あれは,あれで良いのかなPART2

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治水対策は政争の具ではなく安全第一で

2019年10月22日 16時26分48秒 | 災害・危機管理
台風19号は各地に大きな傷跡を残していきました。特に各地で水害が発生し,多くの方が亡くなるなど被災者が多数発生してしまう状態となってしました。

治水は簡単な話ではない

まずは,被災者の方々に対し,震災お見舞い申し上げます。
ところで,ここで述べたいのは,今回の台風19号に対する治水対応について言われている様々なことです。前向き,建設的な意見はもちろんきちんと議論してもらえればいいのですが,若干ずれているものや,水害を政争の具として使おうとしている節が見受けられましたので,その点を中心に少しだけコメントしたいと思います。
なお,前提として,私はこの内容を政争の具とはしたくないので,特定の政党の政策だけを批判または支持するつもりは全くありませんので,その点は誤解のないようにお願いします。

1 ダムの緊急放水の是非
  台風19号の雨で,ダム湖が満水になり,緊急放水を余儀なくされるという事態が各所で発生しました。
  これに対し,一部の方から「だからダムは無駄だ」とか「ダムがなければ緊急放水しなくて済んだので,下流で水害の危険がなかったはずだ」,さらには「緊急放水による洪水は明らかに人災だ」などという批判があります
  しかし,それは少し違います。そもそも緊急放水は,読んで字のとおり,「緊急の放水」です。すなわち,非常に危険な状態であった前提です。非常に危険とは,「ダム自体の崩壊」の可能性です。
  ダムが損壊したら,それこそ大損害が発生します。え,ダムの周辺だけが水害になるって?全然違います。ダムが崩壊したら,それこそ,ダム湖全部が一気に流出します。それは緊急放水の比ではありませんから,下流は問答無用に大水害になります。また,ダムのコンクリートなどが大量に流れていくため,それで下流域の河川施設損壊にもつながりかねません。
  そもそも,緊急放水とは,ものすごく簡単に言うと,「降ってきた雨量分をそのまんま流す」ということです。すなわち,その限りで一時的にダムとしての機能を失わせるものになります。
  「なーんだ,やっぱりダムが無駄なんじゃないか。」などと思うのはその点なのかもしれませんが,そこが大きな誤り。
  もしダムがなかったら,そもそも最初から雨水はたれ流しです。すなわち,下流は急激に水量が増して,洪水リスクが高まります。また,何よりも,時間差がなくなるため,避難の呼びかけや避難をする時間すら稼げません。
  ダムがあることで,当面は水量調整が可能であり,緊急放水だって相当前に予告をしますので,避難をする時間を稼ぐことができるのです
  なので,緊急放水する=ダムは無駄,っていうことではないのです  もちろん,設計段階でのダムの貯水量が妥当だったのかなどという点は検証する必要があるのかもしれませんが,ダム自体の機能もいろいろありますので,それも一概に小さいからダメだともいえないでしょう。
  ただし,今後考えるべきことは,「利水部分の事前放水」です。今回の緊急放水では,「事前に分かっていたからダムを空にしておけばよかった」という批判があります。それは,一理あります。ただし,ダムは治水だけではなく,農業,工業,飲料水等さまざまな利水目的で作られています。そして,利水権はかなり強いものとなっています。
  したがって,事前に利水部分を放流するのは相当面倒な作業になり,それが事前調整できているダムはごくわずかにすぎません。
  この利水権の災害時の調整というところは,今後十分検討していくべき課題といえるでしょう。

2 スーパー堤防なら水害が発生しなかった
  今回,多数か所で堤防が損壊,越水しました。これを受けて,一部の方から「旧民主党の事業仕分けでスーパー堤防事業を廃止したから水害が発生した。」などと批判されています。
  しかし,これは完全にミスリードです。
  確かに,スーパー堤防自体は,限りなく損壊,越水する可能性は低いため,水害は防げます。ただし,その場合,「上流から下流まで全流域でスーパー堤防が完成している」という前提です
  そして,スーパー堤防事業は,完成まで100年以上かかるものであり,かつ事業範囲は,実は大きな主要河川の下流部分にすぎません。
  したがって,今回水害で被災した地域のほとんどが,そもそもスーパー堤防事業対象外の場所であり,かつ仮に対象地域だとしてもとてもとてもこの数年で完成したところではないため,仮に事業仕分けでスーパー堤防事業が廃止されなかったとしても,残念ながら水害が発生した可能性が極めて高いと言わざるを得ません。
  そもそも,今回の水害の多くは,大雨の状態であったが下流域が満潮になるなどして川の流れが滞留してしまったことから,水が逆流するというバックウォーター現象が発生したことや,ボトルネック等堤防の弱い部分や整備未了部分が損壊してしまっております。なので,スーパー堤防とは因果関係はありません
  したがって,旧民主党を責めるのは筋違いなのです。
  では,旧民主党は責任がないのかというと,そうとも言えません。スーパー堤防事業を事業仕分けするのはいいのですが,その際に,代替策としての治水対策についての議論がほとんどされておらず,結果,スーパー堤防は金食い虫,っていうだけの話に終始してしまいました。この時に治水対策も真剣に議論をしておけば,今回の水害は一部防ぐことができたかもしれません。そういう意味では,責任はあります。
  でも,それは今の政権与党も同じ話。もちろん,さまざまな治水対策は講じていたのでしょうが,手付かずの部分も多かったということが反省点であろうと思います。
  したがって,今回の水害は,どこの政党が良い悪いということではなく,各党全体が責任を強く感じ,次に向けた対策を真剣に考えていくべきです。特に治水は国民の命にかかわるものなので,政争の具とはせず,党派を超えた対応を考えていくべき重要な政策なのです

3 ハザードマップの情報公開
  これは一言だけ。一部自治体では,非公開にしていたようですが,その理由は,「混乱を招く」,「地価が下がる」などという大人の理由だったようです。
  でも,それは根本的に発想が違うなあ,って思います。自分が住んでいる場所が安全か否かを事前に知っておくことは,命を守るためには大変重要なものです。

治水は昔から人類が悩まされてきた大きな課題です。だからこそ,これを揚げ足取りの道具にしないで,「本当に安全を守るにはどうするべきか」ということを真剣に考えて,それを実行していくべきでしょう。もちろん,他にもいろいろ問題があり,単純に解決できるものではありませんが,だからこそもっと前向きな議論と実行をしていくべきなのです。
あと,当然ですが,被災者支援も忘れないでほしいです。

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