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四日市あすなろう鉄道は全然未来志向では無かった。

2020年06月24日 02時51分00秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 
7月末まで近鉄全線片道千円で乗れる株主優待券で、昨日と今日の2日間かけて、三重県内のナローゲージに乗って来ました。ナローゲージ乗車1日目は四日市あすなろう鉄道に乗りました。この路線に乗るのは7年ぶり、今の新会社になってから初めて乗りました。
 
「ナローゲージ」とは軌間(線路の幅)僅か762ミリの特殊狭軌鉄道の事です。新幹線の1435ミリ(標準軌)、JR在来線や大部分の私鉄の1067ミリ(狭軌)と比べても、如何に線路の幅が短いかお分かりになるでしょう。新幹線の約半分の線路幅しかありません。
 
明治から昭和初期にかけて、この様な特殊狭軌の軽便鉄道が全国各地に建設されましたが、今も残っているのは、この四日市あすなろう鉄道と2日目に乗った三岐鉄道北勢線(いずれも三重県)、黒部峡谷鉄道(富山県)の3社しかありません。
 
四日市あすなろう鉄道と三岐鉄道北勢線は、いずれも元々は近鉄の支線でした。前者は元々、近鉄内部・八王子線で、後者も元々は近鉄北勢線でした。それがモータリゼーションや少子化の進展、軽便鉄道故の輸送力の限界の為に、やがて赤字経営に陥り、近鉄が廃止を表明する事態となりました。
 
 
そこで廃止に反対する地元自治体や学校関係者が中心になり、「第三種鉄道事業者」の地元・四日市市が鉄道を保有し、近鉄や市が出資する「第二種鉄道事業者」の「四日市あすなろう鉄道」に無償提供する「公有民営方式」で運営する事になりました。私が今日乗った四日市あすなろう鉄道の車内にも、所有主の四日市市の名前が入った銘板が打ち付けられていました(写真左)。それに対して、近鉄北勢線は、地元を走る三岐鉄道という私鉄に経営が移管される事になりました。
 
四日市あすなろう鉄道は全線が四日市市の市域に含まれます。そのうち、内部線はあすなろう四日市から内部までの全7駅約5.7キロ、八王子線は途中の日永から内部線と分かれ西日野までの僅か1駅約1.3キロを走ります(写真右の路線図参照)。
 
 
乗り換え駅の日永では、八王子線と内部線が連絡しています。西日野から四日市に向かう八王子線のナローグリーンの電車(写真左)と、四日市から内部に向かう内部線のナローブルーの電車(写真右)が、この駅で行き違います。
 
実は八王子線は、昔は西日野から更に先の伊勢八王子まで走っていました。「八王子線」という路線名称も、この時に付けられました。しかし、1970年代の水害によって線路が寸断されたのを機に、西日野から先は全て廃止させられてしまいました。
 
 
内部線の追分駅前にある洋食屋のモンヴェールさんでは、今でも駅前ナロー弁当が販売されています。値段は900円で、7年前の近鉄時代に私が最初に行って買った時と比べたら、値段が少し上がっていました。しかし、洋食屋さんの自家製ハンバーグがご飯の上に乗っていて、美味しさは当時のままでした。(写真左)
 
駅名の元になった追分の地名も、ここが江戸時代は東海道と伊勢街道の「追分」(分岐点)に当たっていた事から付きました。その分岐点の遺跡「日永の追分」では今も近くの湧水から水が流れ出していて、水を汲みに来る人が絶えません(写真中央)。沿線には旧東海道の松並木や宿場町の名残がまだ残っています。始発駅あすなろう四日市から1駅目の赤堀駅のたもとに生えている大クスノキも有名です(写真右)。
 
しかし、折角存続が決まった四日市あすなろう鉄道ですが、特殊狭軌のナロー故に、車体の更新や設備投資がなかなか進みません。その為に今も赤字経営から脱却できずにいます。
 
 
まず線路幅が狭いので電車の横揺れが酷いし、電車も小型なので、冷房設備も天井ではなく車内に設置しなければなりません。ただでさえ狭い車内が更に冷房設備で狭くなってしまっています。鉄道趣味者には郷愁を呼ぶ吊り掛けモーターの響きも、趣味者以外の利用者にとっては「うるさい騒音」でしかありません。(上の写真の線路幅や車内の狭さに注目。右端の写真は日永駅構内に展示中のナローゲージ・狭軌・標準軌3種類の軌間比較)
 
線路幅の狭さをアピールしようと、「四日市あすなろう鉄道」(ナローゲージのナローを明日への希望を意味する社名に引っ掛けている)と社名変更したものの、線路幅の狭さを実感してもらう為に、底をガラス張りにして下が見える様にした(左下写真)シースルー電車の知名度もイマイチで、誰もシースルーしていませんでした。
 
 
各駅に食券販売機みたいな券売機はあるものの、四日市と内部の有人駅以外は改札も無し。切符は無人の切符入れに入れるだけ(写真中央は赤堀駅の切符入れ)。折角、運転席の後ろに運賃精算箱を設置しながら、運賃収受も四日市あすなろう鉄道では人手不足を口実にやらず(写真右)。
 
他のローカル線では、駅に止まる度に、運転席後ろの乗降口以外は全て封鎖して、運転手が多忙な中でも改札や精算を確認しているのに。これでは無人駅における無賃乗車を防ぐ事は出来ません。この運賃ダダ漏れは7年前の初訪問時と全く変わらず。こんな「大企業病」丸出しの性根では赤字脱却なぞ到底無理です。だから打ち出す経営再建策もことごとく「中途半端」なのです。
 
