両家の若者たちが争っているところから始まります。
 しかし、その中に、ロミオはいません。

 続く場面で、モンタギュー夫人とキャピュレット夫人が、両家の男たちの不和を嘆き、そして、ようやく、ロミオが登場します。なんと、綿毛のタンポポを手に持って、です。
 ロミオはモンタギュー家の跡取りですが、争いごとは好まないタイプで、その美貌ゆえに女たちに追いかけられている様子です。しかし、彼が夢見るのは真実の恋。運命の相手をさがしています。
 同じ舞台上、階をちがえて、ジュリエットの居室。
 16歳のなにも知らない乙女は、しかし、運命の恋を予感しています。例え死んでも、けっして離れることのない絆で結ばれた相手が、現れるのだと。

Romeo et Juliette 3. Un Jour (English Subtitles)

 まだ出会っていない二人は、「いつか」という歌のデュエットによって、その真情を吐露するんです。
 これがけっこうな大ナンバーなのですが、音月さんと夢華さんの歌は、フランスの舞台にも負けないほどに、心地よくも、美しいものでした。

 次いでキャピュレット家には、一人娘のジュリエットへの求婚者・パリス伯爵が現れ、身分もよく金持ちの求婚者に、両親はすっかり乗り気ですが、ジュリエットは、「愛のない結婚はいやだ」と反発します。
 一方、モンタギュー家の若者たちは、ロミオもまじえて、「世界の王」を歌い踊ります。

Romeo et Juliette 6. Les Rois Du Monde (English Subtitles)

 日本語の歌詞は、ほぼ、次のような内容です。 
年寄りが寝ている間に、生きている今を感じ、愛しあいたい。俺たち若者は、権力者に手を貸したりしない。新しいルールは俺たちがつくる

 街頭デモだとか、集団での暴走だとか、大人たちに反発し、無茶ぶりを楽しむぞ!、という、時代を超えて、若者たちに通じる歌です。

 歌が終わり、マキューシオの誘いで、その夜、ベンヴォーリオとロミオは、敵対するキャピュレット家の仮面舞踏会に、乗り込むことになります。

 そして、一人になったロミオが歌います。

Romeo et Juliette 7. J'ai Peur (English Subtitles)

 日本語では「僕は怖い」という題名の歌です。

 いまぼくは、兄弟より親しい友とともに笑い、遊び、青春を駆けぬけている。
 しかし、いつか来る死の影が、ぼくらの背後にしのびよる。
 僕は怖い。死ぬのが怖い。
 放蕩と無頼に明け暮れた先に待っているのは、明るい夜明けじゃない。
 いつか来る終わりが、ぼくには見えるんだ。

 おおよそ上のように歌われる、とてもきれいな歌なのですが、実のところこの歌は、事件が起こった後に再び、絶望の中でも歌われます。 
 正直、音月桂さんのロミオを見るまで、なぜロミオは、ジュリエットと出会う前にこの歌をうたうのか、いまひとつ、必然性を感じていませんでした。
 どなたのロミオも、分別くさい感じに見えて、友を憂える予言なのかな、と聞き流し、ストレートに胸に響かなかったんです。

 それが………。
 音月さんの歌を聞いて初めて、ああ、ロミオは青春の光と影をリアルに見る人なんだ!と、納得がいったんです。

 青春のただ中にいるからこそ、死をリアルに感じることって、ありますよね。
 年をとるということは、ある意味、鈍感になることですから、死の深淵がぽっかり口をあけていても、あまり真剣に受け取らなかったりします。
 一途に恋に死ぬロミオという若者は、感受性が鋭く、影を知っている人であってこそ、リアリティをかもしだせるんだ、と、音月さんのロミオに、心が震えました。

 そして………。
 わからないのは、なぜ、こんなにもすばらしい、音月さんと夢華さんの『ロミオとジュリエット』が埋もれてしまったのか、ということでして、次回は、そのことを取り上げてみたいと思います。
  

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚の前田正名 VOL2

2022年02月19日 | 宝塚

 

OGPイメージ

宝塚の前田正名 VOL1 - 郎女迷々日録 幕末東西

ご無沙汰しました。OGPイメージ宝塚キキ沼に落ちてvol17-郎女迷々日録幕末東西宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続き...

宝塚の前田正名 VOL1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

OGPイメージ

『Samourai』 - 宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

1

宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

 

 原作の題名は『巴里の侍』ですが、宝塚の舞台は『Samourai(サムライ)』という題名です。

 幕開きは、歌舞伎の連獅子のような舞踏。トップの音月さんを中心に、2番手、3番手の男役さんが舞います。
 本筋に関係のない舞踏ですが、サムライらしさをあらわそうとしているのでしょうか。悪くはない感じです。

