医学生のための病棟実習を楽しむブログのち感染症

私も医学生です。楽しかった病棟実習をふりかえりつつも、研修医になれる日を待ち遠しく日々精進しております。

『感染症入門レクチャーノーツ』

2006年09月20日 | My Impression

最近、6年生は国家試験対策のビデオ講座が始まりました。

3日間の産婦人科ビデオ講座を完了しエビデンスレベルの低い妙な自信を得、先ほど某書店へ趣味の立ち読みに行ってまいりました。本屋好きなんです(笑)。

で、見つけました!

『感染症入門レクチャーノーツ』。。

もちろん即買いです。

前半は微生物編、後半は抗菌薬編+抗菌薬マップが別冊
の構成となっています。

本の中に散りばめられているコラムを読みましたが、大野先生の人柄がすごく出ていて、かつ自分が憧れる医療に近いことを日々実践されている様子が鮮明に描かれていてとても面白かったです。

そして卒後6年であんなになっちゃう大野先生ってやっぱり変態だと思いました・・・。

自分が初めて医学の勉強をするきっかけとなった感染症レクチャーノートから早3年。今年は大野先生にもセミナーで会え、感染症レクチャーノーツは私にとってかけがえのないものです。本になったレクチャーノーツは嬉しくて仕方がありません。

ちなみにアマゾンではずっと在庫切れのようです。

最近は和書でもさまざまな感染症の本やマニュアルが発売されていますが、本書は臨床感染症を微生物学・抗菌薬・薬理学を土台として理解したい人にぴったりです。

章の説明形態が一定して、また覚えるべきポイントをシステマティック・数的に明示してあるので、じっくりと一段一段読み進めていくことで、自分の中に感染症の棚・引き出しが作られていくのを実感できます。

抗菌薬のスペクトラムを視覚的に工夫したポケット版抗菌薬マップも付録でついていて白衣の胸ポケットに入れておくことができそうです。

・最近の大野先生の言葉


・感染症レクチャーノーツ(Amazon.co.jp)
感染症入門レクチャーノーツ

 

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下痢はつらいものです

2006年09月01日 | My Impression

夏休みを利用して数週間タイでチャレンジングな滞在をしていた23歳男性が先日帰国するも発熱と水様性の下痢を訴えているとM*Studentにメールがあった。まぁ、ヒトゴトなので面白半分で返事を書いてみた。


下痢はつらいものです。

一度だけ友人と歌舞伎町の焼肉屋に行った翌日にひどい下痢に悩まされました。友人はピンピンしていたので感染症や微生物のトキシンによる下痢というよりは食べ物の刺激(例えばニンニクや油)による、ちょっとした腸過敏のような症状だと思っています。日本人はお腹がデリケートなようだから海外で下痢してもこのような”食あたり”であることも多いそうです。薄めたポカリに塩を一つまみして飲んで嵐が過ぎるのを待てば治ります。

海外渡航のある23歳男性の下痢はたいていの場合が ETEC(enterotoxigenic E.coli)であることが多く、患者サイドの価値観によってはST合剤またはニューキノロンで治療となるでしょう。途上国では ST 合剤耐性菌がおおいので贅沢に「シプロフロキサシン500mg 1日2回を1~3日間」のレジメンなんてどうでしょう。もちろん薄めたポカリに塩を一つまみで嵐が過ぎるのを待っていても治ります。

長引く場合はアメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症や旅行先特有のレアな微生物が原因かもしれません。
その地特有の感染症のデータはCDCの旅行者向け健康サイト『Yellow Book』が役に立つでしょう。
ただ発熱と下痢でうなされている23歳男性にとって「役に立つでしょう」と言われたところで、「そんなことより俺の下痢を何とかしてくれ!」と言いたいかもしれません・・・。薄めたポカリに塩を一つまみで嵐がなかなか過ぎ去らないようなら後学のために調べてみましょう。

