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もう、絵はこりごり!?


 30代の時、毎日絵を描いていた。展覧会では100号の大きな絵を並べ、そこそこ褒められた。けれど、絵は売れなかった。今思えば、障害者という劣等感を払しょくしたい一心だった、
 父からは「道楽息子」と叱られた。幼少から体が不自由だった私の将来を一番心配していた。障害はあっても、お金の稼げる仕事に就く。そんな人並みな生活を望んでいたのに、過去の就職の苦い経験が、再就職を思いとどまらせていた。
 その反省もあって、画家気取りだった30代の日々を、もう一度やり直したい。ただ、他の何をしていたとしても、飽きっぽい私のことだから、続いていたかどうか……。
 今は通信大学で勉強し、ネットで情報をチェックしては、美術館にも足を運ぶ。いろいろなことに興味を持つことが増え、感じ方も変わってきた。やり直したいという日々も、現在と地続きなので、意味がなかったとは言えない。むしろ、そう思うのはナンセンスだ。
 しかし、手狭な物置にある「あの頃の絵」を処分しながら、「もう一度やり直せたら」という思いがよぎる。人並みに、仕事も家庭も持てたかもしれないと、想像してみたりする。

(上毛新聞「ひろば欄」2020/3/20付)
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