 
駅前ロータリーを整備して駐輪場スペースを広げたは良いが、接続するバス路線が皆無では余り意味は無く(写真は西日野駅の駐輪場・駅前ロータリー)。自転車持ち込み可能なパークアンドライドサービスも、沿線には大した観光地もないので利用する人はほとんど無し。実際、他のローカル線には昨今、平日でも必ずいる鉄道趣味者も、ここでは全然見かけませんでした。
 
周辺は住宅地で、ラッシュアワー時はそれなりに通勤通学客が多い事は、駅前駐輪場の自転車の数の多さからも分かるのですが。日永から先は30分に1本のダイヤで、揺れも激しいとなると、どうしてもマイカーに流れてしまいます。
 
四日市あすなろう鉄道や三岐鉄道北勢線が今も特殊狭軌のナローゲージであるのも、近鉄が必要な設備投資を怠って来たからです。
 
昔は三重県内の私鉄は全てナローゲージや狭軌でした。今の名古屋線すら狭軌で、湯の山線もナローゲージでした。本来ならそれを全て、他の線区と同じ様に標準軌にしなければならなかったのに、近鉄は名古屋線と湯の山線だけ標準軌に変え、閑散路線はナローゲージのまま放置して来ました。それが今になって経営の足を引っ張っているのです。
 
その近鉄が「赤字だから鉄道を廃止してバスに転換する」と言い出し、内部・八王子線以外の北勢線、養老線、伊賀線も片っ端から別会社にして赤字を地元に押し付け、鉄道再生スキーム(枠組み)にもあれこれ注文付けるのは、私に言わせれば「天に唾するもの」でしかない。
 
確かに三重県内は大阪と比べたら鉄道のシェアは小さいです。近鉄名古屋線すら賑わっているのは特急・急行の優等列車のみで、各駅停車の車内は閑散としています。
 
でも、ただでさえ低賃金なのに、更に最低賃金の安い三重県内で働く非正規雇用の労働者にとっては、自家用車なんて買う余裕なぞ無い筈です。そういう人達にこそ公共交通機関の鉄道が手を差し伸べるべきです。
 
沿線に低家賃の賃貸住宅を建設し、そこに人を呼び込み、定期券取得に補助金を支給し、日中時間帯のダイヤも15分かせめて20分に1本のダイヤにすれば、日中時間帯の利用客も次第に増えて来るのではないでしょうか。
 
親会社による怠慢の象徴でしかないナローゲージに固執して、自虐ネタで盛り上がる位なら、むしろ貧しさを逆手に取り、そこにこそ積極的に勝機を見出すべきではないでしょうか。鉄道を支援している四日市市も、そこまで腹を据えてこそ初めて、赤字路線の再生も可能になると思います。
 
翌日の最終日は、四日市から近鉄で桑名まで出て、西桑名からもう一つのナローゲージである三岐鉄道北勢線に乗って来ました。この路線も元は近鉄北勢線です。近鉄が赤字で手放した路線を、地元私鉄の三岐鉄道が拾い上げ、自社路線として運用を開始しています。
 
 
本線の三岐線は近鉄富田から出ており、北勢線とは連絡も連結もしていません(写真左の路線図参照)。三岐鉄道一日フリー切符も、桑名と富田の間は近鉄線なので使えません。それで1200円もかかるので、最終日は普通切符で北勢線だけ通しで乗る事にしました。
 
北勢線は四日市あすなろう鉄道以上に鉄道施設の老朽化が進んでいます。塗装だけを三岐カラーに塗り替えた古い車体で走っています。編成こそ4両ですが、乗客は2両ぐらいに分散して数名が乗っていただけです。
 
北勢線は西桑名から阿下喜まで20.4キロを13駅で結んでいます。途中駅の東員や楚原までは15〜30分に1本ぐらいのダイヤ間隔で走っていますが、終点の阿下喜まで行くのは1時間に1本ぐらいしかありません。
 
元々は軽便鉄道だった路線を単線で走るので、たかだか20キロ走るだけでも1時間ぐらいかかります。平均速度は僅か時速40キロ。それも急カーブの連続で、車両は左右に大きく揺れます。だから終点の阿下喜にある温泉施設との割引切符も、余り売れているようには見えませんでした。(写真右が、三岐鉄道一日フリー切符や温泉施設との割引切符の案内チラシ)
 
20キロなんて大都市圏の急行なら20分ぐらいで着く距離です。今時ナローゲージなぞ走っているのは前述の3路線だけなので、車両の修繕や更新も難しく、スピードアップが出来ないのです。
 
 
それでも感心したのは、たった1つの駅以外は、どんな小さな無人駅にも運賃精算機と自動改札が設置されていた事です。この路線がもしナローゲージではなく、普通の狭軌で、車体も現代式の物に更新され、曲がりくねった急カーブも線形改良でスピードアップが図られれば、もっと乗客は増えると思います。(写真右:阿下喜に停車中の北勢線電車。手前に見えるのは転車台の模型。写真右:無人駅にもある自動改札)
 
昨今、ローカル鉄道のボランティア駅長が、観光客を呼び込もうと、ペットの犬や猫も動員して必死に頑張っている姿が、美談として報じられています。その頑張りには私もエールを送るものの、それを只の美談だけで終わらせて良いのでしょうか?地元住民が気軽に利用できてこそ、真の鉄道再生と言えるのではないでしょうか。

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