藤井フミヤ展 多様な想像新世界 The Diversity | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、代官山のヒルサイドフォーラムでは、
“藤井フミヤ展 多様な想像新世界 The Diversity” という展覧会が開催中。
あの藤井フミヤさんによる大規模な美術展です。


(注:展覧会は一部を除いて撮影不可。記事に使用している写真は、特別に許可を得て撮影したものです)


ミュージシャンとしてのイメージが強すぎるがあまり、
「えっ?藤井フミヤさんって、絵も描くの??」 と思われた方もいらっしゃるでしょうが。
実は、1993年に開催した初個展 “Fumiyart-Take a break” で、
当時はまだ珍しかったCGアーティストとして衝撃的なデビューを果たしています。
その後、ミュージシャンとしての活動と並行して、国内外で個展を何度も開催。
しかし、2003年に全国巡回した “Fumiyart” を最後に、アート活動を休止していたのです。
実に16年ぶりの開催となる今展では、
過去の展覧会で発表された作品はもちろんのこと、
沈黙期間中に黙々と制作していたという未発表作も数多く出展されています。
総作品数は、約100点。
美術家としての藤井フミヤさんの四半世紀を総覧できる内容となっています。


さてさて、このブログの読者さんの中には、

“・・・・・そうは言っても、芸能人が片手間でやってる展覧会なんじゃないの??”

と、あまり食指が動いていない方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、その手の展覧会は、往々にしてあります (笑)
しかし、フミヤさんの展覧会を、そうした展覧会と一緒にしてはいけません!!
世の中には稀に、天の発注ミス (?) で、
二物も三物も与えられる人物がいるものです。
それが、まさにフミヤさん。
ミュージシャンとしてのあの才能と同じくらいの芸術の才能を持ち合わせているのです。

フミヤさんの芸術の才能の中で、まず一番に驚かされたのが、
展覧会のタイトルにもあるように “Diversity” 、つまり、その多様性です。
会場には、かねてより発表してきたCGアートはもちろんのこと、




水彩や油彩、シルクスクリーンをはじめ、実に多彩なジャンルの作品が展示されています。





ジャンルの幅があまりにも広すぎて、
とても一人の人間がすべて制作したとは思えないほど。
個展というよりも、グループ展のような印象を受けました。

また、文房具屋やホームセンターを訪れては、
ピンと来た画材で、思いつくままに制作しているというフミヤさん。
どのジャンルにも属さない新たなスタイルの作品も数多く制作しています。
例えば、こちらのキラキラとした作品。




何で描かれているのかと思えば・・・その正体は、昔懐かしのファンシーシール。




あのファンシーシールが、こんな素敵なアート作品になるだなんて。
まさしく、コロンブスの卵的な発見です。


また例えば、こちらのウッディな作品。




こちらは、木材をカッティングし、貼り付けて制作したものです。




ただカットしただけかと思いきや、
それぞれのピースを染めているとのこと。
しかも、木目の向きもすべて意図しているというこだわりよう。
フミヤさん本人に伺える機会があったので、
「正直、面倒くさくないですか??」 と尋ねてみたところ、「面倒くさいよ(笑)」 と即答。
この作品を制作した頃、ウッディな家具にハマっていたそうで、
それで、なんとなく作ってみようと思った、と教えてくれました。
“なんとなく” で、このクオリティ。
恐るべしです。


さて、ジャンルの幅広さもさることながら、
やはり何と言っても驚かされるのは、画力の高さ。
絵画を描けば、ご覧の通り。




切り絵に挑んでみれば、ご覧の通り。




才能が圧倒的すぎて、ミュージシャンと芸術家、
むしろどっちが本業かわからなくなってきました。
そんなフミヤさんが最近取り組んでいるというのが、ボールペンで描く絵画。
と言っても、いわゆる普通のボールペン画ではありません。




ボールペンをグルグルグリグリすることで、立体感や陰影を表現しているのです。
これまたありそうでなかった新世界のスタイルです。
ちなみに、今展に合わせて、このスタイルで模写したルネサンスの絵画も発表されていました。




画面中央の 《ボッティチェリへのオマージュ『Venus and Mars』の模写》 は・・・




完成までに1か月半かかったとのこと。
その間、作品は自宅のダイニングテーブルの上に置かれていたため、
フミヤさん一家は、キッチンのカウンターで食事を取らざるをえなかったそうです。
大作の影には、家族の支えありですね。





「あの藤井フミヤさんの展覧会だから」 ではなく、
一人の現代アーティストの展覧会として、オススメの展覧会。
この展覧会を機に、改めて芸術家としての評価が高まるのは間違いなし。
15で不良と呼ばれたフミヤさんが、50を超えて巨匠と呼ばれるのも時間の問題でしょう。
星星
訪れるものみな感動させる展覧会です。




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