マラリア流行地帯からの帰国者で「発熱+下痢」の鑑別診断は
1にマラリア2にマラリア、3,4がなくて5にマラリア、6にその他と言われていますが
マラリア流行地域には足を踏み入れていませんか?
この場合はさっさと「私はマラリアかもしれません!」と医者に先入観を与えて検査をしてもらわなければ致死的なので注意です。

とりあえず、薀蓄は置いておいて、23歳男性のウンコを培養してみたいかな。 培地多くてメンドーそうだけど・・・。

Reference
・感染症外来の事件簿
・CDC Travelar's Health

と丁寧に返信しておいた。しばらく返事が来ないからくたばったかな?と思っていたら揚々と(でもないか....)返事が来た。


23才男性は、三週間ほどタイ・ラオスに滞在していたとのこと。
雄大なメコン川を体で感じるんだと、川遊びを現地人と楽しんでいたらしい。
川の色は養分たっぷりのまっ茶色。。。
同行していた某氏には

アジアの淡水河川中に遊出しているセルカリアが経皮感染していて、4週後には悪寒戦慄、その後、潰瘍、瘢痕を生じ、腹部膨満を呈しながら肝硬変で死ぬから、そん時は、住血吸虫症/schistosomiasisの貴重なご献体としてK大病理解剖室までご篤志くだされませm(_ _)m

と脅される。。。

食べ物は、何の肉だかわからない赤みを帯びた肉やきゅうり等の生野菜、氷水(??!!ォィォィ.....)など危険なものを挙げたらきりがないほど。

本人は急性か慢性かを判断すべくじっとM*Studentに言われたとおり薄めたポカリ&一つまみの塩で対処。

熱は帰国後すぐにでたが、1日でおさまった。マラリア汚染地区には足を踏み入れていないと安心する一方再度、熱発するか本人はびくびくしていたがその後熱はなし。

今日はトイレ二回と順調なかんじ。

・・・・・・てか病院いった方がいいっすよね。


まぁ、大ジョブやろ!!、、、と思う夏の夕べ。

そうは言ってもきっと下痢をしている本人はつらいのでしょう。

御察しします。とりあえずワタクシ免許持っていないのでアーメン*

 

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Sister Joseph nodule

2006年08月21日 | Review

とあるセミナーの番外編Case Studyの時に出てきた傍臍リンパ節の腫脹。これには『Sister Joseph nodule』というかっこいい名前がついている。

Sister Josephリンパ節の腫脹は腹腔内・骨盤内悪性腫瘍、Lymphomaの存在を強く疑わせる。これがあるとほぼ悪性疾患が隠されているとも言われている(らしい)。

末期の腹腔内・骨盤内悪性腫瘍、Lymphomaでは多くの患者さんで触れることができるかもしれない。実習の際に腹を触診して「Sister Joseph noduleを触れますね」と指導医に言ってみたかった。

今までリンパ節は頭頚部、鎖骨上窩、腋窩、肘窩、鼠径・大腿部の5つ(ちなみにこのうち離れた2ヶ以上のリンパ節腫脹があると全身性リンパ節腫脹;Generalized Lymphadenopathyという)しか知らなかったが、腹でも触れることがあるのだと勉強になった。しかもかなりSpecificだ。

 ちなみにSister Joseph noduleの由来はMayo Clinicを創設した一人である外科医William J.Mayoの助手をしていたナースが開腹する前の消毒の時に発見したことから命名されたとMayo Clin ProcのLymphadenopathyのReviewに書いてあった。ちなみにこの総説ではSister Mary Joseph noduleの”Mary”は正しくないんじゃないかと書いてある。一方、NEJMのImages in Clinical MedicineではSister Mary Joseph’s Noduleという名前で紹介されていてこのナースの名前がSister Mary Joseph (1856-1939)であったことから命名されたと記されている。

まぁ、どっちでもいいんだけど気になったわけだ。Mayo Clin Procが”Mary”は正しくないんじゃないかと書いているのだからとりあえずこっちを採用しておこう。

どううでもいいついでにもう一つ。
診察エッセンシャルズのLymphadenopathyの章に書いてあるTieney先生のPearl

Pain in an enlargrd lymph node after alcohol use means Hodgkin's disease until proven otherwise.

