哲学の科学

science of philosophy

翼ある蛇(3)

2019-04-20 | yy68翼ある蛇


翼竜は、身体が小さい場合、鳥類や哺乳類に生存競争で勝てなかった。獲物の奪い合いや、営巣場所の奪い合いでうまくやれなかったのでしょう。推測するに、代謝で体温を維持できる恒温動物は、寒冷でも身体が固まらずに敏捷に動けるので身体の大きさが同じならば、変温動物を出し抜いて繁殖することもありそうです。鳥類や哺乳類は、寒冷気候でも体温が高く、代謝が速く、繁殖率も突然変異出現率も高いので進化速度も速く、新しい環境への適応も速い。小型体型ならば穴や朽木の影に隠れて安全に営巣できたでしょう。

白亜紀末期、大隕石による大絶滅の直前の風景は、たしかに翼竜や大恐竜の天下でした。しかしそれら巨大動物たちのその足元では、地を這い回りヤブや穴に身を潜める多種多様の小型動物がうようよと生息していた、という実態があったのでしょう。
翼竜類も翼を得た初期の頃は小型飛行動物として活躍していましたが、数千万年の生存競争の結果、小型としての生活圏を鳥類など他種の動物に奪われてしまった、と考えられます。しかたなく大型化した。というよりも、たまたま大型化した系統だけしか生き残れなかった、ということでしょう。
巨大なケツァルコアトルスは、ゆうゆうと大空を独占していたのではなくて、それしかできないからそうしていたわけです。
私たち人類もまた、地球を我が物顔に独占して資源を消費し環境を汚染していますが、そうしたくてそうしているというよりも、それしかできないからそうしているのでしょう。

閑話休題、さて、翼竜ケツァルコアトルスとは何か?いかなる存在なのか?どうして私たちはこの古生物を知っているのでしょうか?
専門家である古生物学者たちはこの雄大な動物を、どう考えているのでしょうか?その専門家が描いた図鑑や博物館模型に目を輝かせる子どもたちは、これの存在を何と思っているのでしょうか?



米国テキサス州、メキシコとの国境沿いにあるビッグ・ベンド国立公園は、恐竜の化石が多く出る地質層として知られています。一九七一年、この地で恐竜の化石を発掘していた二四歳のテキサス大学地質学専攻の大学院生ダグラス・A・ローソンは巨大翼竜の翼骨を発掘し、古代メキシコ人が祀った神(ケツァルコアトル=翼ある蛇)にちなんでケツァルコアトルスと命名しました。
その後、ケツァルコアトルスの仲間の化石は世界各地で発見され、恐竜大絶滅直前の時代ではもっとも繁栄した翼竜であった、とされるようになりました。二〇〇九年にルーマニアで発見された同族の化石は、ケツァルコアトルスを超える十二メートル以上の翼長を持っていたと推定され、ご当地の伝説にちなんでドラキュラ、と呼ばれることになりました。不老不死に失敗したドラキュラですが。






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