ワイン飲んでべろべろに酔ってさみしくて「ハチさん」「ハチさん」と泣くキミコ。
ひとりぼっちの食卓には、慣れないよね。
大騒ぎする父ジョージぎゃんぎゃん文句言う直子、大阪時代だってみんな騒々しかった。
静かすぎるひとりきりの生活に、平気な顔して、平気じゃなかったね。
良い肉食べて、メンバーにしんさく、照子、アンリだけでなく、ハチもいたと知ったタケシ。
いっしょにごはん食べたのか、なんだ、なんだ、そうなのか。
タケシも、平気な顔して、平気じゃなかった。
離婚して別れた両親に気を遣って、平気なフリしてた。
ずっと会いたかった。
ずっと話したかった。
ずっといっしょにごはん食べたかったんだ。
しゅわしゅわとつぶつぶのジュースを買いに行くハチ。
キミコの好きな「つぶつぶ」は近所の自動販売機で売り切れていて、駅前まで買いに行く。
たけしの言う通りだった。
つぶつぶがないならコーラでいいか、缶コーヒーでいいか、って人じゃない。
ハチは駅前まで買いに行く。
そういう人だった。
今も、そういう人なんだ。
おとうちゃんはどこにもいかへん。
いっぱい話そ。
あかん、泣けてくる。
おとななのに泣けてくる。
炭酸飲料を「しゅわしゅわ」粒の入ったジュースを「つぶつぶ」と言うのは家族内言語なんだろう。
家族のなかで通じる言葉。
離れていて、年月が流れて、もちろん変わってしまったことは多い。
タケシは大学も卒業し、陶芸家への道を歩み出した。
ハチは陶芸をやめた。
キミコは陶芸家として「先生」とよばれている。
けど、変わらないこともある。
「つぶつぶ」を買いにわざわざ駅前まで買いに行くハチ。
そういう人だと話すタケシ。
言われないと気づかないキミコ。
ああ、本当にキミコは鈍感だ。
自分のさみしさも、タケシのさみしさも、ハチのさみしさも、言われなければ気づかない。