もうひとつの江戸絵画 大津絵 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、東京ステーションギャラリーでは、

“もうひとつの江戸絵画 大津絵” という展覧会が開催中。

こちらは、江戸時代の初め頃から明治期まで、

東海道の大津宿周辺で販売されていたお土産 『大津絵』 をテーマにした展覧会です。

 

 

 

昨年、大津市歴史博物館で開催された展覧会を筆頭に、

博物館や資料館で、大津絵の展覧会は開催されたことは多々ありますが。

歴史資料や民俗資料として扱われるため、

これまで、ほとんど美術館で大津絵の展覧会は開催されたことはなかったそうです。

しかし、今回の展覧会では、大津絵のアートとしての魅力をフィーチャー!

明治を代表する洋画家の浅井忠や、

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

ルノワールの唯一の日本人弟子でもあった梅原龍三郎、

 

 

 

さらには、「民藝運動の父」 と呼ばれる柳宗悦など、

 

 

 

日本を代表する目利きたちが、アートとして魅了され、

こぞって蒐集した大津絵の名品を厳選して紹介するものです。

それゆえ、キャプションには、タイトルだけでなく・・・・・・

 

 

 

かつての所有者情報も、しっかりと掲載されています。

その中には、白洲正子や麻生三郎、北大路魯山人の名前も。

ピカソが、アンリ・ルソーの素朴さに惹かれたように、

日本を代表する芸術家や文化人たちが、大津絵の素朴さに惹かれていたのですね。

 

 

大津絵の名品の条件。

それは、決して巧くあってはならないということ。

だからといって、作為的に下手に描いたり、手抜きをしてはいけません。

本人はいたって本気で描いているのに、ユルい。

その絶妙な塩梅が、大津絵の名品を生むのです。

 

 

 

どの作品も、いろんな意味で印象に残っていますが、

特に印象的だったものを、いくつかご紹介いたしましょう。

まずは、 《鬼の行水》 から。

 

 

 

こちらは、大津絵コレクター垂涎の的として知られる一枚なのだそうです。

かつては、大原美術館の創設者である大原孫三郎が所有していたことも。

気になるのは、鬼の体毛の描き方。

モジャモジャではなく、長い1本がミヨ~ンと。

オリジナリティが爆発しています。

さらに気になるのは、鬼の頭上に描かれた何やら。

 

 

 

ツチノコ??

 

・・・・・と思いきや、雷雲とのこと。

茶色いのは、虎柄の鬼のパンツ (腰巻) なのだとか。

なるほど。そう言われてみたら、そう見えて来・・・・・・ないわ!

ツチノコにしか見えませぬ。

 

 

続いては、柳宗悦が所有していたという 《阿弥陀仏》

 

 

 

素朴すぎて有難みのない阿弥陀仏の表情も、さることながら。

何より印象的だったのが、後光の表現。

背後に光源がいくつあるんだ?!

とはいえ、大津絵の 《阿弥陀仏》 の後光の表現は、きっとこういうものなのかもしれません。

そう、一度は自分を納得させたのですが。

その先に展示されていた 《阿弥陀仏》 の後光は・・・・・

 

 

 

しっかり描けていました。

ちゃんとこっちの職人さんの描き方を見習いましょうね。

 

 

大津絵の題材として、よく描かれるのが、お酒を酌み交わす猫と鼠。

 

 

 

こちらのバージョンでは、鼠にお酒を勧め、

酔ったところを食べようとする猫の姿が描かれていますが。

会場には、その逆バージョンも展示されていました。

 

 

 

鼠に勧められるがままさに、お酒を飲む猫。

もうすでに目がイッちゃっています。

完全にネズミに手玉に取られていますね。

まさに 『トムとジェリー』 状態です。

 

 

ちなみに。

大津絵は、木版で製作される一般的な浮世絵とは違い、

合羽摺 (かっぱずり)、いわゆるステンシルの技法で製作されているのだとか。

と言っても、そこに職人たちが手描きで着色しているため、それほどまでに版画感はありません。

しかし、こちらの 《釣鐘弁慶》 に関しては・・・・・

 

 

 

弁慶の身体の部分が、

明らかにステンシルであることがわかります。

バンクシー感のある大津絵です。

 

 

出展作品は、約150点。

これだけの大津絵の名品が集まるのは、奇跡と言っても過言ではありません。

明治大正期に大ブレイクしたものの、

平成には、ほぼ忘れ去られていた大津絵。

この展覧会をきっかけに、令和に再ブレイクするかもしれません。

星星





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