ee47673d_dib中村哲さんの訃報に接し、様々な記憶が鮮やかに甦る。20代前半、福岡に暮らしていた頃ペシャワール会に出会った。事務局長のFさんとは行きつけの飲み屋が同じで、アフガンやパキスタンの話を聞いて大きな刺激を受けた。会員にもなり、甲斐大策さんの素敵な絵が表紙の会報を楽しみに読んだ。それがその後、中央アジアや中東イスラム圏の人々をテーマに仕事をする大きな契機にもなった。
世界中の紛争地でNGOを取材してきたが、ペシャワール会のように地元に密着した志の高いNGOを見たことがない。緊急支援中心の欧米型NGOが世界的な関心がひと段落するとさっさと撤退していくのを横目に、ペシャワール会は現地の人々と汗を流し、長年泣き笑いを共にしてきた。2008年にスタッフの伊藤和也さんが殺害されて以降は、日本人スタッフを全て撤退させ、ただひとり中村さんだけが現地で活動していると聞いていた。
中村さんと最後にお会いしたのは2007年、もうずいぶん前だ。講演にいらした那覇で面会した。「カブールはもう夜はタリバン支配ですよ」と、現地の治安が急速に悪化していることを懸念されていた。また、自衛隊のイラク派遣やインド洋での給油活動が、対日感情に影響を与えることも憂慮されていた。
日本が世界に誇れる数少ないサムライのひとりが世を去った。中村さんはもういない。長い間お疲れさまでした。まずは天国で安らかにお眠りください。
(写真は会報表紙に載っていた甲斐大策さんの絵)