の元ネタ(?)論文がMayo Clin ProcのReferenceにあげられていた。

欲しい・・・。図書館に行けば検索できるかな?

Cavalli F. Rare syndromes in Hodgkin’s disease. Ann Oncol.1998;9(suppl 5):S109-S113.

 

ちなみに冒頭のCaseは40歳代女性の子宮頸癌であった。

Reference
診察エッセンシャルズ―症状をみる危険なサインをよむ
Lymphadenopathy Mayo Clin Proc 2000;75:723.
Sister Mary Joseph’s Nodule N Engl J Med 2005;352:1913 


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日本は梅毒診療の後進国

2006年08月20日 | My Impression

岩田健太郎先生の『感染症外来の事件簿』を読んでいたら面白い記述があった。

梅毒の治療といえばベンザシン・ペニシリンの一回筋注で勝負あり!である。(ただし日本にはこの素晴らしい薬がない)、と。

そして注に面白い記述が

「最近では、ベンザシン・ペニシリンのない後進国のためにアジスロマイシン1回投与(2g経口)が、初期の梅毒やearly latent syphilisに効果がある、というデータが出ている。この論文が日本を皮肉ったものなのかどうか、筆者は寡聞にして知らない」

岩田先生の顔が浮かんでくる。

とある感染症のセミナーでも岩田先生はこの話をしていたので日本の感染症診療の後進国具合を揶揄するかなりネタ的な論文なのだろう。

 事実、感染症の勉強をしていると日本の感染症診療における保険適応がどうも論理的ではないものが多々あることに気づく。(偽膜性腸炎にバンコマイシンなど)保険適応だけでなく無駄な薬は多いのに必要な抗菌薬そのものがなかったり(セファロスポリンの種類の多さ・・・。ナフシリン・オキサシリンがない!)でとにかく悪い意味での「テキトー」という言葉がぴったりである。それとも「テキトー」を装った「癒着」が存在するのかもしれない。そしてあまり感染症の勉強をしたことがない友人と話したり実習でメロペンを肺炎治療に対しいておもむろに処方している医師に質問をしたりすると明らかに話が根本的にかみ合わなくてイラツキすら感じる。なんとかならないのか・・・。(←私自身のことである....)ただ青木先生、岩田先生、五味先生、大野先生の尽力のおかげで若手を中心に良くはなってきている気はするが。たまに何が正しいのかわからなくなる。ただこれらの先生の話はいつも科学的であり、ポリシーがあって勉強をする身としてはとても憧れるし、元気が出る。

さて、梅毒治療の論文の著者がいう後進国の中に日本が入っているのかどうかはそれこそ寡聞にしてわからないが、薬の値段から見るとアジスロマイシンがペニシリンよりもクソ高いのは事実だ。こんなクソ高い薬の方が後進国では好まれて使われるのだろうか筆者には理解不能である。

ペニシリンG:240万単位で628.8円(262円/100万単位換算)
アジスロマイシン:2gで2856円(357.30円/250mg錠換算)

Reference
・感染症外来の事件簿
・Single-Dose Azithromycin versus Penicillin G Benzathine for the Treatment of Early Syphilis N Engl J Med 353: 1236-1244, 2005

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SHOCK

2006年08月20日 | My Impression

以前、愛知の某病院に実習見学に行った際、入院中にSHOCKの患者さんがいたのだが、先生がいともたやすく副腎不全を鑑別にあげてその後ACTHだかの負荷試験を行って診断していたのに心ときめいた。この患者は何かの感染症だったのだが末梢血に好酸球が正常以上であった。感染症の際は本来Stress Hormon(ステロイド?)がでていて末梢に好酸球はいないはずなのにというあたりから気づいたとも言っていた。

私が今理解しているSHOCKというものは、血管が開いたり血液量は減るなり血圧が低下するなりして全身の臓器が必要とする血流量が落ちることにより何かとまずいことが起こるといったあたりだ。
(Definition: Shock occurs when the arterial circulation is unable to keep up with the metabolic demands of the body)