 次いで、前田光子とアイヌの民族衣装を着た娘さんが出て来て、ともに『モン・パリ』を歌い出したのには、驚きました。

モン巴里 ~宝塚少女歌劇団花組~

 『モン・パリ』は昭和2年(1927)、宝塚花組で演じられた、日本初のレビューなんです。
 この翌年、月組、雪組で再演されますが、雪組の舞台には、若き日の前田光子、文屋秀子が立っていたんです。

https://www.akanainu.jp/culture/maeda_mitsuko/

https://www.ippoen.or.jp/about/m_mitsuko.html

 文屋秀子さんが、正名の次男と結婚して前田光子となりましたとき、すでに正名くんはこの世の人ではなかったわけですから、直接明治初年のパリの話を聞いたはずもないんですが、「めずらしき外国(とつくに)の うるわしき思い出や」という歌詞が胸にしみ、平成の雪組の舞台に光子さんが登場していたことに、私は感激しました。
 光子さんにお子さんはなかったそうですが、夫の父・正名から受け継いだ、北海道の前田一歩園を守り、自然保護に尽くし、アイヌ文化を守ることに尽力を惜しまなかったタカラジェンヌが、舞台に登場したわけですから、これはもう、とてつもなくつまらない原作を離れて、いい話になっているかもしれない、と見入ったのですが。

 音月桂さんは、とても素敵でした。
 ものすごくキラキラした、和装の似合うお顔立ちですし、お歌もお芝居も、すばらしいんです。
 ただ、お話がやはり、まったくもって、おもしろくありません。

 まあ、ですね。普仏戦争の時のパリのモンブラン邸を、わずかな史料をもとに、あれこれ想像し続けていた私が見るから、よけいにおもしろくなくは、あるのでしょうけれども。

 史実を離れるのは仕方がないとしましても、なにより、ちがうだろう、と感じましたのは、宝塚としては肝心のはずの恋の描き方が、無茶苦茶、どーでもいい感じになっていることです。

 正名くんのお相手は、モンブランが拾ってきて育てているということになっています架空のフランス娘、なのですが、恋愛しているのかどうかさえ、はっきりとはわかりません。
 どうせ史実は無視しているんですから、もう少し劇的に、恋の相手は、元会津藩か元旗本かの娘で、薩長を恨んでいて、日本を飛びだしパリに来ていた、とか。

OGPイメージ

普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol5の続きです。巴里の侍(ダ・ヴィンチブックス)月島総記メディアファクトリーまたちょっと「巴里の侍」に話を返します。こ...

普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上のリンクに書いておりますが、実のところ、函館戦争には、数名のフランス人が、 旧幕府側の助っ人として参戦していまして、局外中立違反の外交問題になりかねませんでしたので、フランス公使は、自国の軍艦を函館に送り、五稜郭降伏寸前に脱出させます。
 彼らのうち、本国まで送還されましたのは、陸軍のジュール・ブリュネ大尉、海軍見習い士官だったアンリ・ポール・イポリット・ド・ニコールと、フェリックス・ウージェーヌ・コラッシュの3人なのですが、当然のことながら、この3人は普仏戦争に参加し、ニコールは戦死しました。

 五稜郭には女がいた、という伝説もあるくらいですから、元幕臣の娘が箱館戦争に参加していて、兄か誰かが、フランス軍艦に託して、パリに送り出し、その娘はパリで正名くんに出会って愛しあった、というのは、どうでしょうか。
 しかし、なにかの事情で結婚はできないで、それぞれに子孫を残し、娘さんの孫が、お祖母さんが大切にしていた日記を読んで、阿寒湖のほとりに前田光子さんを訪ねてくる、とか。
  ともかく、どうにでも、劇的にする方法は、あったと思うんですね。

 それと、原作や劇中で語られますサムライ精神を、尚武の個人的勇気と解釈しますと、実のところ、箱館戦争に参加しましたフランス人たちは、義侠心と勇気において、当時の大方の日本人よりも勝っていました。

 あと、どうにも、パリ・コミューンを礼賛しすぎなんですね。
 ブリュネ大尉は反対陣営ですし、コラッシュにも、参加した気配はありません。

 まあ、ですね。
 モンブラン伯爵は、どうもフリーメイソンだったみたいですので、反コミューンではなかったでしょうし、モンブランと親交があって、やはり幕末からの日本通だったレオン・ド・ロニーは、父親の代からの共和主義者であったようなんですね。
 しかし、コミューンには粗暴な側面があり、カトリックの聖職者を殺したりもしていますので、愛国、よりは、国民の分列を促進するものでした。結局、モンブランはもちろん、ローニーもコミューンに参加はしていませんし、国を愛しているからコミューン! みたいなこの原作と劇のいいかげんなのりには、私は到底、ついていけません。

 だいたい、モンブラン伯爵は、フランス貴族であると同時に、インゲルムンステルを根城とするベルギー貴族でもあります。
 インゲルムンステル男爵領は、フランス王朝のドイツ人部隊を率いていましたドイツ人のプロート家が開拓したもので、跡取りがいなくなり、フランス革命の後、モンブランの叔母がプロート家に嫁いでいたがため、父親が受け継いだわけなんです。
 したがいましてモンブランは、プロシャ商人も出入りさせていたようでして、フランス人意識がなかったとは言いませんが、どういった形のフランス人意識であったのか、ちょっと複雑です。

