このところの公園の様相が一変している
公園入り口付近は
《ドナ》に追い出された《くろす》、その妹の《しゃっぽ》、そして《まつこ》が暮らすこととなった
乱暴者の《ドナ》によって公園入り口に追われた《くろす》は当初ひとりぼっちであったが
《まつこ》が《くろす》と仲良しになってくれて一緒に過ごすようになり
その後姉妹の《しゃっぽ》もここに移動して来た
そして公園奥の広場には《ドガ》《ドヤ》、そして時々現れる《ドナ》たちきょうだいのエリアとされた
《マミーエプロン》の子である彼らは、元々ここの奥の別のエリアからやって来た猫たちなのだ
そして《はるこ》と《こだこん》は本来の住処に帰された
というわけで、公園は本来の公園組である《ちずのすけ》、《すがりつきにぃ》、《つんでれ》、《もりだくさん》、そして《たてがみ》の縄張りとなった
《かぎすけ》、《どなお》、《どなこ》ら、独り立ちをした仔猫たちは公園組と暮らしを共にすることを許された
ちなみに12歳になる《もどきちゃん》は公園の外の猫だが
この辺りに住んで長いし、お年より優先ということで公園の行き来は自由となっている
若い猫たちに厳しい態度で臨み、これらのエリアを取り決めたのは《たてがみ》だ
おかげでごちゃごちゃになっていた公園は秩序のよい猫員整理がなされた
公園奥の広場には《キリットくん》が眠っている
《キリットくん》は公園組だったが、よくこの広場で《すがりつきくん》や《オッドアイタくん》と遊んでいた
今ここでは《ドヤ》たちが遊んでいる
3にんの仔猫たちも遊びに来る
《キリットくん》は心のやさしい猫で
まだ公園で暮らしていたある年の11月の終りのこと
秋生まれの小さな仔猫が路頭に迷って公園に辿り付きいた
この身体では冬は越せないと思い、保護しようとしたのだがなかなか捕まらなかった
そんなある夜、公園の茂みにその仔猫を胸に抱いて眠る《キリットくん》を見た
《キリットくん》は行き場のない小さな仔猫を食事時間には連れ出してご飯を食べさせ、夜は胸に抱いて冬の間を温め続けた
そうして仔猫は元気な姿で春を迎えた
その後も何回か同じことがあった
寒い夜にさ迷ってきたいろんな仔猫を抱えて眠る《キリットくん》の姿を、私は度々目撃したものだ
今、この広場で遊ぶ仔猫たちを、《キリットくん》は嬉しい心で見守ってくれている気がする
公園には《オダギリくん》や《くろまるこちゃん》が眠っている
そうしてどこかに《サンボ》や《おかん》や・・ そしてもっといっぱいの仲間たちがいるはずだ
この10年、いろんなことがあった
それのすべてを見てきた現在の長老組
その歳は既に12~14歳
彼らはここでは随分と虐められてきた
虐待事件も、毒殺事件もありったし
ウィルスが蔓延して数十にんもの猫たちが公園や果樹園で命を落とした
そんな怒涛の日々の中で
今日まで生き残ったのが《ちずのすけ》、《もりだくさん》、《すがりつきにぃ》、《つんでれ》、そして今年亡くなった《オダギリくん》だった
数年前、公園の のらさんたちはやっとここに住む権利を勝ち取った
それは長い道のりだったけど
今は虐める者もやって来ず、寧ろ暖かい気持ちで接してくれる人が増えた
いろんなことがあって、気づくとみな歳を取ってしまっていた
《たてがみ》はそれまで苦労続きだった年寄りたちにゆっくりとした生活を送らせたかったのかな
お年寄り組
《ちずのすけ》
《つんでれ》
《すがりつきにぃ》
《もどきちゃん》
《もりだくさん》
老猫と仔猫の公園組 右端は《たてがみ》
行く宛てのない仔猫の《たてがみ》が不安を抱えてこの公園にたどり着いた時
黙って迎えてくれたのは《オダギリくん》と《ちずのすけ》だった
《オダギリくん》は、子供の《たてがみ》に向かって 『出て行け』、と言った《つんでれ》を制止した
《オダギリくん》の病気が進み、あまり動けなくなってくると
「《オダギリくん》を頼むね」 という私の願いを当然のこととし
《たてがみ》は日々を彼に寄り添い続けて過ごした
《たてがみ》 《オダギリくん》のお墓の側で
新しい秩序の中で
みな元気に冬を越してくださいね