モノクロームの冒険 日本近世の水墨と白描 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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新型コロナウイルス感染拡大防止のため、

3月より休館していた根津美術館が、いよいよ9月19日より再開しました!

オンラインによる日時指定制を導入するなど、感染予防対策はバッチリ。

展示室内に “密” が発生することがないよう、ベンチは撤去されていました。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

そんな根津美術館の再開一発目に開催されているのが、

“モノクロームの冒険 日本近世の水墨と白描” という展覧会。

根津美術館コレクションの中から、水墨画と白描画の名品の数々を紹介する展覧会です。

 

 

 

どちらも墨一色で描かれる水墨画と白描画。

それだけに会場は、まさにモノクロームの世界。

いつも以上にシックな雰囲気となっていました。

 

 

 

ただし、墨一色とはいえども、その技法は実にさまざま。

滲みを活かした描き方もあれば、

 

伝 俵屋宗達 《老子図》  1幅 紙本墨画 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

 

 

アクションペインティングのように勢いよく散らしたものや、

 

狩野常信 《瀟湘八景図巻》  1巻 絹本墨画 日本・江戸時代 17世紀 植村和堂氏寄贈 根津美術館蔵

 

 

こってりたっぷりと墨を使い、モチーフを緻密に描いたものも。

 

曾我宗庵 《鷲鷹図屏風》 2曲1隻 紙本墨画 日本・江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵

 

 

再開一発目の展覧会が、モノクロだなんて。

まさしく冒険的な展覧会だなァと、ひそかに思っていましたが。

いやいや、決して 「モノクロ=地味」 ではありませんでした。

むしろ、多彩な技法が楽しめる展覧会です。

星星

 

 

さてさて、今回出展されていた中で、

印象的だった作品をいくつかご紹介いたしましょう。

まずは、円山応挙の弟子であった長沢芦雪による 《赤壁図屏風》

 

重要美術品 長沢芦雪 《赤壁図屏風》 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵

 

 

離れて観ている分には、余白の美がある趣深い絵のように感じられるのですが。

近づいてよくよく観てみると、ところどころに個性的な表現が見て取れます。

さすが、“奇想の人”長沢芦雪。

 

 

 

難癖をつけるようで恐縮ですが。

 

 

 

お前の舟、天井低くない??

肘をついてもたれかかっている人から推測するに、

舟の中 (?) にいる人たちは、相当に窮屈なはずです。

 

続いて印象的だったのは、吉川霊華による 《相撲節会図》。

 

吉川霊華 《相撲節会図》 日本・大正時代 20世紀 植村和堂氏寄贈 根津美術館蔵

 

 

こちらは、奈良時代や平安時代に、

宮中で行われていた相撲節会 (すまいのせちえ) という行事を描いたもの。

当時の相撲は、マワシ一丁ではなく、

頭に烏帽子を被り、上着を羽織っていた行われていたのですね。

力士というよりも、レスラーのようです。

 

 

白描で描れた伝 住吉具慶の 源氏物語画帖》 も印象的な逸品でした。

 

伝 住吉具慶 源氏物語画帖》  日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

 

 

こちらは、『源氏物語』 の名場面を描いた色紙をアルバム仕立てにしたもの。

サイズが小さめなので、ついサラッと流し見しそうになりますが。

1枚1枚をよくよく観てみると、細かい筆致で描かれていることに気づかされます。

 

 

 

服の紋様や網目もギッシリミッシリと描き込まれていました。

これでもかというくらいに、超絶技巧を堪能できる逸品です。

 

 

最後に紹介したいのは、こちらの作品です。

 

大川崇達ほか17僧賛 《物外和尚送別図》 日本・江戸時代 正徳4年(1714) 根津美術館蔵

 

 

その昔、イタリアで、古代ギリシャローマの文化を復興するルネサンスが起こったように。

江戸時代、京都では、室町文化を回帰するムーブメントがあったのだそう。

こちらの作品は、そんな室町ブームの際に描かれたものなのだそうです。

さて、絵の部分よりも、明らかに文字のほうが多く描かれていますよね。

タイトルは、《物外和尚送別図》

「送別」 の2文字からピンと来たかもしれませんが、

こちらは、南禅寺のとあるお坊さんが東京へと戻る際に、

お坊さん仲間 (?) から、はなむけにと送られたものとのこと。

今でいえば、転勤する同僚に送る色紙のようなもの。

少なくとも江戸時代から、寄せ書きというシステムが存在していたようです!

 




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