 やはり、上のリンクに書いているのですが、登場人物の度会晴玄は、あきらかに渡六之介(正元)がモデルです。
 宝塚では、早霧せいなさんが演じておられて、とてもいい演技を見せてくださいますが、パリ・コミューンに参加したあげくに、戦死しちゃうんです!!! そんなバカなっ! としか言いようがありません。
 いや、私、渡六之介氏のご子孫からご連絡をいただき、ご本までいただいていたので、もしおもしろければ、DVDをプレゼントしようかなあ、と思いついていたのですが、これじゃあ、ねえ。
 なんでも、作・演出の谷正純先生は、皆殺しの谷、と呼ばれておられるんだそうですが。

 現雪組トップの彩風咲奈さんは、相当にお若い頃ですが、ジャーナリストで、けっこう目立つ役をもらっておられます。
 しかし、もう2期お若い、現月組トップの月城かなとさんは、どこにおられるのやら、画面で見つけることは困難でした。

 ともかく、です。次回は、正名くんを演じられました音月桂さんについて、ちょっとお話してみたいと思います。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚の前田正名 VOL1

2022年02月18日 | 宝塚

ご無沙汰しました。

OGPイメージ

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。宝塚カフェブレイク★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やっ...

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

の続きであり、下の続きでもあります。

OGPイメージ

普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol9の続きです。なんといえばいいのでしょうか。前田正名が主人公だというので「巴里の侍」(ダ・ヴィンチブックス)を読み、...

普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

 


 なんというんでしょうか。そもそも、十数年前にこのブログを書き始めましたのは、モンブラン伯爵についての情報が欲しかったためですが、現在、かなりの情報は得ていまして、このブログにまとめると同時に、ウィキペディアにも書いております。

シャルル・ド・モンブラン - Wikipedia

 で、下のリンクに書いておりますように、モンブラン伯爵は、駐仏日本公使代理(領事ですかね?)に就任して、離日するとき、前田正名を伴っていますので、私は早い段階で、明治初期の薩摩藩フランス留学生である正名くんを知り、司馬遼太郎氏がエッセイで、普仏戦争と正名くんについて書いていることも知りました。

OGPイメージ

龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

一昨日、『剣豪商人』の載っていた本を探してまして、司馬遼太郎氏の歴史エッセイ本の目次を、次々にめくって見ていたんです。そうしましたら、『余話...

龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の記事を書きまして、ほぼ5年後、2011年の1月、コメント欄にお客様が見えられて、前田正名を主人公としましたライトノベル『巴里の侍』(月島総記氏著)が発刊されたことを教えてくださいました。
 そして、その1年後に書きましたのが、下の記事です。

OGPイメージ

普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

一応、モンブラン伯の長崎憲法講義の続きでしょうか。これ以降、前田正名のことをまとめて書いたことは、なかったと思いますので。あけましておめでと...

普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 幕末友だち(現在は宝塚友だちでもあります)の中村様は、私より先に『巴里の侍』を読まれていまして、「つまらない」とのお話でしたので、結局、私は読まなかったんです。
 それが、なぜ読んだかと言いますと、上に書いています通りに、宝塚でやることになった!と、聞いたためです。 

 当時、私は、一度も宝塚を観劇したことはなかったのですが、正名くんは実にいい男でして、もしも小説を読んで少しでも見所があると思いましたら、見に行っていたかもしれません。
 正名くんの写真の中で、もっとも若くていい男!に見えますのは、集合写真ですが、明治6年(1873年)3月のパリ、帰国する大久保利通を見送るため集まった、在パリ薩摩人の中で笑っているものでして、当時23歳。ネット上で可能ならばリンクを張ろうと思ったのですが、無理でした。
 結局その後、私は中村様とともに、桐野利秋が主人公になった!というので、宝塚を初観劇しました。

OGPイメージ

桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

桐野利秋、宝塚登場!星組公演『桜華に舞え』の続きです。といいますか、行ってまいりました。宝塚へ。突然仕事が入ったり、その他もろもろで、ブログ...

桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 それで、ですね。なんでいま突然、前田正名? 
 ということなんですけれど、下、正名くんが主人公の宝塚公演DVDを、買って見たんです。

OGPイメージ

『Samourai』 - 宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

1

宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

 

 いまさら、10年も前の公演のDVDをなぜ? ということなんですが、答えの一つは………。
 主演の音月桂さんが、すばらしいトップさんだったと、いまさらながらに知ったから、です。

 そしてもう一つは、先月、東京までミュージカル観劇に出かけたんですが、空き時間、中村様にお誘いいただき、前田正名のお墓に詣でたからです。

 東京タワー近くにある増上寺の別院・妙定院ですが、徳川家に縁の深いこのお寺に、なぜ正名君のお墓があるのかは、わかりませんでした。

 次回、さっそく、音月桂さん主演、『SAMOURAI(サムライ)』の感想を。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする