恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

10.相合傘

2019年07月03日 | 雨の物語
 学校がやっと終わり、帰ろうと思って、玄関に立って大粒の雨を見ていた。
 目の前には、紫陽花が咲いていて、綺麗だなと見とれていると隣にクラス一の美女が佇んでいた。
 私は、密かに片思いをしていた。
 水色の制服は、他の女子が着ているとダサく見えるが、彼女が着ていると、まさに校庭に咲く一輪の紫陽花の様だった。
 彼女が大きな目を丸くして、空から降っている大粒の雨を見て、「傘がないと帰れないなー。」と呟いていた。
 ちょっとしかめたような顔をしたが、映画のワンシーンのようなカメラが遠くから撮っているような感じがした。
 私も隣で、「これじゃ帰れないよなー。」と呟いてみた。
 そういうと「君もなんだ。」と話しかけてきた。君っていう言い方にドギマギした。
 「伊藤さんもなの?」
 「そうなんだ。雨やむといいね。」会話が途切れた。もっと話したいと思うが言葉が出てこなかった。一時二人で、紫陽花と大粒の雨を見ていた。
 一時したら、5歳年上の兄貴が傘を持ってやってきた。
 「おい、こんな大雨の時に傘を忘れるなんてな。俺が持ってきてやったぞ。」と偉そうに言った。
 「ありがとう。」と受け取ると、兄貴は、振り返らずに足早に帰っていく。
 傘を広げようとしたら、「君は、先に帰るつもりなのかい?」伊藤さんが話しかけた。
 「えっと、どういうこと?」
 「傘があるなら一緒に帰ろうとかはないのかな。君は?」出来るならそうしたかったが、まさか伊藤さんから言ってくれるとは思いもしなかった。
 「それじゃ、一緒の傘に入るってこと?」
 「そうそう。」と言って、傘に入り込んできた。入るとき、濡れるよと言って、取っ手を持って、傘を立てた。
 手と手が触れ、雨とは程遠い温かな手だった。
 濡れた髪。透けた制服。大粒の雨。伊藤さんの香り。手と手の感触。
 まさか、片思いの人と相合傘をするとは夢にも思いもしなかった。
 すぐ横に憧れの彼女がいる。
 校庭を出て、家までの道のりが時間が止まったような感じがした。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
恋愛 (鈴木(佐貫卓球ルーム))
2019-09-07 18:18:24
はじめまして~ランダムから来ました

素敵なおはなしですね

私も過去の想いが蘇えるようです
恋愛 (キーボー)
2019-09-09 20:25:26
コメントありがとうございます。久しぶりのコメントうれしいです。最近書いてなかったので、久しぶりに見たらコメントが来ててびっくりしました。
思い出したようにブログ書いていきますので、これからも、また、よろしくです。

コメントを投稿