『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』の感想。ACTで悪循環から抜けて価値ある行動をする

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』を読みました。

第三世代の認知行動療法と言われているACT(アクト=アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の本です。

原書はAmazonで498件のカスタマーレビューがついており、30か国で読まれているロングセラーとなっています。

ACTの本では、前に『悩みにふりまわされてしんどいあなたへ』を読んだことがあります。

おおよそのやり方はわかったのですが、セルフヘルプブックとしてやさしく書かれていたため、本質をつかみきれていない気がしていました。

本書を読んで、なるほどそういう技法だったのかと理解できました。

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幸福の罠とはなにか

本書の原題は『The Happines Trap』、意味は「幸福の罠」です。

「幸福の罠」とは、幸福を追い求めるあまり思考や感情をコントロールしようとしすぎて、代償が過剰になり幸福ではなくなることです。

まあ要するに、空回りというやつですね。

邦題の『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』を補足すると、『(本当に)幸福になりたいなら(無理に)幸福になろうとしてはいけない』といったところでしょうか。

私たちは幸福を感じるために自分の感情を制御しようと必死になる。だがコントロール戦略には三つの大きな欠点がある。

  1. 多くの時間とエネルギーを使う割に、長期的には効果が薄い。
  2. 追いやった思考や感情はすぐに戻ってきてしまうため、自分は愚かで不完全で弱いと感じてしまう。
  3. 短期的に不快感を封じ込める戦略の多くは、長期的には生活の質を損なう。

こうした望まない結果によりさらに不快感が生まれ、人々はさらなるコントロールを試みる。まさに悪循環である。(37~38ページより)

コントロールをしようとして悪循環に陥るパターンは、強迫性障害と同じです。

大切なのは悪循環に気がつき、抜け出すこと。そのためのステップが書かれています。

ACT(アクト=アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは

ACTはAcceptance and Commitment Therapy。

アクセプタンス(Acceptance)は受容・受け入れる、コミットメント(Commitment)は関わり・公約といった意味があります。

筆者はACTのステップを頭文字に重ねて以下のようにまとめています。

A:accept=思考と感情を受け入れ、現在に生きる。
C:connect=自分の価値とつながる。
T:take effective action=効果的な行動をする。

ACTの6つの行動原則

ACTの6つの行動原則があり、その一つ一つを説明する形で進んでいきます。

ACTは六つの行動原則からなり、その六つが協力しあって人生を変えるようなものの見方を育てる。心理的柔軟性が大きくなるほど苦痛をもたらす思考や感情により上手に対処でき、人生を豊かで意味あるものにするための行動をより効果的に行うことができる。(44ページより)

  1. 脱フュージョン
  2. 拡張
  3. 接続(つながる)
  4. 観察する自己
  5. 価値の確認
  6. 目標に向かっての行動

最初の「脱フュージョン」が肝となるのですが、これはぜひ日本語に訳して欲しかったです。

フュージョン(融合)が馴染みのない英語なうえに、”脱”がついて反語となっているのでわかりにくい。

接続にだけ(つながる)がついているのも謎でした。いやそっちはわかるから…。

1.脱フュージョン:思考は単なる物語である

フュージョンとはFusion=融合という意味。思考と真実を混同してしまっている状態を指します。

脱フュージョンは、融合を脱するので分離といった意味になりますね。

ACTでは、思考は頭の中でつむいだ言葉、物語だとしています。

ACTでは、思考が事実であるかは重視しない。それよりずっと大切なのは、その思考があなたの助けになるか否かだ。助けになる思考であれば、注目するだけの価値がある。そうでないなら、それを気にかける必要がどこにあるだろうか?(60ページより)。

脱フュージョンは、思考は思考、事実は事実として分けて考えられるようにすることです。

2.拡張:不快な感情の居場所を作る

拡張は、感情を排除するのではなく、心の中に感情のための居場所を作ってやることです。

不快になったとき、私たちは感情を追い出そうとします。

不快な感情をあっていいものとすれば、変えたり追い払ったりしようと戦う必要もなくなります。

3.接続:「今・ここ」に集中する

接続は、自分の経験している「今・ここ」に完全に集中することです。

これはマインドフルネスのテクニックでもあります。

4.観察する自己:思考や感情を観察する視点

観察する自己は、自分の思考や感情を観察する視点です。

ここは少し難しく哲学的でもあります。私は「一歩引いた客観的な自分」といったところかなと思いました。

5.価値の確認:本当に大事なものを明らかにする

価値の確認は、心の奥底で望んでいること、本当に大事なものは何かをあきらかにすることです。

自分が大事にしている「価値」がわかれば、行動への動機づけになります。

6.目標に向かっての行動:価値と一致した効果的な行動をする

目標に向かっての行動は文字どおり、価値に沿った行動をすることです。

価値を書き出す、小さくて簡単な目標を設定する、短期・中期・長期の目標を設定するといったステップが書かれています。

価値のない思考にとらわれないための脱フュージョン

ACTの魅力は、思考と事実を切り離す「脱フュージョン」にあるでしょう。

強迫性障害のときは、頭の中をぐるぐると回る嫌な考えに悩まされていました。その苦しみは、思考が現実になったらどうしようという不安によるものです。

思考をただの思考として重視しないようにできれば、ずいぶん楽になります。

本書では脱フュージョンのためのテクニックがいくつか紹介されていました。

強迫性障害の治療で使われているものもあり、ああ、あれはACTの手法だったのかと思いました。

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』の感想

残念なのは、文字が小さくてフォントが細く、レイアウトにメリハリが無くて読みづらい。読むのに若干の根気が必要となります。

ただ、内容はとてもよかったです。

私は同じACTの本『悩みにふりまわされてしんどいあなたへ』では、ACTについてよくわからない部分があったのですね。

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』は、その疑問を埋めてくれました。

ACTとはなにか、ACTでいう言葉・物語とはなにかという点には、十分に応えてくれました。

ざっくりまとめると、「無駄に考えることをやめて価値のある人生を歩もう」という、認知行動療法の集大成のようだと思いました。

認知行動療法というとコラム法が一般的です。

シンプルで良い反面、認知を広げる過程で基準とする価値観がわからなくなり、挫折する人も多いようです。

ACTはステップが多めではありますが、目的本位という明確さが良いですね。

森田療法を認知行動療法に落とし込んで、ブラッシュアップさせたような治療法だと思いました。

本書ではACTのやり方が丁寧に説明されています。

思考にふりまわされて、やるべきことに取りかかれないという人におすすめです。

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