このところ、シティポップという言葉をネットやラジオで
見聞きする。
言葉も生き物で、はじめはなうだった言葉も
やがてダサくなって死語となる。
ところが巡り巡って
火の鳥のように復活する言葉がある。
どうやらシティポップもそうみたいだ。
『アンダー、サンダー、テンダー』チョンセラン著 吉川凪訳 を読む。
北朝鮮がルーツの家族に生まれた女性。
家業はビビンククス(ビビンメン)店。
趣味は動画撮影。
ヌーベルバーグのカメラ=万年筆ではないが、
カメラを通して十代から二十代までの出来事を
スナップショットする。
友人、家族。好きな音楽、好きな映画、好きな雑誌、
好きな人。
短い映像に自身のナレーション。
長いブログを読んでいるような感覚になる。
若い頃は誉められると鼻がこれ以上にないほど高くなる。
でも、傷つくとこれ以上ないほど落ち込む。
そんな振り子状態で進む年代。
じゃれ合っていた仲間も
やがて夢を叶えた者、挫折した者など、
道が違ってくる。
彼女は自身で撮影した短いビデオ映像を
ノートPCで編集する。
編集もビビンククスもうまくかき混ぜて
尺もしくは器におさめること。
岡崎京子の漫画やジム・ジャームッシュ 、
ソフィア・コッポラあたりの映画を思わせる
多感なみずみずしい感性。
元気があっておしゃれなインスタグラムを覗き見するような。
言ってしまえば『アメリカン・グラフィティ』ならぬ『コリアン・グラフィティ』。
関係ないが、ビビンメンは好きだけど、頭が割れそうで胃袋に鉄アレイが
しずんでいる、ひどい二日酔いのときは、冷麺だった。