2011年2月。
テンポラリースペースで行った展覧会「雪調(ゆきしらべ)」
雪がとけ 水になり 氷となる。降り積もった雪はその形をもとに戻すことはない。雪の調べを聞きながら僕たちはやがて春を迎える。細い一輪挿しに雪を詰め、
それを溶かし、
夜の寒さで氷にして、また雪を詰めて、溶かして凍らすの繰り返しをしようと思っていた展覧会。
初日の夜から高熱を出し、ほとんどその作業が出来ず、体が動かないまま気合いで乗り切った一週間だった。
最終日、いつもだったらみんなと会場でワイワイと飲むんだけど、そんな気分にもなれず一人でぼんやりと飲んでいると二人の男が現れた。
ピエールとヤギ。
持って来てくれたタンカレーで乾杯するも大酒飲みたちは、あっという間に空けてしまう。
展覧会でいただいたワインを空け、くだらない話で盛り上がる。
ピエールは俺が出会った頃、まだ矢作という名前だった。
その時は、酔っ払ったらピエールになると言っていた。
すごくふざけた事を真面目な人たちと手を組み、楽しい街を作る仕事をしていた。
ダイスケ!女を狙うならクラスで一番可愛い子じゃなくて、学校で一番可愛い子を狙え!
と言う格言をもつ男でもある。
そんなピエールはいつの間にか仕事を辞め、ドライフルーツ屋 マルシェ・ド・ピエールを始める。
その頃から、矢作はピエールになった。
ヤギはアコーディオン奏者で、大飯食らい。
いつもアイデア豊富で前のめりに喋る。
そのアイデアの大半は突拍子もないが、たまにとてもいいアイデアがあったりもする。
ほとんどがふざけているけど。
この晩にヤギが弾いてくれたのはなんだったのかは覚えていない。
夜の灯りに照らされていたヤギはキレイだった。
あの時、俺たちは何を話していたんだろう。
ヤギはきっとまた下らない事を一生懸命話していたんだろう。
ピエールとヤギは、すでに亡くなってしまった。
そういえば、二人とも俺の冬の展覧会後に亡くなっている。
今回、札幌大丸でやるにあたり「酒と花の日々。」と言うタイトルはすぐに決まった。
しかしDM用の写真がイマイチでどうしようかと悩んだ時にふと思い出したこの写真。
二人とも花のようだったし、酒好きだったし、お盆だし、ちょうどいいと選んだ。
二人とも生きていて今回の試飲会に来てくれたなら、
ピエールはガバガバ飲むだろうし、
ヤギは売場でアコーディオンを弾くだろうし、
考えたくねーなー
お盆だから帰って来ていて、影から参加していたかもな。くらいがちょうどいい。
そう言えば、隣の催事場でやっていたスヌーピーの催事、メリーゴーランドのBGMかなんか分からないけど、
ずっとアコーディオンの音が鳴ってたな。
会期中は、朝から晩までこの音楽はきついな〜と思っていたけど、ヤギが来ていたなら仕方ない。