哲学の科学

science of philosophy

勉強が嫌いな人々(16)

2020-04-04 | yy72勉強が嫌いな人々


民主主義思想は「天は人の上に人を作らず」であるからこそ、社会階層は学問の成果によるべきである、という考え方がもとにあるのかもしれません。
「身分重くして貴ければおのずからその家も富んで、下々の者より見れば及ぶべからざるようなれども、その本を尋ぬればただその人に学問の力あるとなきとによりてその相違もできたるのみにて、天より定めたる約束にあらず。諺にいわく、『天は富貴を人に与えずして、これをその人の働きに与うるものなり』と。されば前にも言えるとおり、人は生まれながらにして貴賤・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。」(一八七二年 福沢諭吉「學問ノスヽメ」)
この偉人の言う学問とは経済社会を開拓していく実力としての知識教養のことを指していますが、この言葉を伝え聞いた人々は、大学や学校に行って卒業証書をもらわなければいけない、と思ってしまいました。旧来の士農工商に置き換わる新しい身分制度が出てきた、と捉えたのでしょう。いわば、ここから学歴競争がはじまり、勉強嫌いのつらさが始まった、といえます。

旧来の階級制が崩壊していく中で、エリート階級は子弟の学歴獲得に相当の熱意を維持し、いわゆる高学歴カルチャーを継承することで暗黙の階級アイデンティティを保持していったようです。このエリート階級の行動は徐々に庶民層に浸透し、大衆的な高学歴化が起こってきます。大学、高校など上級学校が増加し、受験産業が発展し、相補的に、ますます高学歴化は進行します。勉強嫌いの人には過酷な社会現象です。




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