テーマ:呪術廻戦(325)
カテゴリ:呪術廻戦
pixivからの再録です。
原作漫画主人公の師となる五条先生とその“唯一の親友”の、学生時代のお話。 pixiv同様、時系列バラバラですみません。 この話は高専生(高校)2年の12月の設定です。 「呪術廻戦」をご存知ない方の為の予備知識。 ・呪術高専:呪術師の卵達が学ぶ高等専門学校。 東京の外れ(山ん中?)にある。一応4年制(当時は5年かも)。 ・五条悟(ごじょうさとる):このシリーズの主人公。 原作漫画では主人公・虎杖(いたどり)達の担任教師。 原作中では現時点で最強呪術師。常に両目を隠している。 ・夏油傑(げとうすぐる):シリーズのもうひとりの主人公。 呪術師大好き人間で、呪術師以外は人に非ずがモットー。 原作漫画では、非術師虐殺を目論み高専から家出。 数年後、五条の敵として現れる。 ・おばちゃん:高専近くのスーパー店員。オリジナルキャラ。 では、どうぞ。 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 高専最寄りのスーパーに、呪霊が出た。 最寄りと言っても、何しろ山奥にひっそりと建てられた呪術高専、駅に続く坂道をずっと降りたその先の住宅街の中だけど。電車で出かけた後によく立ち寄る、高専関係者馴染みの店である。 その日、寮にひとり残っていた五条悟は、呪霊退治に駆り出された。年の瀬も近付く冬の午後、制服の上に着込んだコートの襟を立て、悟は店に足を踏み入れた。 待っていたのは、店長ではなくパートのおばちゃん。現場はなんでも、彼女の担当する冷凍食品のバックルーム・・・つまり冷凍庫だとか。品出しの為に冷凍庫を開けたところ、さほど広くも無い10畳ほどの冷凍庫の片隅にソレはいたそうだ。 蹲り、ぼぉ〜っとこちらを眺めて。 案内された店の奥の冷凍庫を開ければ、一番奥にソレが確認できた。人型をしているソレは、だが明らかに人とは違い、薄気味悪いゴリラのような顔をしていた。繁々と見ていた悟だが、頭上から吹き出す冷気に耐えかね、一度扉を閉めた。コートを着ていても、かなり寒い。扉の上の温度計はマイナス25度を指していた。こんな真冬にこんな仕事を・・・もしや上層部の嫌がらせか!? 「あれ、一体なんなのかしらねぇ?」 コートの襟を立て直した悟に、おばちゃんが呑気に問う。見れば、おばちゃんは普通に店の制服姿だ。長袖ではあるが、薄い水色の綿生地の上着に濃い緑色のエプロン。その格好でここに出入りしているのか?悟は一層の寒気を感じたが、おばちゃんには気取られぬよう質問を返した。 「心当たりは何か?」 「う〜ん、そうねぇ・・・」 「ここで誰か亡くなったとか」 あっては困るが、一番最初に考えつくことだ。 「5分くらい閉じ込められた人はいるけど無事出てきたし、死んだって話は聞かないわねぇ」 マイナス25度に5分・・・それは無事と言えるのか、どうなのか? 疑問を感じつつも、仕事モードに入る悟。再び冷凍庫の扉を開けると、やはりゴリラ面はそこにいた。 「あんなのがいたら、仕事になりませんよね?すぐ祓います」 ところが、おばちゃんは笑って言った。 「それがねぇ、最初はびっくりしたし怖かったんだけど、見ないふりして仕事してたら消えちゃったのよねぇ」 「は?」 「あれ、無視してると消えちゃうの」 ケロリと言い放ったおばちゃんに唖然としつつ、悟が呪霊に視線を戻すと・・・ なるほど、ソレは消えていた。 「ね、消えたでしょ?」 消えてしまっては祓えない。悟は一旦扉を閉め、三度冷凍庫を覗き込んだ。 いる。 「ね〜、また出た」 おばちゃんの声に気を取られた一瞬の隙に、ゴリラは消えた。扉を閉めまた開ける。 いる。 「それにしてもキミ、背高いね〜」 ゴリラが消え、扉は閉まり、また開く。 いる。 「ウチの子ももっと身長欲しいって言うのよね。女の子だからそんなにデカくなくていいんだけど」 消える。閉める。開く。 いる。 「キミ、イケメンだねぇ。学校でモテるでしょ?」 消える・・・・・・ 「すみませんッ!!!静かにしてくださいッッッ!!!!!!」 何度目かの後ようやくゴリラを祓い終えると、悟はすっかり冷え切っていた。冷風吹きすさぶ(とは言い過ぎだが)マイナス25度の中では、普通のコートは役立たずだ。 「ありがとね〜、はい、これ私からのお礼」 帰り際、おばちゃんに小さな買い物袋を手渡された。 「お友達と食べてね」 中には、ブルーのパッケージに先程のゴリラによく似た男の子の絵が描かれた、氷系棒アイスが入っていた。 「◯リ◯リくん・・・・・・」 冬の暮れは早い。悟が寮に着く頃にはすっかり日も隠れ、東京では珍しい雪が舞い始めていた。寮の部屋の前で、悟は傑に会った。 「遅かったね、寒かっただろう」 口を開くことも億劫な程に冷えていた悟は、無言のまま傑の手に持っていた袋を押し付け部屋に入った。 「何これ・・・◯リ◯リくん?この寒いのに?」 「冷凍庫と格闘してきた」 一瞬触れた悟の手の冷たさに顔をしかめた傑は、一緒に部屋に入ると棚から勝手にタオルを取り出し、アイスを持つのと反対の手で悟に突き出した。 「夕飯の前に風呂に入っておいで」 入寮者数の割に広い風呂にゆったり浸かり悟が部屋に戻ると、傑がドライヤーを手に出迎えた。 「どうしたのさ、それ」 「家入に借りた」 傑は悟を床に座らせると、自分は立ったままドライヤーのスイッチを入れた。途端に強い風が悟を直撃した。 「冷たッ!!!」 慌てて傑が風を止め、再度スイッチを入れ直す。やはり冷たい風が出た。 「あれ、変だな。壊れてるのかな?」 首を捻り何度もスイッチをオンオフする傑の前で、悟が大きく身震いした。 くしゅんッ。 風邪ひいた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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