恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

7.家出したトナカイ

2018年12月24日 | 冬の物語
 毎年毎年なんで、クリスマスイブに、働かなければならないんだ。
 しかも一年に一回って、どれだけブラック企業なんだ。
 年々太っている髭面のサンタを乗せて、引っ張って行かなくちゃならない。いつも首がもげそうである。
 しかもエサが段々経費ケチって、その辺の草になっている。
 もうこうなりゃ、ボイコットしてやる。
 12月23日サンタが寝始めたころ、トナカイは、荷物をまとめて、机の上に【お世話になりました。トナカイ】と手紙を添えて出ていくことにした。
 雪の中をゆっくりと歩いていく。
 夜空を見ると月が浮かんでいて、周りが明るい。森の中を、一時歩いていくと、小さな池があり、一口飲んだ。
 「おいしい水だな。」こんなにゆっくりと水を飲んだのは初めてだ。
 いつも、サンタに急かされ、鞭を打たれ、急いで子供たちにプレゼントを配らなければならない。
 水なんてほとんど飲まされず、ただ働きのようなものだった。
 だけど、子供たちの喜ぶ顔を見ると、そんな事どうでもよくなるのを思い出した。
 「ありがとう。」といって、子供たちが頭をなでたり、角を磨いたりしてくれる。
 自分がもらったお菓子をくれるなんて事もあったなと思い出していると、遠くから、サンタの声が聞こえてきた。
 「トナカイすまないー。戻ってきておくれー。お前がいないと子供たちの所へ行けないんだ。だから頼むー。」
 太った体をユサユサと揺らしながら、サンタが探している。
 プレゼントを渡すのは嫌いではない。仕方ないな。子供たちの為に戻ろうと後ろを振り返ると、サンタが涙を浮かべてそこに立っていた。
 サンタが近寄ってきて、トナカイの角をさすり、好物を目の前に置いた。
 クリスマス終わっても、好物食わせろよと心の中で思った。


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