この辺りの病態生理から攻めてみても、そもそも『SHOCKの鑑別に副腎不全がある』ということを知らないとどうしようもない。 ということでゴロが役立つ。

 The Causes of SHOCK

Sepsis
Hypovolemic
Obstructive
Cardiac
Kooky

Kooky:妙ちくりんな

"Kooky" Disorder Leading to Shock ("DEAN")

Drug (primarily vasodilating drugs)
Endocrine (adrenal insufficiency or myxedema)
Anaphylaxis
Neurogenic (especially after spinal cord injury)

ということをとりあえず覚えておこう。

Hypovolemic(trauma, GI bleeding, Hematoma, burns, pancreatitis, hyper osmolar states, vomiting, diarrhea)
Obstructive(cardiac tamponade, PE, tension pneumothorax, severe AS,and MS) Cardiac(MI, DCM, Tachyarrhythmia,Bradyarrythmia, acute MR or AR, rupture of the septum or ventricular wall)

Reference
Saint-Frances Guide to Inpatient Medicine

 

 


Spontaneous vs Tension

2006年08月20日 | My Impression
Saintの4 killer chest painの一つにある『Spontaneous Pneumothorax』というものが以前から良くわからない。

どこかでみかけた別の本ではkiller chest painの一つとして『Tension Pneumothorax』があげられている。

Harrisonを開いてみると

Spontaneous・・・先行する胸郭の外傷無しにおこるもので原発性と続発性がある。ブレブの破裂によりおこる。

Tension・・・呼吸サイクルを通じて胸膜腔内圧が陽性の気胸

とある。

どちらかというとTensionの方が致死的であることは『胸腔内圧陽性は致死的であり、換気が高度に障害され、陽圧により縦隔が圧迫されるため静脈還流量が減少し心拍出量の減少がおこる』と記述されていることからも推察される。

では起こり方はどうかというと原発性のspontaneousの気胸は主に喫煙者に起こり、続発性の気胸はほとんどがCOPDが原因である。で、肺疾患のある患者は肺の予備能がないため、健常者に比べると致死率が高いとある。

一方、Tensionの方は心肺蘇生時または人工呼吸時におこる。

以上のことから、Tensionは予想されうる気胸であり、Spontaneousは基礎疾患の有り無しにかかわらず、疑わないと胸痛のDDxにあがってき難いということだろうか。

とりあえず、この辺りで理解しておくこととしよう。


Pneumothorax
1.Primary Spontaneous Pneumothorax
2.Secondary Spontaneous Pneumothorax
3.Traumatic Pneumothorax
4.Tension Pneumothorax

Reference
Harrison 16th:Pneumothorax

鑑別診断のアルゴリズム

2006年05月22日 | My Impression

昨日の勉強会のReviewメールです。

こんな感じで勉強会を行っています。参考になればさいわいです。

今週も私のレクチャーにお付き合いいただいてありがとうございます。
本日あつかったケース(*)の症状はいずれもよくある症状です。
(*:cough, edema, abdominal pain, chest pain)

今日学んだことを自分の今まで持っていた診断のアルゴリズムに組み込んだり、初めてのアルゴリズムは今後の鋳型にしていただければ光栄です。

コモンな症状は数十種類ありますが、いずれもその症状を聞いた瞬間にゴールへの道筋が描けるようになることを目指してください。

その時、核となるKey WordやKey Phraseがあって、音楽ならイントロを聴けばその曲の全体を思い出すのと似ています。

例えば、今日やった『edema』と聞けば、

①血管透過性亢進
②膠質浸透圧低下
③静水圧亢進

のいずれかであって、あとは自然とその先にある鑑別診断への道筋がさっと開けるわけです。

『胸痛』ならば、まずは4 Killer Chest Painを考えて

①内臓痛
②体性神経痛
③関連痛

なのかを思い描けば聞くべきHistoryのリストは自然と出てくるようになります。
鑑別診断のあげ方はSaint-Frances Guide to Outpatient Medicineにある解剖学的な『Outside-in』アプローチがイメージもしやすいですしもれも少ないと思います。


スタート(症状)とゴール(鑑別診断)は決まっていて、ゴールにいかに効率よく、見逃しがなくただりつける方法を考えればよいわけです。
この方法もSaintやHarrisonに先人の方々がまとめているので、その情報を使えるようにして基礎を完成させましょう。

覚える量を減らすポイントは病態生理と解剖です。

基礎の知識を活用しつつ臨床への階段を登っていきましょう。

 

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寺沢先生による『ハリソン』の書評

2006年05月22日 | My Impression

おはようございます。

個人的に感動したので以下の文章を転載します。

週刊医学界新聞

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2682dir/n2682_10.htm

ハリソン内科学
日本語版第2版

福井 次矢,黒川 清 監訳

《評 者》寺沢 秀一(福井大教授・総合診療部/福井大病院副病院長)

黄色い表紙の『ハリソン』
 医学部卒業と同時に沖縄県立中部病院で1年間のスーパーローテーションをした。
平均睡眠時間3時間で,さすがに本を読む時間も気力もない1年だった。2年目に内科
の1年目の研修医(今でいう後期研修1年目)となり,常時25人の主治医をするという
過酷な研修だったが,『ワシントンマニュアル』だけは読んだ。主治医となった患者
の疾患に対応する部分を拾い読みするような読み方だったが,1年が終わる頃にはぼ
ろぼろになった『ワシントンマニュアル』に愛着を感じ,長く手放せなかったのをよ
く覚えている。
 次の2年間で内科のシニア研修医として,中部病院の内科のすべてのサブスペシャ
リティを数か月ずつローテーションした。今思い出しても豪華な米国帰りの指導医軍
団と,1年目の内科研修医の間に立つシニア研修医として後輩を教える立場となり,
その2年間で必死に『ハリソン』を読んだ。神経内科をローテーションしている期間
には神経内科の部分を,消化器内科の期間中には消化器の部分をと,患者が入院する
ごとに『ハリソン』を読み,翌日その知識で1年目の内科研修医を指導する2年間で
あった。患者のほとんどが内科1年目に主治医を経験した疾患であったため,『ハリ
ソン』を読んでいて砂が水を吸収するような勢いで知識が自分の中に入り込んでくる
実感を味わった。生涯で最も自分が伸びた時期であり,この時期が今の自分を支えて
いると確信している。内科研修の1年目の経験があったからこそ『ハリソン』を読み
こなすことができたと思っている。

 当時の黄色い表紙の『ハリソン』を閉じて机の上に置くと,ローテーションし終
わったサブスペシャリティに相当する部分が手垢で汚れ,読んでいない部分との境界
が鮮明となり,それぞれの部分を読み終えた達成感にひたった。汚れていく部分が次
第に増えていくことを無邪気に喜びながら,しばしば『ハリソン』を撫で回して一人
でニヤニヤしていたことを覚えている。『ハリソン』の同じ部分を何度も繰り返し読
み,本に愛着をもてるくらいに読み込むことが臨床医としての自信を生むことも知っ
た。

 自分のどこかで,あの膨大な『ハリソン』を日本語に訳すなどということは不可能
だと決めつけていたので,日本語訳が出版されたのを見て愕然としたものである。訳
された方々と出版社の方々のご苦労に心から敬意を表し,一人でも多くの医学生,医
師に『ハリソン』を読まれることをお薦めしたい。


お勧めのテキスト

2006年05月17日 | My Impression

こんにちは。しばらく、ブログを留守にしていました。

さて、私の大学では4,5,6年生からなるCase Studyの勉強会があります。

今年も新学期を迎えて新4年生が私達の勉強会に入ってきてくれて、気分も新しく日々精進しています。

大体この時期は4年生にお勧めのテキストを質問されることが多く、私なりの推薦図書を4冊紹介したいと思います。

どれも、臨床デビューには最適だと私は思います。

・黄色いSaint(Outpatient)

・Current Medical Diagnosis & Treatment
(SaintとCurrentが手元にあればそうそう困らないと思います)

・The Patient History
(各主要症状で鑑別診断は何があるのかHistoryで何を聴くべきなのか体系的に書かれていてお勧め。英語も読みやすいし、痒い所に手が届くデータも書いてあってお勧めです)

・Problem Solving in Clinical Medicine
(Case Book。各主要症状のCaseがたくさん載っていて、解説も詳しいので初めの1冊にはおすすめです。青本の名で親しまれている良書です)

そして、感染症に興味がある人はなんといっても青木先生のバイブルがあります。

・レジデントのための感染症診療マニュアル
(青木先生の日本で唯一の感染症のバイブルです。私達の勉強会では感染症にも力を入れています。)

参考になればさいわいです。

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指導医の先生と絡もう

2006年05月08日 | My Impression

病棟実習を楽しむエッセンスには『患者さん』『指導医』『自己学習』のトライアングルがあると思います。

今日は指導医の先生との関わりで印象深かったエピソードを紹介します。

私が病棟実習をはじめてまだ日が浅いころ心臓外科で大動脈弁閉鎖不全症の患者さんを担当させていただきました。週末はゴルフを楽しみ、山登りをして少し息切れがするという60歳代の男性の方でした。主訴は心臓のことを気にせずにまたゴルフを伸び伸びとやりたいということでした。

当時、私はいわゆるEBMにはまっていて、担当の患者さんに本当に手術が必要なのかどうかをNEJMのReviewやUpToDateを読んで勉強したところ、案の定(?)私の患者さんはいわゆるRecommendationがいうところの手術適応ではありませんでした。

勇敢な(無知な?)私は主治医の先生に論文片手にこの患者さんは弁置換の適応ではないのに何故オペをするのかと質問をしたものです。

お恥ずかしいお話ですが、この質問ができたことで外科に対するイメージや論文を読んでそれを実際の臨床にどのように役立てるのかということを学べたのでかいつまんで先生の回答を紹介します。

まず、この患者さんは”今は”弁置換の適応ではないかもしれない。しかし、彼の弁膜症が悪くなることはあっても良くなることは将来的にはありえない。つまり、今は心不全の兆候はほとんど出ていないけど近い将来きっと心不全になる可能性が高い。弁置換手術は心不全徴候が出る前に行えば予後は良いけど出た後では予後が極端に悪い。そして、今、患者さんが手術を望んでいる。だから、手術をするなら今がベストである。

そして、心臓外科という科は往々にして内科の先生からの紹介でオペをすることが多いのだけれども、紹介してくれるタイミングがとても重要である。内科の先生が患者さんを抱え込んでしまってどうしようもない状態になって紹介してくれても当然予後は悪くなる。外科と内科の関係も悪くなる。外科は患者さんを選べないんだ。だから外科の成績が良い病院っていうのは外科と内科の関係がうまくいっている病院じゃないと難しいかもしれないね。

先生はいくつかのFigureをメモ用紙に書きながら説明してくれました。

感動しました・・・。

結論としてはEBMとは・・・、ではなくて学生実習をしているみなさん、指導医の先生にからみましょう!

ただし、いくつか簡単な注意事項があります。(私見ですが、)

この心臓外科の先生は学生の間では無愛想で怖いという噂の先生でしたが、患者さんに対してはとても丁寧で笑顔で接している先生でした。つまりアウトカムは患者だろという患者さんを大切にしている先生に質問しましょう。

あと、何も知らない状態で質問するのではなくてある程度、自分なりに勉強したことを先生にぶつけてDiscussionさせていただくという姿勢が大事だと思います。ポイントがよくわからない質問には答えるほうもシンドイ気がします。

怖そうなおじさんでも話してみると熱くて面白いおじさんかもしれませんよ。

ご参考までに

【当時の参考文献】N Engl J Med  351:1539 Aortic Regurgitation

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